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影の戦い

主人とは

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「あの子は、アイナ様のところの子です。」

今、ドミニク様に報告している。
私に接触してきたのが、アイナ様の命令の可能性が出てきました。

ここで部屋付きのドゥイではなく、まだメイドとして日が浅い後輩を狙ったのは良い判断だわ。

「やっと、動きがあったって感じだねえ。」
ドミニク様はのんびり呟かれたけど、その言いようとは反対に文官の方達は書類探しで大変だ。

その上パーティでの書類申請もさばかなければならない。
目頭を抑えるのが癖になっていそうだった。

「ほんと王妃様なんて決まるのかなー」
「健国祭が終わったら、進むわよ。」

そう言いつつも確かに進んでいる気配が感じられません。
王太子様が御令嬢方と交流を持っていらっしゃるのも存じていますが。どうもわからない。
「御令嬢達の積極性?」

「王太子様、交流してるけど。」

「御令嬢方の方です。なんか、こうドロドロを望んでいるんじゃないんですけど。相手との衝突もないし。」

「思ったより動きがない?」

「ええ。アピールとか、こう自分が王妃になるっていう気概でしょうか。」

「建国記念の日が終わってからが本番で、今は様子見や情報収集の段階とか?」
「そうなら、まあ。」

そんな自分達の考えを取り留めなく話して、休憩を過ごす。
話せないストレスをここで少し発散させるのだ。

私達も人間だ。感情に左右されるし、黙っているのも疲れる。
仕事の相手ならまあセーフだし、ここは防音も効く。
ドミニク様と談話室での打ち合わせを終え、部屋を出る。

しばらく歩くとメイドが荷物を抱えて歩いているのが見えた。
少々危なっかしい量の荷物です。

「マライヤ!手伝って」
出会った同僚に呼ばれ、アイナ様の部屋に向かいます、


「やあ。あまりお話できてないよね?」

アイナ様が席を進めてくださる。
「メイドですから。」

断りたいけど。話し相手もメイドの仕事と席に座ることに。
断る選択肢はないようだ。

「部屋付きのメイドの仕事を取るわけにはいかないので。」
「公爵家にお嫁に行くって本当?」

(誰が話したんですか?)

チラッと壁際に立つメイドを見ると、1人目を逸らします。
覚えた。

「はいそうです。今回のパーティで婚約者として参加予定です。」

「メイドしてるの?実は、王妃選定のひとりとか?」


(完全に探りにきてますねー。)
「まさか。私は、今はメイドです」

「でも、公爵家に入るんでしょ?」

(粘りますねー)「今はメイドです。」

「ふーん。」

アイナ様からの追求をかわします。
出された紅茶を飲む。
(このお茶、誰が淹れたのかしら?もう一度研修させないと。)

「所作が綺麗だねぇ」
「ありがとうございます。」

貴族の一員としての作法は会得しているのです。メイドとしても教えられるくらいには。

マナーについては講師を招く方が多いけど。
パーティに出席する方が、メイドから気軽に確認がとれるとより堂々とできる。

王妃様とメイド長から太鼓判をいただいていました。


「ねえ、この部屋の専任になってくれない?この城のこともっと知りたいんだ。」

“引き抜き”
「申し訳ありません。私は部屋付きには入れません。」


「そう、あたしの希望でも?」

「部屋付きについては、メイド長からの指示も必要です。そこの手順の説明はありませんでしたか?」

メイドとして、通せない希望もあるのだ。
相談までは持っていけどるけど、部屋付きになるかなれるかはメイド長の采配。

ドゥイを見る。あの顔は相談されていなかったみたい。なら、他のメイド?
貴方達の仕事よ?部屋付きのドゥイを通さないとここのリーダーの資質が疑われる?

いいえ、メイドとして仕事できてない方の問題よ!
もう一度、研修からやってもらえるようメイド長に進言しましょう。

私から断る心証も悪いけど、しようがない。


退室して、メイド長に告げに行った。
多分何人か入れ替わりとドゥイが呼ばれるでしょうね。

そうして私は自分の仕事に向かったのでした。
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