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<竜の翼 編>

掻っ攫い

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当主捜査依頼にあたる冒険者は見つからなかった。

私でも期限がわからない依頼は避ける。それに貴族関係は厄介ごとが常。どこかで消されるとか嫌でしょ?
貴族と懇意にと下心もあるかもしれないが、ヴェーネン家に繋がりを求めて甘い蜜とはいかない。

(うち、裕福じゃないもんね)

長期の依頼とはいえ、適当に受けて成果を出さなければギルドの評価にも関わる。それに、捜査は危険地帯と決まったわけではなく、貴族の家へかもしれない。ある意味、命の危険だ。


ガイサスは冒険者のチームに直接依頼を出そうと考えている。探索が得意や、貴族と懇意かも注意を払う。
家の恥、弱点を晒す訳だけど。長年の当主不在は知られている。

情報を集めても見つからない。こうなれば、死んでいるかもと思うものだけど。
生存を確信している様子。何か知らない情報があるのだろう。

(今回は聞いてみようかな?)

“以前とは違う事をしてみる”に当てはまるって理由なだけで、当主はどうでも良い。

部屋を出て、見て回ることにする。流石に依頼主の貴族っぽい子供に絡む大人気ない冒険者はいないと思う。
早く依頼が終わった冒険者達は呑んで賑やかだ。お行儀良い部分さえ感じる。

(装備がしっかりしていたり、揃いで身につけているから統一感でそう感じる?)

辺境とは違った雰囲気が興味深い。
依頼を張り出しているボードを眺め、まとまった数の依頼、長期の遠征するものが残っていた。

(個人より、チームでの依頼が多いのか。人が集まってくる王都故の依頼なのかな。)

馬車で森に行き、そこで依頼の物を得て帰る。野営と移動を考えると大人数で分担が楽なのか。
冒険者が臨時でチームを組むこともあり、フリーを自称する者も少なからずいる。

その場合王都にいつかないが、それをセリが察する事はなかった。

(私じゃここで稼ぐのは難しいかな。)

自由を謳う冒険者でも、貴族の目はある。有名な冒険者を侍らすのを自慢する者もいる。
私の出自もすぐバレそうだな。

女性の冒険者もいる。力自慢そうな人から、細いけど大丈夫と聞きたくなるが魔法使いだろう人。
特徴的な耳と尻尾を持つ獣人も居た。堂々とした姿が眩しい。


私は目立つ容姿ではないが、年齢的に視線はもらう。魔力が多ければ貴族の関係者かと思い当たる。探せばすぐ行き当たるくらいには、当主に似ているらしい。

(条件が厳しいなあ)

もっと人のいないところへ行けたら?
そこで生き延びられるだろうか。自信はない。


そんな夢想で終わる今日だと思ってた。ガイサスとバリスの姿を見て、側へ行こうとした時…

「見つけた」

セリへ向けた言葉だったらしい。

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