上 下
5 / 110

5

しおりを挟む
記憶との違いは他にもある。王都にずっといた執事さんが今いる。

専属執事の師匠に当たる人。ほとんど面識がなくて、手紙のやり取りはしていた。
オジサマの右腕的に働いてくれている有能な人。

(身のこなしが只者じゃない)

赤ん坊の頃は辺境にいて、それから王都で修行。それから専属執事を付けようと彼が戻ってきた。


(いくつなんだっけ?)
成人後ではあるので16歳は過ぎている。記憶にあるより小柄だ。成長期を迎えるとか?身近に男の子がいないから分からないな。聞けるようになったらでいいか。遊ぼ。

(精霊さーんこっち)

小さな明かりみたいなの。光っていない時もあって、チェリの実より小さいから気づかない時もある。

(魔導具に集まっていた光に似てる。)

戯れていると、師匠な執事が真っ直ぐ問いかけて…
「セリ様は妖精が見えてらっしゃる?」

「あぷ?(たぶん?)」

「そうですか」
赤ん坊が意味わかって答えたと思う?そう考える師匠執事さんが心配だけど。

(御伽噺と認識されてるけど、知っている人はいる弓の師匠だ。まだ来る時期じゃないけど、今回どうかなー)

『愛し子とも呼ばれる、妖精を視る者より珍しい。』
…と弓の師匠が話してくれた。この状況に当てはまる。しかしこんな記憶はあるんだなあ。

『寝ている筈なのに、会話が聞こえる。』
危機を知らせてくれるとか、気になる事を教えてくれる妖精や精霊の働きかけは話にある。


赤ん坊の理解力ではないけど、身体の方は赤ん坊に引きずられる。
(それに、話が聞けるのは毎回じゃないらしい。)

寝てる時、夢を見ているようにその場で聞いている感覚。
(赤ん坊が寝るのが仕事って本当だなあ。ふわふわする意識が…)

「では任せます。」
「子供の面倒なんてイヤ!」


(居たよ、問題娘。)若いメイドで貴族の家で奉公していたって、箔が欲しくて来たらしい。
仕事をしてくれるなら歓迎だけど。


とにかく、小狡い。魔石を抜いたり、数を誤魔化して懐に入れる。彼女には意図していなかったが、災厄も招いている。まあ結果論だけど。

(今回は止める)
彼女の仕業だと知ってはいた。けどメイドは2人とお手伝いが入るだけ。
乳母をしてくれるメイドがいなくなって、よけいに助長した。

『わたしがいなくなれば、困りませんかあ?』

実質困るのは私だ。メイドのいない貴族令嬢なんてカッコがつかないって。
冒険者が来てくれるようになって仕事が増え、気づいたら消えるように辞めていた。


「赤子なんてバッチいでしょう?」

「あら結婚するなら、慣れておきなさいな。」
「貴族に嫁げれば、乳母に任せるわよ」

彼女は貴族の目に留まろうと、最低限仕事はできた。

お世話されるの、地味に嫌だ。

「あううあ」(赤ん坊は嫌いですかー?)

「ふんっそこにいなさいよ?」


放置か。ベテランママさんのが抱っこ安定するから、若いメイドは近づいて来ない方が良い。

(話せるようになってからか。)
このメイド、子供の私に仕事を押し付けてたんだよ!小さい頃の話だけど。

成長してから役に立つからって。メイドの仕事ができるなら職に困らないって賛成してたし。


陰湿。これが女かと貴族の女性に良いイメージが持てず
ドレスに興味も持てなかったな。お手本になる女性っていなかったし、ちょっと女性不振気味か。

(今世は、尊敬できる女性を探してみたいなー)

あ、専属執事!
赤ん坊に近づく事はない。仕事中か。家に忠誠だったから、血筋がわからない赤ん坊には興味ないですか。

寝てしまう前に…魔力操作して、水魔法の訓練してっと。私の魔力は水魔法と相性が良い。不人気な、給水係。
水、威力がないってわかるでしょ?

けど、魔導具の回路と相性が良い、魔力操作をしっかりできれば武器にもなる!かなり危険な。
そこまで強化できないから役立たずにされるのだろうね。

それでも氷魔法には届かないけど。やれないか訓練してみたけど、口に入れられるほどの氷しか
作れなかった。


そんな退屈な時間を繰り返し、時々屋敷の会話を聞きながら、私は庭に出られる日を待っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト
ファンタジー
極々普通で特にこれといった長所もない少年は、魔法の存在する世界に住む小さな国の小さな村の小さな家の農家の跡取りとして過ごしていた 少年は15の者が皆行う『従魔召喚の儀』で生活に便利な虹亀を願ったはずがなんの間違えか世界最強の生物『竜』、更にその頂点である『混沌竜』が召喚された これはそんな極々普通の少年と最強の生物である混沌竜が送るノンビリハチャメチャな物語

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...