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<竜の翼 編>

交渉人

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久しぶりの親戚に会ったような会話が続く。それに変化が起こったのは誰かの訪れがあったからだ。
「急だったワネ、カナン?」

やって来たのは、オシャレな…男性だ。“王都の”と付けたくなる優雅さで舞台に立って華やかで場を支配しそう。

(劇場に行ったらおしゃれな人をもっと見れそう)
これから行く事はできないだろうけど、機会を作って行ってみたいと再度思った。

「初めまして、シュルトよ。『竜の翼』で交渉担当ネ。普段は商人で服とか小物を扱ってるワ。」

柔らかい話し方だけど、キビキビした性格なんだろうか。腹黒そうな商人というより、不正を見抜く証言する者。
読んだ本の影響を受け過ぎだろうか?

今度はステラがお茶を運んできた。及第点…と思ったが、綺麗なオニイサンに浮かれているのでマイナス点。
(うちのメイドがすいません。)

当のシュルトは「アリガト」の言葉でスルーしてくれたため、話が始まった。

「急なことで驚いたワヨネ。えーとアナタがロードの?」

「セリです。番<つがい>?かは、分かりませんけど。」
ロードを仰ぎ見ると、意外な事を言われたように固まっていた。

「ソウヨネ、言ったでショ?獣人同士じゃなきゃ、そんなものダッテ!」
「へ~ホントなのな。」

そう言ったカナンはクッキーを食べている。

じっくりロードの様子を見る。色で冷たい印象になりやすそうだが、私に向くと甘さがある。
(ちょっといいかも)と思うくらいには、心地よい。甘える時間がなかったセリには、とてつもない魅力だった。

しかし、受け入れていても状況の理解とは別だ。ガイサスが話を進める。
「番の事は、少しだが理解した。しかし、セリをどうしたいんだ?」

「ロードから離せなくなったと理解してもらうのが、手取り早いカシラ。」
「引き離したら、暴れます。」

カナンがおふざけなく言う。本気度が高そうだ。

「俺からセリを、離す?」

ヒュオッと冷風が通り過ぎた。ここ、室内で窓は閉まっているのに。
不思議なことがあるなと思うものの、部屋の中での緊張は増した。

「ロード、寒いわヨ」

直った?ガイサスが戦闘態勢っぽくなって身構えている。焦りが滲む姿を初めて見た。

セリは原因の中心のロードを宥めようと試みる。機嫌が良さそうなのとさっきの差が幻だったかと。

「怖っっわ」

バリスの声で、本当にあったのだと再確認する。魔力の暴走?に近かった現象か。
なんとか話を戻すガイサス。この状況の落とし所の話になるのだろうか。

そうなると、当主の不在と後継者の問題があると話が出た。
「ソウネ、うちが請け負う?」

カナンとロードに向けた確認だ。セリの身柄を何処に置くかに関わる話?
「政略結婚みたいに…」

『竜の翼』預かりを提案してみようとセリの出した声。後ろから抗議のぎゅっ、圧がかかった。
ちょっと強く抱きしめられて言葉に詰まったセリだった。
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