【長編・完結】300歳エルフは、まだ森には帰りませんよ。 〜目まぐるしく過ぎた日々と、お茶を飲むひと時を。〜

BBやっこ

文字の大きさ
上 下
52 / 67
報告書

17-③

しおりを挟む
『将来は何になりたいか?』

私自身はなんと答えたか、遠い過去で思い出せない。当たり障り内容な答えで、“薬草の研究者”あたりだろうか?故郷の誰も、覚えていないだろうな。

「“冒険者”か」
聴いた相手であるツガイの子は、“外の世界を知りたい”と望んだ。元々、そう考えていたが、色々あったからな。

あの子供の将来に、竜人の存在が入っていたと思えない。雪深い教会で育ったそうだが、獣人さえ珍しかったそうだ。

「相当辺鄙な教会だよ?」
「近くにある教会、と言っていて川で遡上する距離にあった。」

「周りに、本当に何もないんだなあ。」

それでも、怪我をした者の療養や子供の一時預け先となっていたらしい。
実際に言った2人は、どんなところでツガイの子供が育ったか報告してくれた。

「偶々貴族が通り過ぎたのも不思議なくらい、何もないよね?」
「何も無ければ、妖精の悪戯で辿り着けない地だと思う。」

「“護られた土地”だったようだ。怪我をした貴族が訪れたのは、不運なのか。」

菓子と茶を飲んで、ツガイの子供が育った場所に想いを馳せる。

「俺と出会えたんだ、幸運だった!」

少し遠くから、竜人が言葉を挟んだ。彼の部屋なので、不思議ではないのだが。
“大型に魔物が突然現れて、倒れているところを助けられる?”までは幸運だが、“竜人に囲い込まれ、逃げられない”は、どうなのだろうな。

まあその答えは、私が出すものでもないし今はまだ分からない。

「栄養不足気味だったんダカラ、ここで休めて良かったのヨ!」

確かに、教会から半ば強制的に北の砦に行かされている。その判断は悪かったとは思わないが、過酷な状況だったのは確かだな。

逞しく、落ち着いた行動ができるのは鍛えられた結果か。

「竜人のツガイは、守られて秘されているくらいに厳重だ」

冒険者ギルド内で、“竜人の玉”とも呼ぶ。秘された警戒対象であり保護対象だ。

「周りが危険?」
「他も危険~」

「反対の声も大きいだろうな」

目標を決められた子供の未来。壁もあるが、平坦にする事ではない。

「ん?オレも強制参加?」
「降りたいなら、まあ考えるけど?」

「実質できないやつ~

この護衛のおもねらないところが気に入っているんだろう。踏み入りすぎない距離感は、単独任務が多かった時に培ったか?


「ま、どうにかなるでしょ?」
「どうにかしそうだ。」

(ふふっ、楽しいな)

個性的な者が集めた、それは実力があり竜人が暴走した時の防波堤だった。それでも、噛み合ったように和やかだな。

皆の、自由を祝った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

処理中です...