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おまけ→おわりまで
アクレイオス視点①
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「竜人の番だと?!」
「相手はわかったのか?」
「それが、子供とだけしか。貴族らしき男と護衛の冒険者から当たりをつけているところで。」
王都の退屈な会議が行われていたが、緊急度の高い事が起こったらしい。
退屈な報告、毎度の権力争い。組織というのはそうそう変わるものじゃないな。
エルフで参加するのは私くらいなのも頷ける。
(退屈で死ねそうだ)
もう何時間かでこの席から離れられると思ったところに、番が現れたらしい。
竜人の番は、把握しておかなければならない。
過去、番が泣いたからと言う理由で街を破壊する男が竜人だった。
恐ろしいことに、当然の事と判断する番至上な性質を持つ。それから、把握、保護する優先命令が出すようになった。
「デリケートな問題だ。即急に確認できる冒険者を…」
少しは刺激になるかと、耳をそばだてる。そんな事をしなくても、妖精が風に乗せて悪戯に伝えてくるが。
名を持たない故に、人名などが途切れて聞こえると言う不便もある。
我々とは違った存在だ。それでも共に歩む事を選んだのがエルフだが。
「ご報告します!貴族の男と冒険者の名前が分かりました。」
今ここの面々には、知っておく必要がある、各街のギルド長だ。リスト入りし問題があれば対処、協力も惜しまない。それができなければ街の崩壊に繋がるからな。
(ま、うちは関係ないだろう。)
辺境の街は、森に近いため冒険者とくに初級の者が腕を磨くが他に特産などない。
竜人の番の名前は、箝口令がしかれる。
番を害せば竜人が怒り狂うがその反面、御せると考える愚かな者もいる。
竜人によって消されていないのは、彼らがそれほど興味を持たないからか。
私にとっては、“狩人”という認識が強いため、エルフから見れば暴れなければ特に言うことはない。
生活圏も違うしな。
「ヴェーネン家のガイサスという男で、辺境の当主代理を務めています。」
しっかり関係があった。セリが王都の屋敷に行くと言っていたな。
もしやと思いながら顔に出さず気になった事を聞く。
「ところで相手の竜人は誰だ?」
「『竜の翼』のリーダー、<氷の竜人>ロードです。」
顔見知りだった。
その後、どう対応するかの話になり、つまらない会議が終わったが。
隠居状態の閑職だったはずのギルド長の仕事に、竜人の対応の仕事を増やされた。
セリが番か。
精霊の愛子が、竜人の番になった例は知らないな。
これからのことを考えると、退屈はしていられないと思えて。
密かに笑みを深めた。
私がギルド長におさまった頃の事を思い返す。
エルフは森の番人としての役割も持つ。それも故郷から、分岐したエルフの郷を森とともに守る故だ。
“森に詳しい”は否定しない。
ギルド長といえど、何もなければ閑職だ。ここに配属された意図、原因はヴェーネン家という貴族の家にある。
森の調査を、魔導具で担っていた家が何を思ったのか武力の方に方向転換。
その頃から、おかしくなっていったのだろう。
王都を守る辺境の地は四家で守られている。うち二家は後方支援だと言える。もともと武力を冒険者を雇うことで補っていたらしいが、当時のヴェーネン家当主が冒険者ギルドとの関係を絶ってしまった。武力に傾倒していったのを見るに留める。当時居ても、ギルドがやれることはそれほどなかっただろう。
そして、魔物の氾濫で当時の当主が死亡。後継の子も死に次男も怪我で復帰が叶わなくなったのだったか。
私がその地の冒険者ギルドに行くことになったのはその頃だ。
後継には、3番目の子供が継いだのだという。辺境に居なかった、魔術士の男が守れるとは思われない。
その事もあって、魔法使いとしても名の売れていてエルフで、森を知る私が選ばれたわけだ。
何かあれば、単身で魔物の氾濫を収束させろと言う。まあやれなくはないのだが面倒だ。
しかし、森に近いのは良い。しばらく塔に篭ったりしていたからな。何十年かはギルド長を務めるつもりだった。
それまでに、辺境を治めるヴェーネン家が落ち着くと良いんだが。
そうはならなかった。
現在代理の者が務めるが、当主が行方不明。遠目で見てもギリギリの綱渡りの日々をおくっていた。
このまま貴族の役目を放棄し、後継もいなければ当然、お家の取り潰しだ。
ギルドとしては構わない。今の代理はギルドを侮ったりはしないがそれでも良好な関係構築までは回らないのだろう。
代替わりすると思ったが、変化が起きた。
子供。
(いつの間にいたのか。)
人の子と言うのは、すぐ成長する。しかしそれでも幼いな?
そんな初対面のセリは精霊に祝福された跡が視えた。
まさかこの辺境の地で会うとは!いや、この辺りに精霊の湖があると記録に残っていたな。
このギルドには無かったかが、エルフの方では把握している。広める気はないが。
『精霊の愛子』は、エルフにとっては庇護対象だ。
かなり、親密で妖精も近くを飛んでいる。
「人には視えないんだったか?」
保護者の方も知らなかったようだ。そして父親の方はまだ行方知らずか。
生きているとしている根拠は、何かの魔法契約が破棄されていないか…跡を継げる存在がいるからか。
今、出てきても面倒なだけな気もするがな?
精霊に妖精、この子がいなくなれば哀しむ。その子のもたらした刺激も面白いものだった!
「相手はわかったのか?」
「それが、子供とだけしか。貴族らしき男と護衛の冒険者から当たりをつけているところで。」
王都の退屈な会議が行われていたが、緊急度の高い事が起こったらしい。
退屈な報告、毎度の権力争い。組織というのはそうそう変わるものじゃないな。
エルフで参加するのは私くらいなのも頷ける。
(退屈で死ねそうだ)
もう何時間かでこの席から離れられると思ったところに、番が現れたらしい。
竜人の番は、把握しておかなければならない。
過去、番が泣いたからと言う理由で街を破壊する男が竜人だった。
恐ろしいことに、当然の事と判断する番至上な性質を持つ。それから、把握、保護する優先命令が出すようになった。
「デリケートな問題だ。即急に確認できる冒険者を…」
少しは刺激になるかと、耳をそばだてる。そんな事をしなくても、妖精が風に乗せて悪戯に伝えてくるが。
名を持たない故に、人名などが途切れて聞こえると言う不便もある。
我々とは違った存在だ。それでも共に歩む事を選んだのがエルフだが。
「ご報告します!貴族の男と冒険者の名前が分かりました。」
今ここの面々には、知っておく必要がある、各街のギルド長だ。リスト入りし問題があれば対処、協力も惜しまない。それができなければ街の崩壊に繋がるからな。
(ま、うちは関係ないだろう。)
辺境の街は、森に近いため冒険者とくに初級の者が腕を磨くが他に特産などない。
竜人の番の名前は、箝口令がしかれる。
番を害せば竜人が怒り狂うがその反面、御せると考える愚かな者もいる。
竜人によって消されていないのは、彼らがそれほど興味を持たないからか。
私にとっては、“狩人”という認識が強いため、エルフから見れば暴れなければ特に言うことはない。
生活圏も違うしな。
「ヴェーネン家のガイサスという男で、辺境の当主代理を務めています。」
しっかり関係があった。セリが王都の屋敷に行くと言っていたな。
もしやと思いながら顔に出さず気になった事を聞く。
「ところで相手の竜人は誰だ?」
「『竜の翼』のリーダー、<氷の竜人>ロードです。」
顔見知りだった。
その後、どう対応するかの話になり、つまらない会議が終わったが。
隠居状態の閑職だったはずのギルド長の仕事に、竜人の対応の仕事を増やされた。
セリが番か。
精霊の愛子が、竜人の番になった例は知らないな。
これからのことを考えると、退屈はしていられないと思えて。
密かに笑みを深めた。
私がギルド長におさまった頃の事を思い返す。
エルフは森の番人としての役割も持つ。それも故郷から、分岐したエルフの郷を森とともに守る故だ。
“森に詳しい”は否定しない。
ギルド長といえど、何もなければ閑職だ。ここに配属された意図、原因はヴェーネン家という貴族の家にある。
森の調査を、魔導具で担っていた家が何を思ったのか武力の方に方向転換。
その頃から、おかしくなっていったのだろう。
王都を守る辺境の地は四家で守られている。うち二家は後方支援だと言える。もともと武力を冒険者を雇うことで補っていたらしいが、当時のヴェーネン家当主が冒険者ギルドとの関係を絶ってしまった。武力に傾倒していったのを見るに留める。当時居ても、ギルドがやれることはそれほどなかっただろう。
そして、魔物の氾濫で当時の当主が死亡。後継の子も死に次男も怪我で復帰が叶わなくなったのだったか。
私がその地の冒険者ギルドに行くことになったのはその頃だ。
後継には、3番目の子供が継いだのだという。辺境に居なかった、魔術士の男が守れるとは思われない。
その事もあって、魔法使いとしても名の売れていてエルフで、森を知る私が選ばれたわけだ。
何かあれば、単身で魔物の氾濫を収束させろと言う。まあやれなくはないのだが面倒だ。
しかし、森に近いのは良い。しばらく塔に篭ったりしていたからな。何十年かはギルド長を務めるつもりだった。
それまでに、辺境を治めるヴェーネン家が落ち着くと良いんだが。
そうはならなかった。
現在代理の者が務めるが、当主が行方不明。遠目で見てもギリギリの綱渡りの日々をおくっていた。
このまま貴族の役目を放棄し、後継もいなければ当然、お家の取り潰しだ。
ギルドとしては構わない。今の代理はギルドを侮ったりはしないがそれでも良好な関係構築までは回らないのだろう。
代替わりすると思ったが、変化が起きた。
子供。
(いつの間にいたのか。)
人の子と言うのは、すぐ成長する。しかしそれでも幼いな?
そんな初対面のセリは精霊に祝福された跡が視えた。
まさかこの辺境の地で会うとは!いや、この辺りに精霊の湖があると記録に残っていたな。
このギルドには無かったかが、エルフの方では把握している。広める気はないが。
『精霊の愛子』は、エルフにとっては庇護対象だ。
かなり、親密で妖精も近くを飛んでいる。
「人には視えないんだったか?」
保護者の方も知らなかったようだ。そして父親の方はまだ行方知らずか。
生きているとしている根拠は、何かの魔法契約が破棄されていないか…跡を継げる存在がいるからか。
今、出てきても面倒なだけな気もするがな?
精霊に妖精、この子がいなくなれば哀しむ。その子のもたらした刺激も面白いものだった!
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