23 / 200
II-a 王都に向う旅
旅立ちの気持ち
しおりを挟む
この町を出る。
いつかそうなるとわかってはいた。理解していたのに。
いざそうなったら、思考が止まった。
“思考を止めるな”
とかつての師の声が思い出される。
怖がるな。本能だけで感じれば動けなくなる時がある。
だから考えろ、と。
「一緒に連れて行って欲しい」と願った相手、ロードの腕に
心細さから抱きつき返す。
小さい子どものような反応をしてしまった。
この人に縋り付いてしまっているのでは?と思わなくもないが
応えてくれた体温に安心した。
擦り寄ってくるロードの仕草が子供っぽく感じた。
結局、また抱えられたままギルドを後にした。
行き先は、件の宿。
シュルトさんの商会で持っている一軒家で、荷物置きや仮眠に使っているものだとか。
『竜の翼』メンバーと共に、夕飯をご馳走になる。温かいスープに肉、
サラダと豪華な家庭料理が自分には目新しかった。
孤児院で肉は小さく切ってある
ざっくりと大きく切られた野菜と肉をまじまじと見た。
口に入れれば、優しい味がホッとする。
ざわついていた気持ちが落ち着いた。
『竜の翼』として、
数日後に護衛任務を受けて、この町を離れる予定になる。
知り合いの商人の指名依頼を受け、目的地は王都まで。
早々に旅立ちたい自分には、渡りに船。
明日は薬屋のババ様のところで薬の依頼をする。
こちらは、病状を抑えるもので、別に“病気を治す薬”がいるそうだ。
それを王都の薬師に依頼するそうだ。
目の前に座るロードが、飲み物や肉を勧めてきている。
何か楽しそうだ。
自分はここを出る準備をしないと。
荷物は最小限あるだけだし、挨拶まわりが必要かな。
孤児院に何か持って挨拶しに行くか。とつらつら考えていた。
そして、ここに泊まることが決定していた。
着替えなど何もないと辞退しようと思ったら、
シュルトさんからもたらされる着替え。
…ありがとうございます。
部屋は3ー3に分かれる。
「呑みに行ってくる~」と夜の町へカナンが出かける。
2人になった部屋。
「一緒に風呂入ろうぜ!」と元気なノリに頷いた。
一緒に?風呂に入る・・。
……まあいっか。
お湯がもったいないし
さっさと入ろうと用意をはじめた。
成人男性と風呂に入るこの状況。
ここでリリー(冒険ギルドの受付女性)がいれば、
「え、何?変態なの?」と答えていただろう。
彼女はお父さんと入るのにも10歳に満たないくらいに拒否していた。
では、何故セリは簡単に了承したのか?
要因は、セリの羞恥心の感覚にあった。
貴族の生い立ちで、お世話係に洗われるのを慣れていること。
少し大きくなってから自分のことは自分でやるという
貴族の子供としては特殊なサバイバル下におかれ、
その時の生傷が絶えないため手当てを受ける。
ずっと、“見られること”に慣れていた。
そのまま孤児院に来てからも、小さい子を風呂に入れるのに、
小さい男の子も女の子も一気に入れる。
お湯代の節約だ。
そんな時もしっかり、がっつり見られていたのだが
セリは気にしていなかった。
気にも止めていなかった。
流石に、セリの次に年長のシーナが「イヤだ」と拒否して
大きな男の子との混浴は回避された。
ひとりで入れない子達に、分けて入ったが。
これらは、セリの感覚を変えるには至らなかった。
裸になるのに、躊躇がない。
マナー的に遠慮するという意識だけだった。
結果、
効率を考えてロードと一緒に入ることを了承することになる。
身体の関係を持ったロードとなら別に変ではない。
断るに値しないと考えた。
“風呂で何かある”
……そんな想像の余地がなかった。
この後も結構な頻度で一緒に風呂に入るが
エロい方面に持ち込むのは耐えたロードだった。
その夜、用意された高級そうな黒の下着があった。
”自分に用意された下着だから着る“
という躊躇いのない着用。
肌触りの良さは高価なものであると思われた。
用意してもらった物に対しては価格を考えない、と決めた。
着替えをロードはしっかり・ちゃっかり見た。
今回のダンジョン探索を思い返す。
高ランクのチームの動きは速く、正確で安定していた。
その分、身体は楽だったと思ったが、お風呂に入って疲れが出た。
眠い。
ぽすりとベッドに座り、当然のようにロードと同じベッドだった。
他にないからと、ロードが拒否しないからという理由だった。
もちろんロードは大歓迎というより、他に選択肢はない。
一緒に寝る。
温かくなった肌と肌に
穏やかな充足感ある疲れ
早々に寝てしまうセリは、
ロードがチラチラ黒いレースを見ようと意識していたのには
気にもとめなかった。
その様子に帰ってきたカナンが
呆れ返るのがセットだった。
“一緒に寝る”
どまりの夜になった。
いつかそうなるとわかってはいた。理解していたのに。
いざそうなったら、思考が止まった。
“思考を止めるな”
とかつての師の声が思い出される。
怖がるな。本能だけで感じれば動けなくなる時がある。
だから考えろ、と。
「一緒に連れて行って欲しい」と願った相手、ロードの腕に
心細さから抱きつき返す。
小さい子どものような反応をしてしまった。
この人に縋り付いてしまっているのでは?と思わなくもないが
応えてくれた体温に安心した。
擦り寄ってくるロードの仕草が子供っぽく感じた。
結局、また抱えられたままギルドを後にした。
行き先は、件の宿。
シュルトさんの商会で持っている一軒家で、荷物置きや仮眠に使っているものだとか。
『竜の翼』メンバーと共に、夕飯をご馳走になる。温かいスープに肉、
サラダと豪華な家庭料理が自分には目新しかった。
孤児院で肉は小さく切ってある
ざっくりと大きく切られた野菜と肉をまじまじと見た。
口に入れれば、優しい味がホッとする。
ざわついていた気持ちが落ち着いた。
『竜の翼』として、
数日後に護衛任務を受けて、この町を離れる予定になる。
知り合いの商人の指名依頼を受け、目的地は王都まで。
早々に旅立ちたい自分には、渡りに船。
明日は薬屋のババ様のところで薬の依頼をする。
こちらは、病状を抑えるもので、別に“病気を治す薬”がいるそうだ。
それを王都の薬師に依頼するそうだ。
目の前に座るロードが、飲み物や肉を勧めてきている。
何か楽しそうだ。
自分はここを出る準備をしないと。
荷物は最小限あるだけだし、挨拶まわりが必要かな。
孤児院に何か持って挨拶しに行くか。とつらつら考えていた。
そして、ここに泊まることが決定していた。
着替えなど何もないと辞退しようと思ったら、
シュルトさんからもたらされる着替え。
…ありがとうございます。
部屋は3ー3に分かれる。
「呑みに行ってくる~」と夜の町へカナンが出かける。
2人になった部屋。
「一緒に風呂入ろうぜ!」と元気なノリに頷いた。
一緒に?風呂に入る・・。
……まあいっか。
お湯がもったいないし
さっさと入ろうと用意をはじめた。
成人男性と風呂に入るこの状況。
ここでリリー(冒険ギルドの受付女性)がいれば、
「え、何?変態なの?」と答えていただろう。
彼女はお父さんと入るのにも10歳に満たないくらいに拒否していた。
では、何故セリは簡単に了承したのか?
要因は、セリの羞恥心の感覚にあった。
貴族の生い立ちで、お世話係に洗われるのを慣れていること。
少し大きくなってから自分のことは自分でやるという
貴族の子供としては特殊なサバイバル下におかれ、
その時の生傷が絶えないため手当てを受ける。
ずっと、“見られること”に慣れていた。
そのまま孤児院に来てからも、小さい子を風呂に入れるのに、
小さい男の子も女の子も一気に入れる。
お湯代の節約だ。
そんな時もしっかり、がっつり見られていたのだが
セリは気にしていなかった。
気にも止めていなかった。
流石に、セリの次に年長のシーナが「イヤだ」と拒否して
大きな男の子との混浴は回避された。
ひとりで入れない子達に、分けて入ったが。
これらは、セリの感覚を変えるには至らなかった。
裸になるのに、躊躇がない。
マナー的に遠慮するという意識だけだった。
結果、
効率を考えてロードと一緒に入ることを了承することになる。
身体の関係を持ったロードとなら別に変ではない。
断るに値しないと考えた。
“風呂で何かある”
……そんな想像の余地がなかった。
この後も結構な頻度で一緒に風呂に入るが
エロい方面に持ち込むのは耐えたロードだった。
その夜、用意された高級そうな黒の下着があった。
”自分に用意された下着だから着る“
という躊躇いのない着用。
肌触りの良さは高価なものであると思われた。
用意してもらった物に対しては価格を考えない、と決めた。
着替えをロードはしっかり・ちゃっかり見た。
今回のダンジョン探索を思い返す。
高ランクのチームの動きは速く、正確で安定していた。
その分、身体は楽だったと思ったが、お風呂に入って疲れが出た。
眠い。
ぽすりとベッドに座り、当然のようにロードと同じベッドだった。
他にないからと、ロードが拒否しないからという理由だった。
もちろんロードは大歓迎というより、他に選択肢はない。
一緒に寝る。
温かくなった肌と肌に
穏やかな充足感ある疲れ
早々に寝てしまうセリは、
ロードがチラチラ黒いレースを見ようと意識していたのには
気にもとめなかった。
その様子に帰ってきたカナンが
呆れ返るのがセットだった。
“一緒に寝る”
どまりの夜になった。
1
お気に入りに追加
639
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。
秘密の聖女(?)異世界でパティスリーを始めます!
中野莉央
ファンタジー
将来の夢はケーキ屋さん。そんな、どこにでもいるような学生は交通事故で死んだ後、異世界の子爵令嬢セリナとして生まれ変わっていた。学園卒業時に婚約者だった侯爵家の子息から婚約破棄を言い渡され、伯爵令嬢フローラに婚約者を奪われる形となったセリナはその後、諸事情で双子の猫耳メイドとパティスリー経営をはじめる事になり、不動産屋、魔道具屋、熊獣人、銀狼獣人の冒険者などと関わっていく。
※パティスリーの開店準備が始まるのが71話から。パティスリー開店が122話からになります。また、後宮、寵姫、国王などの要素も出てきます。(以前、書いた『婚約破棄された悪役令嬢は決意する「そうだ、パティシエになろう……!」』というチート系短編小説がきっかけで書きはじめた小説なので若干、かぶってる部分もありますが基本的に設定や展開は違う物になっています)※「小説家になろう」でも投稿しています。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
最強賢者、ヒヨコに転生する。~最弱種族に転生してもやっぱり最強~
深園 彩月
ファンタジー
最強の賢者として名を馳せていた男がいた。
魔法、魔道具などの研究を第一に生活していたその男はある日間抜けにも死んでしまう。
死んだ者は皆等しく転生する権利が与えられる。
その方法は転生ガチャ。
生まれてくる種族も転生先の世界も全てが運任せ。その転生ガチャを回した最強賢者。
転生先は見知らぬ世界。しかも種族がまさかの……
だがしかし、研究馬鹿な最強賢者は見知らぬ世界だろうと人間じゃなかろうとお構い無しに、常識をぶち壊す。
差別の荒波に揉まれたり陰謀に巻き込まれたりしてなかなか研究が進まないけれど、ブラコン拗らせながらも愉快な仲間に囲まれて成長していくお話。
※拙い作品ですが、誹謗中傷はご勘弁を……
只今加筆修正中。
他サイトでも投稿してます。
異世界転生令嬢、出奔する
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました(2巻発売中です)
アリア・エランダル辺境伯令嬢(十才)は家族に疎まれ、使用人以下の暮らしに追いやられていた。
高熱を出して粗末な部屋で寝込んでいた時、唐突に思い出す。
自分が異世界に転生した、元日本人OLであったことを。
魂の管理人から授かったスキルを使い、思い入れも全くない、むしろ憎しみしか覚えない実家を出奔することを固く心に誓った。
この最強の『無限収納EX』スキルを使って、元々は私のものだった財産を根こそぎ奪ってやる!
外見だけは可憐な少女は逞しく異世界をサバイバルする。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる