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III 貿易都市

④ お茶会 

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調合も終わり、

大人しく本を読んで過ごした。

と言いたかったが、キースと白熱した議論が始まった。

魔術に興味があるキースは、セリの魔法を
既存の魔法とは別のものだとする。

質問をされつつ、魔法の見識を聞き出すため
セリにも利がある議論だ。


「湖の上での魔術的な要素が見えるよ?」

「魔法の感覚。水魔法を使っているのと変わらない。」

「水魔法であの球体の維持は、どれだけ魔力使ってできるの?」

「吸い込むイメージで水のあるところでやれば、ウォーターボールくらい
師匠は、感覚的にやれって言ってた。」

「その師匠って誰なの?」

「フードと覆面をしていたから顔はわからない。
声と、筋肉質で狩人の心得を習った。」

その時、卵の作り方も。

「変化があったのは一回だった。
気になったらやっておくこと」

過去、数回作っただけだが、未だに教えは忘れていない。


「冒険者、たぶん高ランク
狩人で筋肉質。」

日焼けした大柄な体躯…は子どもだったので、怪しい記憶だった。

「その男に会ってみたいな」
ぽつりと声に出したのは、ロードだった。


声でわかるだろうか?
物静かで低く、深い森を思い起こさせる
静かな重みのある声。

さらり
と髪を撫でられ、顔を上げる。

ロードが視線で『大丈夫か?』と聞いてるようなので
身体を預けた。

この体勢にもなれたなあ。

小さい子が抱っこをせがむ気持ちがわかる。
なんかクセになる。ロードの膝の上に座らせているセリだった。

その後も
水魔法で洗浄と
回復魔法での清浄の違いを話し合う。

どこで違いが出るのか?

そこに、

カナンが部屋に入るなり言い放つ
「クッセ!まだとれねえ!」

「どうしたのよお?」シュルトが聞けば

「香水くさいのに絡まれた!」

と言ってた鼻を塞ぐ。

「ちょっと魔法を使っていい?」と確認を取り、
『エアウォッシュ』

狩りの前ににおいでバレないよう、使っていた魔法をかけた。
水と少しの風魔法でできる。


「お?ありがとー!セリちゃん!!」
効果は感じられたようだ。
セリに抱きつこうとしたカナンだが、ロードに回避された。

ポンポンと頭を撫でて感謝された。
獣人の臭覚の良さも大変だなと思う。

消臭剤、臭い消しを作れば使ってくれるかな?
と頭にメモした。



のんびりした雰囲気になった。
喉が渇いたので、セリが紅茶を淹れる。

人数分淹れ、

回復付与のネイル、足のは“ぺてぃきゅあ”というらしいが、
そちらの思いつきを話しておいた。

他の付与ができそうだと話す。
塗った爪の上に小粒の魔石を置くのは邪魔になるか?聞けば、

貴婦人の流行では、ネイルに宝石を乗せることもあるそうだ。
そんな貴族の女性の服飾事情を交えながら、話していたが

回復魔法に話に戻った。

「魔力を注ぐことで魔力の抵抗に合うわけ。」とキースが力説する。

「ポーションなら外部から魔力を補える
魔力は合わせていないのか、その人の魔力も使って回復効果が出る?」


若者がよく喋る。

無口な印象だったセリだが、饒舌だ。
キースはこんな感じだ。口で負けないもんな。

大人組が生暖かい目で見守っていた。


「アラ、お帰り。」
シュルトが戻ってきたグスタフに声をかける。

今度は紅茶ではなく、ブレンドティーをシュルトと淹れた。


大人組は察した。この流れは、
グスタフの参戦だ。

グスタフは常は無口だが、議論が嫌いなわけじゃない。

学術的な面も興味があるらしい。
図鑑のように分厚い本を手にしているのを見かける。


たまにキースとポツポツ話していたが、
今回はセリもいる。

饒舌に話だろう。

シュルトとカナンは飛び火を予想し、
退避した。

今でもチンプンカンプンな話が、今度は逃げれなくなるのを察知したのだ。

そんな中

さりげなーく、

飲み物を淹れ終えたセリを
膝の上に据えることができ、満足なロードだった。
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