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V 舗装された道

動揺

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番にそんな思いをさせるなんて!
スキンシップが足りないせいだ。

そうだ…早く巣に閉じ込めなくては。

そんな気持ちでロードは、つがいを抱きしめていた。

同時に、情けない自分に腹立たしさも感じる。
それを押し潰してしまいたいと思いながら、優しく包み込んだ。
ここなら、安全だと伝えるように。


セリは、ロードの変化に戸惑い、そのまま抱きしめられるに任せた。

(今日から距離を取ると言う話ではなかったか?)
よぎった考えより、ロードが狼狽るという事実に言葉が出ない。

固まっていた思考を取り戻そうと、セリが
相手の顔を覗き込んだ。…そして分かった。

(あ、不安がらせた。)
ロードの瞳の奥が揺れている。

思い出したのは、孤児院での小さな子たち
泣く一歩手前のような動揺が宿った瞳。

そんな顔をさせたいわけじゃない。
セリの思いついたやれる事は、ひとつだった。

ぎゅっと顔をよせ、ロードの頭を撫でる。

「大丈夫。こわくないよ」
小さい子にするのと同じ、あやす方法だった。

年上の男の人にやるのに抵抗がなかったわけじゃなかった。
やったら失礼だろうと思っていたくらいだ。

でも、
今、不安を取り除かないといけないと思えた。
行動に躊躇ためらいはない。

護らなければ
と言う気持ちが芽生えた。

自分より遥かに強く、頑強な男でも。
自分が守らなければならないと庇護の心が生まれた。

不安が消えるようにと、ギュッと腕の中に抱き込んだ。


ロードは、番からの抱擁に身を任せていた。温かい。
焦りが取り除かれる。柔らかさと匂いに安堵する。
俺に囁いた声、それに

縋り付くように、消えないように存在を確かめる。
チュッ
チュウ におい付けと、所有印を早急につけた。

俺の番。俺の唯一。
逃がさない。俺の……

「ロードぉ~!止まって。」シュルトに邪魔された。

大人しくセリを抱きしめ、膝に乗せるだけにとどめる。
プルプル(恥)しているセリの邪魔にならない程度の力。
離す気はない。

”距離を取る“は、シュルトの提案だったが
今は解除だ。

俺の番を独りにしたくないと心底、思った。


シュルトは、最近のいつも通りに戻ったロードに呆れはしなかった。
(ちょっと焦ったワ)と内心、冷や汗をひそかに流す。ロードの取り扱いには注意が必要だけど、
これ程、不味いと思ったことは少ない。

それより、
おや?と思った。ロードは相変わらずのべったりに戻ってしまったが、
セリの方が歩み寄ったように見える。


これは期待が、いや希望が持てる。
ロードの操縦には苦労させられてきた。現在進行形で。

この男、直感で動くから、
突発的に、脈絡も意図も後回し。

「何してるのヨ!!」と何回、叫んだことか。

これから暴走を止めるのに、セリの協力は不可欠だ。
アタシとカナンでも止められない時、最後の砦になる。

プレッシャーをかけたいわけじゃないけど、
この男の手綱をとって、暴れさせるわけにはいかない。


危険なのよ。

手をつけられない。止められない。
そうなる前にどうにかしないと。

危険視される前に。

セリに操縦してもらうことになる。
フォローは惜しまないワ。

ロードにセリが居れば大丈夫と思えるが、
逆にセリは?

この娘の生い立ち、苛烈だわ。確定。


16歳よね?
置いてかれたことあるのね?

いつって、もっと小さい時。
せめて、冒険者になってたわよね?そう願うわ。

冒険者になる前の子供が、置いてかれるのを不安に思う状況って。
ロクな大人が居なかったってことでショ?

隠しているっぽいけど。
冒険者見習いでもおかしい状況。

だって、あのギルド長のとこで経験積んだ前…

10歳、それ以前。

ないワ~!街の外には魔獣、盗賊、がいるのよ?

これは聞き出す前に、覚悟しておいた方が良いわ~。
何が出てきても良いように。

憤死しないように、心の準備をね。
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