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記憶との違いは他にもある。王都にずっといた執事さんが今いる。

専属執事の師匠に当たる人。ほとんど面識がなくて、手紙のやり取りはしていた。
オジサマの右腕的に働いてくれている有能な人。

(身のこなしが只者じゃない)

赤ん坊の頃は辺境にいて、それから王都で修行。それから専属執事を付けようと彼が戻ってきた。


(いくつなんだっけ?)
成人後ではあるので16歳は過ぎている。記憶にあるより小柄だ。成長期を迎えるとか?身近に男の子がいないから分からないな。聞けるようになったらでいいか。遊ぼ。

(精霊さーんこっち)

小さな明かりみたいなの。光っていない時もあって、チェリの実より小さいから気づかない時もある。

(魔導具に集まっていた光に似てる。)

戯れていると、師匠な執事が真っ直ぐ問いかけて…
「セリ様は妖精が見えてらっしゃる?」

「あぷ?(たぶん?)」

「そうですか」
赤ん坊が意味わかって答えたと思う?そう考える師匠執事さんが心配だけど。

(御伽噺と認識されてるけど、知っている人はいる弓の師匠だ。まだ来る時期じゃないけど、今回どうかなー)

『愛し子とも呼ばれる、妖精を視る者より珍しい。』
…と弓の師匠が話してくれた。この状況に当てはまる。しかしこんな記憶はあるんだなあ。

『寝ている筈なのに、会話が聞こえる。』
危機を知らせてくれるとか、気になる事を教えてくれる妖精や精霊の働きかけは話にある。


赤ん坊の理解力ではないけど、身体の方は赤ん坊に引きずられる。
(それに、話が聞けるのは毎回じゃないらしい。)

寝てる時、夢を見ているようにその場で聞いている感覚。
(赤ん坊が寝るのが仕事って本当だなあ。ふわふわする意識が…)

「では任せます。」
「子供の面倒なんてイヤ!」


(居たよ、問題娘。)若いメイドで貴族の家で奉公していたって、箔が欲しくて来たらしい。
仕事をしてくれるなら歓迎だけど。


とにかく、小狡い。魔石を抜いたり、数を誤魔化して懐に入れる。彼女には意図していなかったが、災厄も招いている。まあ結果論だけど。

(今回は止める)
彼女の仕業だと知ってはいた。けどメイドは2人とお手伝いが入るだけ。
乳母をしてくれるメイドがいなくなって、よけいに助長した。

『わたしがいなくなれば、困りませんかあ?』

実質困るのは私だ。メイドのいない貴族令嬢なんてカッコがつかないって。
冒険者が来てくれるようになって仕事が増え、気づいたら消えるように辞めていた。


「赤子なんてバッチいでしょう?」

「あら結婚するなら、慣れておきなさいな。」
「貴族に嫁げれば、乳母に任せるわよ」

彼女は貴族の目に留まろうと、最低限仕事はできた。

お世話されるの、地味に嫌だ。

「あううあ」(赤ん坊は嫌いですかー?)

「ふんっそこにいなさいよ?」


放置か。ベテランママさんのが抱っこ安定するから、若いメイドは近づいて来ない方が良い。

(話せるようになってからか。)
このメイド、子供の私に仕事を押し付けてたんだよ!小さい頃の話だけど。

成長してから役に立つからって。メイドの仕事ができるなら職に困らないって賛成してたし。


陰湿。これが女かと貴族の女性に良いイメージが持てず
ドレスに興味も持てなかったな。お手本になる女性っていなかったし、ちょっと女性不振気味か。

(今世は、尊敬できる女性を探してみたいなー)

あ、専属執事!
赤ん坊に近づく事はない。仕事中か。家に忠誠だったから、血筋がわからない赤ん坊には興味ないですか。

寝てしまう前に…魔力操作して、水魔法の訓練してっと。私の魔力は水魔法と相性が良い。不人気な、給水係。
水、威力がないってわかるでしょ?

けど、魔導具の回路と相性が良い、魔力操作をしっかりできれば武器にもなる!かなり危険な。
そこまで強化できないから役立たずにされるのだろうね。

それでも氷魔法には届かないけど。やれないか訓練してみたけど、口に入れられるほどの氷しか
作れなかった。


そんな退屈な時間を繰り返し、時々屋敷の会話を聞きながら、私は庭に出られる日を待っていた。
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