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II-a 王都に向う旅

ケーキ屋

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“貴族御用達”
と店構えが言っている。


店の前に左右に立ったガタイの良い男達は
武器を携えて、門番のように立っていた。

高級店の護衛は信用と見た目が大事
と冒険者ギルドで聴いたなと思い出しながら、店内に入った。

喫茶スペースのように椅子とソファが並び、
奥には個室があるようだ。

天気が良いので、陽が入るテラス席が良いだろうか。

「あそこいいか?」とロードが店員に席が空いているか聴く。

髭が特徴の男性店員に丁寧に案内された。

椅子を引かれ、座る。

改まった席は
背筋を伸ばしてご令嬢のように振る舞う。

「本日のケーキと紅茶はこのようになっております。」
ここのケーキ
チョコレート、季節のフルーツを頼み

紅茶はブレンドを頼んだ。

高級な店は

「セリは水の魔法を使うんだよな?氷は使えるのか?」

「使えない。水量が増えてくだけ」

魔力を注ぎ込んでも、固まってくれない。

「俺は氷魔法は使えるが、水魔法は高位のものは使えない。
んー。魔力の質が固まらないのか、他の理由?」

水魔法と氷魔法の違いは、魔力の適性で違ってくる。
両方使える者もいるが、使い分けが難しいらしい。

氷を出そうとして溶けかかっていたり、
水を出したいが凍っていたとか。

ここで相談する内容でもないだろう。
ちらほら寛いでいるお客が見える。

こういう時ってどんな話題にすれば良いんだろう?

紅茶、劇、冒険者の話は、ロードのことを言っているようだ。


目立つよな。

水色の髪、柔らかい印象になるのだろう
物語の騎士のようだ。

所作も綺麗だ。

「失礼」

声をかけられ目を向ける。
店の人間ではないようだが、燕尾服を着た執事然とした男性だ。

「何か御用でしょうか?」令嬢風に用件を伺うと、

「私の主人がお嬢様にご挨拶したいと申しておりまして…。」
どこかの貴族に間違えられたのか。格式ばってこられたが。

「お忍びで来ておりますので、ご遠慮くださいますようお伝えください。」

会う気などない。

「失礼します」
話を終わらせたタイミングでケーキと紅茶が配膳される。

美味しそう。
食べる方に意識を切り替えた。

注がれた紅茶の香りを楽しむ。
気持ちが上向く。


前の人物が甘い顔で見るので、ケーキを見ることにした。
糖分の方が心臓が穏やかになって、良い。
色とりどりのフルーツが綺麗に盛り付けされている。

目で楽しんでから、ひと口サイズを口に運んだ。
柔らかい生地で、クリームが爽やか。

甘みと酸味のハーモニーを味わう。
余韻まで楽しんでから、

「セリ」と小声で呼びかける声に目を向ければ、
「アーン」とチョコのケーキが一口分乗った、カラトリーがこちらを向く。

美味しそうと目の前のケーキを食べた。

ぱくっと

ビターな味と甘さのチョコレートに酸味加わっている。

思わず、にこっと微笑んだ。

「クソカワっ」と誰に聞かれないよう、呟いた声は
紅茶を飲む令嬢には届かなかった。
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