【完結済み】番(つがい)と言われましたが、冒険者として精進してます。

II-b 陸丘の森

見張り <グスタフ視点>

今夜の拠点　(グスタフ視点)

夜の帳とばりが降りている。
太陽はすっかり沈み、
キャンプ地は静かな時間が流れていた。

ここ周囲には魔物除けがされていて、人の気配も濃いが
見張りのために起きている。

炙あぶっていた木の実を口にして、酒に口をつけた。
寝酒にする気はない。暇つぶしだ。

旅の序盤でキャンプ地だから、気楽にやっている。

周りを見れば、
まだ人の起きている気配がそこかしこにある。
ほとんどが商人の護衛をしている冒険者達だ。大所帯になったな。

商人達も集まって会合を開いているグループもあるようだ。
ギムナスも戻っていない。

よく働く男だ。

気配を探ると、見張りを立てないグループもいるようだ。
他の見張りに任せて便乗しているのだろう。
ここも全くの安全地帯というわけではないのだが。

蝙蝠こうもりの魔物が弾かれたように方向転換した。
先程、鳥の魔物が中に入ってきていたのに気付いているだろうか。
弱い魔物だが、荷物に触られたくはない。

こういう小さい魔物が入り込んでくる場合もある。
脅威度は低いが、1人くらい見張りを置くことにした。

魔道具も起動している。問題なく稼働して結界の機能を発現する。

簡易なものだが魔力の質で結界の硬度が変わる。
希少な魔石だが、魔力の充填効率も良く、ロードとキースの魔力が入っている。

改良するなら、属性に寄せるか、となると結界に属性が付与される。
氷だと寒いか。いや、2層構造にして親和性が？相性の良い属性は何だろうか。

風だと、結界の維持が難しい。
他には……。


思考の渦の中、炎の揺らめきを見ていた。


「クゥ…」声を抑えたヴァルトが身動ぎした。

森とは違った環境で落ち着かないのか、まだ寝る時間じゃないからか。
落ち着くよう撫でてやる。

機嫌はまずまずのようだ。

初めて接するセリとも問題ないようで、
大人しく撫でられたり、木の実を与えられていた。

餌をくれる奴には近づくし、
あしらいも上手い。

「気分屋だ。」とはシュルトの言。

油断ない奴ヴァルトなのだが、懐くようにセリに構っていた。
珍しい。

新顔がいようと、自由に振る舞う。
遠慮なしに気に入らない奴には、攻撃的だ。

良好、気に入ってる状態。
年齢だろうか。小さい子でもなく大人でもない。
興味のある視線で、慎重に触れる。


夜はまだ長い。
星が見えた。月は暗い。

キースはまだ本を読んでるんだろう。
シュルトも起きてるな。

ロードとセリは早々に引っ込んだが、カナンも同じところだ。
酒でも飲んでるか？

若いな。
カナンと交代するまでのんびり座っていよう。