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7-②

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「大所帯だな」

雪国仕様の馬車、その中から兵の長くなった隊列を見る。見慣れない景色は、長く生きているが初めての視点。

合流して地元の者も増えるらしいが、これでも少ない方だとか。新人が多いために進みは列の緩やかだ。

私はのんびり、馬車の中で書類仕事をしていた。

私も城のひとつを預かるトップは初めての事、新人だ。
(書類仕事や自身で魔物討伐に出るならあったが、”椅子を温める役目“とはな?)

『戦いの場に出ず、指示しているだけの上役』という揶揄だ。私も使っていた頃があるし(主に冒険者のときだな)そういう輩(権力に意地でも座り続けるとか)も居るんだが。今は椅子を温める苦労も知っている。

なんにせよ書類に会議に、貴族のやり取りなんぞ面倒だ!

これでもまだマシなのは、お国柄というやつか。獣人国は、武を尊ぶからな。私は魔法使いだから、拳で語れないが魔力量と年嵩で一応のトップとは認められているらしい。

馬車の周りには護衛が隊列を組む。騎士の見習いかな?教官と新人のやり取りがたまに聞こえてくる。エルフの耳が良いのもあるが、お飾りのトップでも大事にされるらしい。

まあ練習に良いのだろう。

今後は面倒な貴族の護衛になったり、魔物のいる森を突っ切る事もある。
騎士にも兵士にとっても新人の壁、『極北の城』でのひと冬を越せば新人として認められる。それまではまだ“見習い”だ。

ただ騎士と兵士の間で少し意味が違う。騎士の場合は、ギリギリの境目とされている。崖っぷち、後がない者が送られる場所でもある。

面倒な輩の査定も私の仕事の一部だ。騎士は貴族の家系であるから面倒な事も多々ある。それでも規律に則った行動を求められる。

(セコい資金のピンはね、部下への仕打ちとまあ小物だなあー)

『極北の城』から出ても森しかない辺鄙な場所だ。不人気な赴任地だ。寒いし、雪に慣れていないと余計にな。

温暖な地の出身は引き篭もりの日々に鬱屈して役に立たなくなる。
寒さに慣れた者も、慣れない団体の行動に苛々するんだとか。

(適度なガス抜きが必要だな)

酒や娯楽も限られる。トーナメント戦や他の部署との交流会なんかは必須だな。
上役達の酒を酌み交わす機会にも顔を出そう。小さな愚痴から、防げるものもあるからな。

元々、この地域の者を集めて冬を越すために作られたのを要塞としたらしい。
今も冬籠りに使われるが、修練場であり人族の国が侵入してこないよう見張る。

「そっちより魔物の出現の報告が多いな」

無事に過ごせると良いが。私は気負わず、到着を待った。
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