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7-③

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「酒を飲むくらいしか、やる事がないな」

私にとっては、本を読む時間が増えて嬉しいくらいだが。
読み返すひとりの時間が穏やかだ。

まあ、ここに来た文官や騎士の中にも面倒な者はいた。

2枚舌がある者もいるが、この場所は研究者気質の者と教官が多い。統率もとれているし、私の仕事は書類だな。

毎年、この辺に住む獣人達が寒さを凌ぐために集まる『極北の城』
雪に囲まれて、更に孤立感が深まった。森というより雪の印象が強い。

四方を壁が立ち、中が魔導具で温められている。廊下に出ればもちろん寒いが、冬装備はもちろんあった。商人から物を購入する事もできる。

騎士や兵士は基本配給された物で過ごすらしい。褒美には酒やら甘味を願えるんだとか。

「最後の商人も来た」

そうか、これで今回やって来る者達も揃ったな。
私は本もあるし、温かい場所で食事の提供を受けてのんびり過ごそう。

訓練の参加はない、魔法と薬学の講義には参加する予定だ。ただ、初級と基礎を中心なもで私が邪魔になるかもな。

一度この城に入ったら雪解けまで帰れない。

療養目的の者、その家族も住んでいる。この地で摘んだ薬草の保管と研究がされているため拡張された施設。

魔導具で暖かくしてあるため、快適に過ごせる。
研究者とのんびり意見交換、決まった会議に出て。訓練の視察が終われば、息抜きの酒。

交流は楽しい。王位の話にならないところが特にな。

「面倒な立場ですなあ」
「まあ些事だな、私の権力が目当てらしいですが使い所があるのか疑問です。」

王位の行く先が気になるのは確かだが、口出しも手出しもする予定はない。私は部外者という立ち位置、招かれた研究者でありそのための役職だ。

貴族の囲い込みを流す術も、得られている。

社交なんて関係ないし、この環境も気に入っている。

「子供は可愛いな」
外に出られない日々だが、室内の遊び場で元気な様子を見せてくれた。

療養中の子達の慰問。ここの子達はその家族で幼いから親族に預けるのもじっとしてられないだろう年頃。

(あんな頃が私にもあったのか?)

遠い記憶過ぎる。だがまあ弟がヤンチャだったからな。妹達は固まって遊んでいたが、私はよく弟を探しに行ったものだ。

お蔭で探し物や地理的な把握も得意になった。今の研究で風を読む方法も、そに延長線かもしれないな。

「研究の方は進んでますかな?」
「ええ、まずまずといったところです。ここでは変わった風が吹くので興味深いですよ。」

風を起こす妖精、魔素の湧く地理的条件。

人のは要らない未開の地。時として牙を剥く人を拒絶するような雪深い土地。

酒、研究、たまの会議。

「獣人ばかりで苦労をかける」
「ははっ城でもそうだろう」

獣人の国に、獣人が多いのはもちろんだ。しかし、この役職で長居するのはどうかな。長命ゆえの悩みか。

「私は研究を進めつつ。のんびり暮らしたいなあ。」

それが叶うとは思っていなかったが、それはひと仕事を終えた後になるのだった。
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