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聖レスク学園

変わらぬ心 (※キース視点)

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※キース視点

彼女が彼女であると、理解できた。だから自分は、覚悟を決めて前に出た。


「僕は、彼女に惚れています。」


「嘘よ」

突然の告白に、言葉をこぼしたのはリーダー格の女だ。
キースとの面識もない、何も知らない上級生、多分、貴族令嬢。
その偉ぶり方は、公爵令嬢の派閥なのだろうと予測できる。

学園で貴族の力を奮う、そんな虚栄心を持ってしか生きられない種族。

「何故、嘘だと判断できるんですか?」

「突然何を言い出すんだか、こんな庶民に惚れる要素なんてないし!」
「何の後ろ盾も得られないのよ?」

「あなた庶民でしょ?同情して言い出したんでしょう、出番じゃないわよ!」


追い出しの言葉を吐かれる。

「何故この場で嘘を言って、注目を浴びるのは分かりきっています。
それでも、惚れている女性が助けを求めている状況で出ない訳ないでしょう。」

本気だと冷静な口調で言う。

その突然の登場に、完全に呑まれてしまっている。
まるで睨まれたように。

「不愉快ですわ」

「そう?僕のが不快だよ。だって、僕の大事な女性に難癖つけられているんだから。」


虚勢で立っていた令嬢達は、一歩下がる。
怖いはずない。

相手は男子生徒とはいえ庶民で、顔も名前も知らない。
どこに派閥に所属しているような目立つ事もない、ただの庶民。


それなのに、言い返そうと口を開けなかった。


「キース」

見つめ合う男女、簡単に捻り潰せるはずの相手に私達は何故敗北感を抱くのだろう?


「そろそろ、帰られる時間ではないですか?先輩方。」


その瞳が怖いと思った。
何の感傷もなく、私達を敬わない。全てが傅くべきで、私達が膝を折るのは
尊き地位に君臨する、高貴な女性のみ。



得体の知れない相手を恐れる必要などない筈!

そう心を立て直そうとしたが結局、用意された逃げ道に歩を進めていた。


簡単に捻り潰せる相手だ!

その時点で、負けていると認めることのないまま。


物語で言えばハッピーエンドの場面。

彼女達は悪役、そのお話は学園中に広がる。

学園に来れなくなったのはどちらだったのか?噂話やハッピーエンドの結末は、


庶民の幸せな暮らしと、愛し合う2人の今後の行く末を暗示しているのだった。
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