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1-生涯を閉じた

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(しかし12歳か。)

16歳の成人にも届かず、死んでしまった。その直前までハッキリと覚えている。
屋敷で、後継者を祝うパーティ。私が珍しくドレスを着せられ、楽しくもない集まりに出ていた。

「皆様、今日はおいでいただきありがとございます!」
「ええ。利口で頼りになる息子ですの。」

我が物顔で、パーティに居る親類。ここの主人は自分だとでも言いたげだ。

自分の血筋の子に継がせたいのは分かっている。

(そして子供の私を心配しているという態度が気に入らない。)
「それができれば私はここにいなくて済むんだけど。」

私が後継者としての正統性には、怪しい部分がある。ハッキリ言って、『当主の子供かわからない。』

その証明には、当主が出てこれば良いのだがそうは行かない事情があるらしい。


「自分が治める領地を出て、10年以上も帰って来ないよっぽどな理由が、ね。」

そう言うと、執事は眉間の皺を深くしていた。彼は普段から眉間に皺をこさえているけど。
絵姿でしか記憶にない当主は、私と同じ髪色だった。それ以外に似た部分を私は見出せない。

「欲しいなら、上げるのに。」

正直、あの息子では力不足。ここは魔物の脅威が降り掛かる土地柄で手配を間違えれば死人が出る。

武力、書類仕事、度胸。


どれをとっても、14歳のあの子供には無理だろう。
『剣を握るのもへっぴり腰の子供の指令を聞かされる身にもなって欲しい。』

(兵士から陳情を言われる未来が見えるよ。)

12歳の子供、しかも女の子に従うのはどうなのか?ちゃんと理由がある。
魔導具が。

この家は、武力より魔導具での調査で力になっていた。他の家との協力をしていたのだが
当主が仕事をしない。というか居ない。現在、補佐と後継者とされる私が代理として回っている。

もちろんお飾りだけど、仕事はしている。魔導具関連の作業。
書類や人材配置はまだ難しい。子供で女の子はお呼びじゃないらしいよ?

(まったく。仕事をしない人材より、遥かにマシなのに!)

イライラと、着ているドレスの裾をいじると窘める視線を感じたので、止めた。
補佐のオジサマは、王都。最近は手紙にやり取りでしか連絡を取れない。

(あんな名ばかりの親類より、会いたいなあ。)

こどごとく、邪魔な事しかしない親類達に疲れていた。

調整して使う、ある程度複雑な魔導具をなんとか使い、協力しているのだ。
家はもともと、武力より魔物の情報集めを期待されている立ち位置らしい。


「子供でも使えるならと魔導具を見せても、壊される前に人間の方を(力技で)止める。」

それほど、扱いがなっていない者が多く、あの中央で喋っている男もだ。
その様子をつまらない顔で見ていただろう私。

パーティは恙無く進み、乾杯をしようと「辺境の平和を祝って」飲んだのは紅い透明なジュースの筈。
苦味を感じ、お酒と間違えたかと顔を顰める苦さが、毒だったらしい。


すぐに傾いた視界に、自身の身体が倒れた衝撃にも受け身が取れなかった。

「キャー!」

近くの女性が悲鳴を上げ、私専属の執事が駆け寄る。
上体を起こされた私には、見えていた。


毒を入れただろう人
それを命令したらしき人

それを、たぶん期待を持って見る男。

(つまりは、私の死は望まれたものだった。)


しかし、最期に見たのは執事の顔。いつも見ていた眉間の皺が緩まった顔。

なぜ、あんな?


そう思ったくらいには、不思議と感情のわからない表情だったのが記憶に刻まれたのだった。


こうして、私は死んだ。
死因は毒殺。犯人も予想がついており、動機はもちろん後継者の椅子を開けるため。

邪魔な子供を消した。


防げなかっただろうか?油断があったからか。
もう、考えたくもない。疲れていた。



だって、私じゃなくて良かったんでしょう?
微睡みの中を私は、深く沈んだ。

きっとこれが死だ。
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