上 下
169 / 200
V 舗装された道

その頃の

しおりを挟む
今日の宿に残ったのはシュルト、キースだ。

ギムナスとの打ち合わせも早々に、手持ち無沙汰になったシュルトは
「お茶飲む?」とキースに聞きながら準備した。

この2人なら高確率でお茶会になる。今日はハーブティーを淹れて出した。
柑橘系の香りが良いブレンドにほぅと満足のため息を吐く

紅茶好きのキースの口にもあったみたいだ。
機嫌も良いため少しからかうようなことを言う、
「アナタが自ら、セリに魔法付与するって言い出すとは思わなかったワ」
「別に。効率いいでしょ?」
素っ気なさにも、照れを隠したような声色だった。

感情を容易く隠せるキースだが、気安い会話は続く。

「セリとはどうだった?」

馬車の中での話だろう。セリとの相性が心配なのか。セリのためでもある。
ボクと他の冒険者とのトラブルは多々あったからねー。

「まあ今のところ問題ないかな。」

問題ないのは、珍しい。
この容姿に、回復魔法の遣い手となれば
媚びられるのは常でまあ、面倒臭い。

その気配がなく、気を使っている様子もあるそれが媚びではなく、
善意のようなもので、そして紅茶が美味い。それだけで居心地はまあまあ良い。

「そう」と嬉しそうな声色なのを無視してお茶を飲む。
自分の好みのお茶を飲むのが落ち着くけど、こうして変わったお茶もたまには良い。

頻度が多くなったのも別にいい。

ひと息ついたところで、本の選別に戻った。
傍らには本が数冊重ねられている。魔法書だ。

「なんの本?」

内容を聞いているのではない、なぜ本を出しているのか聞いているのだろう。

「セリに読ませる用」
吃驚という顔で、重ねてシュルトが聴く

「読むの?」かなり専門性の高い本だ。
「たぶん読んだことあるのもあるんじゃないかな?」

しっかり理論を識っているとみた。それを探るのも楽しそうだ。
基本っぽいものを出す。ついでにジャンル分けして読ませようと思う

たぶん、グスタフも同じことを考えてるんじゃないかな?

最初のダンジョンのマップへのセリの食いつきは、興味を示していた。
少しは魔法書に馴染んでいるから、グスタフの話もわかるだろう。

そもそもグスタフは教えるのがうまい方だ。
初対面で会話が続かないことが多いだけで、面倒見も良い。

これほど短時間でグスタフと距離を縮めているセリに舌を巻く。
難しい性格ではないが、研究者気質のグスタフだ。

知識に真っ直ぐなら相性も問題ないが、あの威圧感で近づくヒトが少ないのも事実。
そこは損だよね?

知識量はすごい。古代語も堪能だ。
そこに投入するセリの知識量が気になる。まあ教えていけば良い線いくかな。

素直みたいだし。
ロードが邪魔するかな?そしたら、巻き込んでしまえばいっか。
ロードもそれほど馬鹿じゃない。ただ感覚的な理解だから話が合わないだけ。

カナンは興味がそれほどないようだし、シュルトはまあ聞いとこっかなって程度。
マシな会話はあるけど、手応えなくてつまらない。

セリなら?
揶揄っても言い返してくるしなんか楽しそう?
笑いが漏れないようお茶を飲んだが

シュルトがクスリと笑った。
ボクの機嫌が良いのがバレているみたいだけど。

「何?」
「いいえー?あ、アタシの持ってる本もいるカシラ?」

そういえば数冊かしていたのを思い出した。肯定。

「とってくるワ」と部屋を出るついでに
シュルトがお茶を淹れてギムナスに持って行った。


王都で本を買おうかな?
そのときはセリも連れて行こうと決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃
ファンタジー
平凡な女子高生だった主人公は、神様から特殊能力【怪力】を与えられて、異世界の農村に転生する。 持前の怪力を活かしてドラゴン退治していたら、壊滅寸前だった騎士団の騎士に見出された。 「君ほどの力の持ち主を、一介の村娘や冒険者として終わらせるのは惜しい! ぜひイース王国に仕える騎士となるべきだ!」 騎士の推薦のおかげで、軍事都市アルスターの騎士学校に通うことになった。 入学試験当日には素性を隠した金髪王子と出会って気に入られ、騎士団長の息子からはプロポーズされてしまう。さらに王子の付き人は、やっぱりイケメンの銀髪&毒舌家執事。 ひたすら周りを魅了しながら、賑やかな学園生活を送るサクセス&青春ストーリー。 ※この小説はカクヨムでも掲載しています。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...