上 下
5 / 10

しおりを挟む
研究に閉じこもっているお母様は、側妃様という仕事がないとずっと会わない。


「きょう、面会の日だけど来るかな?」

「お待ちになっていると思いますよ」

『いなかったら、どうしてくれよう?』と母に強い乳母だ。
側妃付きの侍女をしていたらしい。

『居なかったら、研究道具を取り上げましょうかね』

顔に書いてある。
そして、女の人がどかどかっと部屋に入ってきて言った。

「紅茶ー。」

ノックなし、簡易なドレスの女性の淑女教育は活かされていないらしい。
けれど、ぬるい紅茶を優雅に啜る。

『喉渇いたわ。』「なんだっけ、あの書類』
『蒸留したから、冷やす時間が…』
母は、研究のことで頭がいっぱいのようだ。


「アイリーン、元気?」
「ええ。元気です。」

これで終えたいらしい。
こちらから話題を提供しなければ。

「お母様はどうして結婚されたのでしょうか。」

「結婚、ね。」

思考を巡らせている。お母様は思考が細波のように広がりやすい。
少し待っていると、話始めた。

「面倒だから結婚したの。
研究させてくれるし、子供は産んでみたかった。からかな?」

本心だ。


「そう。」
参考にはならないかな。

今のところ、貴族がたまに話かけてくる。それに何か解決策があるか聞きたかったけど。
時々、やり返すしかないか。面倒だな。ってお兄様が言ってたのが同感だわ。


今度、お姉様にも対処方法を聞いてみよう。
考え事をしていたら、お母様に次いで言われた。


「結婚したくなったら、したら?」

「そうします。」

結婚は、お兄様やお姉様の迷惑になるかもしれない。
何より、貴族が煩い。

とにか文句を言って、自分の息子をって話しかけてくる。

何が不満なのか?全部だろう。
変わっても変わらなくても、不満を持ち出してくる。


「そういえば王がなんか言ってたけど
王妃がどうにかしてくれるって、言ってたような。」

『なんだったっけ』の興味のない顔。
この場合、王妃様に伺った方が良い。経験則だ。

会話もしたから、早々にお暇しよう。
「お邪魔いたしました。」

『研究の邪魔だけど、また来ても良い』
という態度で、お見送りしてくれる。ソファに座ったままだけど。

「お母様、いつも香油をありがとうございます。愛用してます。」

「そう?」

嬉しい顔になったけど、そっぽむかれてしまう。


これが、可愛いと思う感情だろうか。
お兄様もお姉様をわたしを可愛いといってくださるけど、
笑顔だけが可愛いじゃないのね。


微笑みも張り付けているだけでは、ペラペラで。

可愛げがない
っていうのかしら。


久しぶりの親子の会話を楽しみ、わたしは


王妃様への面会をお願いして、部屋で過ごすことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

婚約者がいるのに、好きになってはいけない人を好きになりました。

桜百合
恋愛
アデール国の公爵令嬢ルーシーは、幼馴染のブライトと政略結婚のために婚約を結んだ。だがブライトは恋人らしい振る舞いをしてくれず、二人の関係は悪くなる一方であった。そんな中ルーシーの実家と対立関係にある公爵令息と出会い、ルーシーは恋に落ちる。 タイトル変更とRシーン追加でムーンライトノベルズ様でも掲載しております。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

たとえこの想いが届かなくても

白雲八鈴
恋愛
 恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。  王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。 *いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。 *主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

処理中です...