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オジサマと呼んでいるが、血の繋がりはない。
この家とも縁はなく、『王都で騎士をしていたのを逆勧誘した』と聞いている。

『逆勧誘って、なに?』
当主は王都の魔術院に在籍していた3男で、家を継がないはずだった。
しかし魔物の暴走で、父親と長男が死に、次男が負傷で戦線にたてないとなり…

「勝手に転がってきた。」
と言ったらしいとオジサマから聞いた。野心もなく、家にも興味なかったのか。
魔術院に在籍していた当主と関わりができ、その人となりと心配があって辺境まで押しかけてきた。

…との説明だったけどオジサマがいないと、この領地は回らなかったと思う。
誘われずに来たという意味で逆らしい。でも内情は書類仕事、運営兵士への指示と全てできる能力を持ってる。

うちは冒険者に協力を得ていたが、それもオジサマの人徳で集まってくれた。

使用人も、こんな辺境に来たがる人などいない。
魔物の氾濫水域になる場所だ。町へも遠いし、魔物が出る。


(すっごく人材不足。)

もっと勧誘して来てよ!この辺境に来ても良いっていう、腕利きか研究職とか1人くらい居なかったの?
たぶん、あの当主って友達いないし話す人さえ限定的なタイプ。

まあ残念な当主の事なんて考えても仕方がないし。赤ん坊は友達がいなくても育つのよー。

辺境で動けない子供がいるって結構危険な事なのでは?

赤ん坊の側には、だいたい乳母としてお世話してくれるベテランのメイドがいる。この人はずっとお世話になってたけど、歳もとったし街で旦那さんと食堂を開くって“おいとま”した。感謝して送り出したけど…寂しかったなあ。

危険な辺境にずっといるのも家族が不安だって、息子さんと娘さんが居たかな。

そんな記憶を辿って、まっずい昼食をもぐもぐ咀嚼していますが、メイドさんが居なくなると赤ん坊嫌いな男が、不機嫌に叫ぶ。

「こんなガキが!」

私の記憶にある人ではない。あのコックは、冒険者にも登録していた経験がある戦えるコックと自分で言ってた。
事実、魔物を狩って夕食に上ることもしばしば。

(お金なかったし。)
それまでも倹約生活だったけど、備蓄を買った時不良品を掴まされて補填があったりとカツカツだった。

「わざわざ作ってやるんだ、ありがたく食え!」

(上手くないけど残さず食べてるわっ)

適当に混ぜられた離乳食は、乳母が食べさせてくれる。

「そんなに、焦らせないの。ほら、あーん?」
「アー」

至れり尽くせり。これぞ健康的な赤ん坊の暮らし。

記憶が、思い出せない部分がある。
けど全部覚えている方が変か。赤ん坊の記憶はないよ!

(最初の記憶は、庭で遊んでた?で。)

そのうちメイドの仕事を手伝う事になる
それに関しては、今回は回避しようと思う。同じ状況であれば。


いくつからお手伝いし始めたっけ?記憶が欠ける。
(また覚えていけば良いや。)
メイド仕事の押し付けも今のコックの手伝いもしない!


(ついでに、くらえ!)

赤ん坊の飲み込むミルク程度の水球が投げられて、ズボンを濡らした。
ちょっとコックの恥ずかしい位置に!

お水魔法!日々、成長している私なのだ。ちゃんと報復しとく。


「あら、水が跳ねたの?ズボンにしみが。」

「ああん?ちっめんどくせえ」


「奥さん、元気なの?」

「ああ。実家の食堂手伝って、やってるって。帰って来いって手紙だ」

「帰りたくないの?」

「俺が出て行く訳には、逃げ帰っちゃ申し訳ねえ。」

「誰に申し訳ないの?ここで気を揉んでも誰も良い結果にはならないわ」



「子供とも会ってないが…。」

「問題の先送りね。子供はすぐに大きくなるわ」

「あううー」
「貴女もねえ。」

「女の子なんて、育てにくいだろ。」
「あら、後継になると決まってないのでしょう?別の道もあるわ」


「孤児院の預けるとかか?」


「ふううっ!」(厄介になるからヤダー!)
「嫌なようねえ。」

「赤ん坊だ。わかってねえよ。」

知ってるよ!貴族に関係しているとなると、後々面倒だよ?
現にお母様がどれだけ来た事か。



私の父親は、オジサマだけです。

孤児院に文句はないけど、回避一択だよねー。


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