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<王都拠点 編>

夕食前に

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「ようこそ、『竜の翼』の拠点へ」

カナンの言葉に迎えられて屋敷に入る。

たどり着いたのは街から最も遠く、森の縁にあろう屋敷。広いエントランスに入ったセリが見回すと
階段が2階へと伸び、パーティを開けそうな落ち着きのある建物だった。

「こっちがリビングだから、ひと休みしまショ。」

誘われるまま、階段の横へ抜けると庭が望めるキッチンとリビング。
庭は休めているのか植物は見られない土が耕されているまま。辺境の屋敷の中庭よりは狭いだろうが王都でなら十分広いだろう。

(ここ、貴族の別荘地だ。)
それにしては森に近い。魔物が住んでいないなんてことはないだろう。

遠目に、何か通る姿が見えた。

「紅茶ネ。お菓子はこれ。」

シュルトが準備したものをカナンが並べてくれる。グラウルも座るよう勧められていた。
当然のようにロードがセリの椅子になっていて、どう聴こうか迷っている。

「重くない?」
「全然だ。」

膝の上に私を置いておきたい様子なので、このままにした。

(マナー的には問題だろうけど。)

この特別感がちょっと楽しい気持ちもある。
香りの良い、多分高価な紅茶を出してもらった。オシャレで色とりどりのお菓子。

早速キースが口にした。
「夕食もあるから食べ過ぎないでネ?」

シュルトを手伝おうか、立とうと思ったけどお話の方が先らしい。


「それで、誰に狙われてるの?」
「親類って擦り寄ってくる人。」

「放置なの?」
「当主が居ないと、強権を振れない。」

強肩でぶん投げられないかと何度、思ったか。以前は辺境の屋敷にまで来て住み着いていた。
後継者にと目論見で男の子もいた。

そんな環境で、家の機能が噛み合う事はなく。だんだん食い尽くされていく。
元々狙われて、騙そう吸い取ろうと仕掛けきてはいた。

「今回は、出費を抑えられたけど。諦めてくれない。」

どんどん心まで蝕まれていく。

ギュッと後ろから力が加わった。心配かけた様子なので、ロードの頬に触れてみる。
その顔を見て思った。
(心配させたくもないなあ)

泣かれるのも困るけど、心配かけるのも落ち着かない。
大丈夫だよという意味でスルッと頬を撫でると、髭がないのでつるりとした。

「じゃあ、探るのはすぐできる?」
「オッケー、やっとく。」

キースの言葉にカナンが軽く応えた。そこに今のタイミングだと計ったように。
「あの、よろしければ資料がここに」

収納バッグを持っていたのだろうか、手に書類をグラウルが持っていた。

「私も見たい!」

セリが知らない事実があるだろうか?

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