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役割りの終わり
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そして可愛いヒロインは、王子様と結婚しました。
それは国の祝い事として民は喜びます。
お話はいつもここまで。
でも登場人物の続きは存在しているのです。
そのハッピーエンドの裏で、
王妃になる令嬢として教育を受けていた
1人の女がいました。既に王妃という威光と権力の衣を着ることはなく、
城に上がって侍女になりました。
周りから、家族からも冷たい視線と言葉を浴びながらも
お役目のひとつを受けていました。
“未来の王妃様の身代わり”
その身で守れと王、義父になる筈だった人、この国の頂点に言われていたのです。
それは死の宣告とどう違うのでしょうか?
王妃にはならず、狙われる危険だけ受け取れと言うのでしょうか?
教育を受けていた令嬢は何も問い質すことなく
「仰せのままに」と言う他ありませんでした。
周りから誹りを受けながらも粛々と日々を過ごしていた令嬢でしたが
その日、実感を込めて言いました。
「王妃教育ってほんとに役に立つのね」
その時、
魔の国からの侵略に、城は落ちていたのですが令嬢は
ただ城を出るために歩を進めていました。
その数十分前にお役目も果たしたので
もう、ここに居なくて良いだろう。そうして、
清々したという心持ちで既に、歩き出していました。
…数十分前の問答
「お前が王妃か?」
「はいそうです。」
中庭で敵国の騎士が刃を見せながら、問いかけます。
「では、後ろの女は?」
「王子様のお嫁様でございます」
「ほう、異なことを言う。それは“王子妃”と呼ばれる者ではないか?」
くくくっと笑った悪魔のような男に、堂々と宣言します。
「私が王妃でございます。」と立つ女の後ろには
泣き、嗚咽を漏らし、震えて逃げられない哀れな女がいた。
剣を納めないまま、構えを解いた騎士は続けて問います。
「お前の衣は、まるで侍女のものだな?」
その通りでした。侍女のお仕着せからエプロンを外して
男と対峙していた令嬢は、前を見据えたまま動きません。
その様子から、騎士は問いを変えました。
「なぜ攻め入ったと疑問はないのか?」
「いいえ、ありません」とキッパリ答えます。攻めいられる理由に覚えがあるのです。
「そうだ。看過できないことをした。そのため滅ぼしたのだ。」
奴隷の話だろうと、王妃となる筈だった知識で予想はついていました。
この国は他国の民を奴隷として扱い始めたんです。
なんて非道なのだろうと思ったものの
王国が。正確には立太子、次の国王が自ら奴隷として他国の民を捕らえました。
その報復と、助け出すために城を落としたのでしょう。
当然の報いだと思います。
それを止められなかった周囲も。
「あたしは助けてよおおお!」汚らしく叫ぶ女の声に
必死だろうから仕方がないと耳に素通りさせて、令嬢は、静かに騎士を見ていました。
そして、
呆れたようなため息とともに、剣を納める騎士。
「ここに王妃になる者はいない。城から去るが良い」
男は消えていったのでした。
戦いがあったのかさえ怪しい、静寂。
しかし、崩壊した城が負けたのだと教えてくれる。
私は城を出た。
以前からあった
警備に穴が空いたままでも
怪しい動きの人物を見ても
そのままにした
そのまま滅べば良いのにと思っていた。
王族の裏も禁忌も、腐敗も知った。
それが再建できないほどで。
私の命で助かろうとしたということも。
全てが崩れ落ちる瞬間が来て、終わりがくると知っていた。
町には情報をそれとなく流したけど、
商人達が既に掴んでいたようだ。
城の者は消え、後に新しい城が建てられ領主が入った。
その後
民は違う王をこの新しい国に迎えた。
王が変わっても構わないと、民は歓迎する。
国が良くなる予感があったのだ。
発展を歓迎して祝った。
そんな喜びの中…
「そういえば、お前は誰であったか?」
男の声に女が、なんと応えたのか。
その後
“悪魔の女”と呼ばれる女が
騎士と共にあったと、吟遊詩人が語り継いでいた。
それは国の祝い事として民は喜びます。
お話はいつもここまで。
でも登場人物の続きは存在しているのです。
そのハッピーエンドの裏で、
王妃になる令嬢として教育を受けていた
1人の女がいました。既に王妃という威光と権力の衣を着ることはなく、
城に上がって侍女になりました。
周りから、家族からも冷たい視線と言葉を浴びながらも
お役目のひとつを受けていました。
“未来の王妃様の身代わり”
その身で守れと王、義父になる筈だった人、この国の頂点に言われていたのです。
それは死の宣告とどう違うのでしょうか?
王妃にはならず、狙われる危険だけ受け取れと言うのでしょうか?
教育を受けていた令嬢は何も問い質すことなく
「仰せのままに」と言う他ありませんでした。
周りから誹りを受けながらも粛々と日々を過ごしていた令嬢でしたが
その日、実感を込めて言いました。
「王妃教育ってほんとに役に立つのね」
その時、
魔の国からの侵略に、城は落ちていたのですが令嬢は
ただ城を出るために歩を進めていました。
その数十分前にお役目も果たしたので
もう、ここに居なくて良いだろう。そうして、
清々したという心持ちで既に、歩き出していました。
…数十分前の問答
「お前が王妃か?」
「はいそうです。」
中庭で敵国の騎士が刃を見せながら、問いかけます。
「では、後ろの女は?」
「王子様のお嫁様でございます」
「ほう、異なことを言う。それは“王子妃”と呼ばれる者ではないか?」
くくくっと笑った悪魔のような男に、堂々と宣言します。
「私が王妃でございます。」と立つ女の後ろには
泣き、嗚咽を漏らし、震えて逃げられない哀れな女がいた。
剣を納めないまま、構えを解いた騎士は続けて問います。
「お前の衣は、まるで侍女のものだな?」
その通りでした。侍女のお仕着せからエプロンを外して
男と対峙していた令嬢は、前を見据えたまま動きません。
その様子から、騎士は問いを変えました。
「なぜ攻め入ったと疑問はないのか?」
「いいえ、ありません」とキッパリ答えます。攻めいられる理由に覚えがあるのです。
「そうだ。看過できないことをした。そのため滅ぼしたのだ。」
奴隷の話だろうと、王妃となる筈だった知識で予想はついていました。
この国は他国の民を奴隷として扱い始めたんです。
なんて非道なのだろうと思ったものの
王国が。正確には立太子、次の国王が自ら奴隷として他国の民を捕らえました。
その報復と、助け出すために城を落としたのでしょう。
当然の報いだと思います。
それを止められなかった周囲も。
「あたしは助けてよおおお!」汚らしく叫ぶ女の声に
必死だろうから仕方がないと耳に素通りさせて、令嬢は、静かに騎士を見ていました。
そして、
呆れたようなため息とともに、剣を納める騎士。
「ここに王妃になる者はいない。城から去るが良い」
男は消えていったのでした。
戦いがあったのかさえ怪しい、静寂。
しかし、崩壊した城が負けたのだと教えてくれる。
私は城を出た。
以前からあった
警備に穴が空いたままでも
怪しい動きの人物を見ても
そのままにした
そのまま滅べば良いのにと思っていた。
王族の裏も禁忌も、腐敗も知った。
それが再建できないほどで。
私の命で助かろうとしたということも。
全てが崩れ落ちる瞬間が来て、終わりがくると知っていた。
町には情報をそれとなく流したけど、
商人達が既に掴んでいたようだ。
城の者は消え、後に新しい城が建てられ領主が入った。
その後
民は違う王をこの新しい国に迎えた。
王が変わっても構わないと、民は歓迎する。
国が良くなる予感があったのだ。
発展を歓迎して祝った。
そんな喜びの中…
「そういえば、お前は誰であったか?」
男の声に女が、なんと応えたのか。
その後
“悪魔の女”と呼ばれる女が
騎士と共にあったと、吟遊詩人が語り継いでいた。
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