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聖レスク学園

商人の計算  (※キース視点)

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キース視点

(第三者王子の派閥か)

教室で叫んで帰った人達を見送る。少し後で出た方が避けられるだろう。

(知らずに派閥に入れられるなんて詐欺みたいだ。
庶民が貴族に逆らえないのをわかってやっているんだろう。)

よくわかっていない者、王子様の従者に声をかけられたんだと呑気に喜ぶ者。
自由恋愛派は今の流行だ。舞台では盛り上がるものの、実際の婚約は親を通した紹介や仕事先の関係で婚約する事が多い。

「第三王子は公爵家に次女と婚約されていて、俺たちの狙い目は、そこんとこだよな?!」

(同級生が何を狙ってるのかさっぱり)
その目つきで何を言っているのかと分かったのだろう。続けて補足された。
「第三王子から、公爵家の御令嬢に口利きしてもらうんだ!」

見果てぬ夢を描くバカがここに、居た。
王族には専任の商人というのがある。そこに入っていくよりは、まあ考えているだろうか?

「どんぐりの背比べ並みに。」

それで商売が上手くいくようなら、世の中もっと渡りやすいさとキースは冷めた答えを漏らした。
護衛や慎重に選ぶ筈。学園で同じだからという理由でお金を動かすと思えない。


「オマエも商売やってるんだろ?早く行こうぜ」
「街の小さな薬屋だよ?」

キースの家も商売をしているとはいえ庶民向けの治療院だ。貴族には縁がない。
遠目に、団体が動いているのが見えた。

「第三王子に取り巻きは増えるばかりだ。あんなに引き連れて何がしたいんだろう?」

そんな意味不明な事をするより、図書館に行ってたほうがずっと有意義だろうに。
クラスいちうるさい男・マイキーは、自分は行かない事を告げ、分かれた。

「商人の息子も大変だな」

その後ろ姿にキースがは呟いた。


成績はまあまあ上。キースの交流は少ない。自分は、目立たず平穏に学園生活を送りたい。
「ほっておいてくれ」

そう言って、ほおっておいてくれない例は多い。構ってくる相手、が善意で有意義なことは稀だ。

(彼女みたいに。)


これから、平穏の見込みがないと思えた。
だって、第三王子という渦中に放り込まれたのだから。


「ああ、めんどくさい。」

そんな婚約をうちの両親は勧めないけど。獣人とは違う人の文化ってよく分からない。
これは、自分が獣人だからだろうか?他人に決められた事に従うなんて考えたくない。


特に、権力なんていう顔のない名前だけの物なんて。ペラペラの紙みたいなものだと思う。
使い道が限られて、綺麗にしているだけでの…

「無用なもの」



『貴方が執着できる物を探してきなさい。』

自分がいろんなものに興味を持たない事を、母は気づいて言った。
父は薬に興味を持ってのめり込む性質だ。そう言ったものを探せと助言を受けている。


自分の性質を、理解してくれとは言わない。ただ、ちょっと面倒で疎ましい時があるだけだ。


「まだ今のタイミングじゃない。」

ゆっくり待つ事にした。明日何が起こるかわからないなんて、皆、そうなのだから。

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