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育った街へ

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「で、これ?」


キースが帰って来た。

『戻って来れる?』ていうお伺いの知らせを口実に帰って来たんじゃ?

という目線をメンバー浴びながら。
それを気にも止めずに、籠の中を覗き込む。


「蜥蜴?」

語尾が上がるのはキースの癖のようだが、今回は
疑問符なのか確認なのかセリではわからない。

ひと通り見て、触ることはなく、蓋が閉じられた。

(水、減ってたな。)
せめて、何を食べるかわかればあげられるんだけど。

衰弱しないか心配になってきた。

適当に入れとく?
薬草、ませき、食べられる花
昼食で出したサラダ…木の実?

「全部入れたら、居場所がなくなるんじゃねーか?」

上からのロードの声に、確かに籠に底が埋もれてしまうと考えてを改める。

「カケラを入れてみよっか。」

少しずつ、半分程の範囲で収まるくらいのもの達。
蜥蜴は底の縁にべったりついて、動かないけど。


水も入れておいた。



「あー。魔法壁はちゃんと機能している。」

玄関の方から移動している声
キースのものだった。

「入れるのは、すっごく弱い魔物。一角兎とか。」


「これ、魔力持ってるよな」


「魔力、魔石を持ってそうな…」

「じゃぁ魔物?」

「んんー。なんだコレ??」

判断がつかないようだ。
「後、頼りにできるのは、グスタフか。」

魔物かもわからないけど、今すぐの危険はなさそう。

おとなしい様子に、弱ってないか心配だけど
夜まで待った。


夕食も終わり、のんびりしていた頃
玄関で馬のいななきがあった。


「帰って来たな。」

食堂の近くで本を読んでいたセリが反応する。
ソファとロードをクッションにしていたから、もぞりと入り口の方を見ただけなのだけど。

シュルトはお茶を淹れる準備をするようだ。

声がするから。カナンがグスタフに声をかけているのかな。


「待たせた。」

お待ちしてました。と返したくなるが、別に焦りはない。
帰って来たばかりで悪いと思うも、籠の中の蜥蜴を見せた。

グスタフも自然と覗き込む。


器の近くに移動していて姿も大部分は隠れているが
どの向きで潜んでいるかアウトラインでわかる。

とりあえず、動いているようなので調子が悪い事はないかな。

じっと見ていたグスタフが尋ねた。
「大きい水鉢はあるか?」

「バケツは?」「深すぎるな」
カナンが水を入れるものでには、すぐ用意できるものを提案。
壁に張り付くのも大変かもしれない。

「深皿ならあるケド?」
「浅いとすぐ逃げ出すと思うぞ。」

食器を見ていたシュルトに、ロードが付け加える。
元気だったら飛び出せそうだものね。

(水球を出しても、溺れてしまうかもしれない)


「あ、庭に置いてあった筈」

洗濯用の古い盥に、平な皿を乗っけて足場にするらしい。
慎重に籠から移した。じっと止まっている。

「で、コレ何?」少し距離をとっているカナンが再度聞くと


「精霊獣かもしれん」という答えだった。
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