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玉の章

3-1 三兄弟

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「妖精の瞳」というのは、見えているのに加えて、精霊の性質がわかる人物のこと。精霊の容姿がわかるというのは特別でこの世界では伝説に残っているのみ。

「それが私?」

異世界歴数日の平凡な女を担ごうとしているんじゃないだろうか。精霊の容姿がわかる?私にとっては最初から当たり前だった。人外な美しさもその色合いも。今は友達で夜に話をしてから寝るほど仲良しだ。それは言わない方が良いだろうか?

「妖精は姿を見せますが、手のひらに乗るサイズから人のような姿をとり、人との交流もあります。しかし精霊はその性質と気難しい性格から人との交わりは記録にもわずかに残るのみで…」

ヒースさんが“舌”好調だ。結局、言い出せず、とりあえず伸ばし伸ばしにしている。精霊の招き人として何をすれば良いのかもわかっていないのに、伝説級の瞳を持っている人に認定された。


そんな私だけど生活リズムは変わっていない。朝、麗しい三兄弟と顔を合わせながら朝食をいただく。兄弟愛の行き過ぎに注意しながらオルスタ君とたまに、ヒースさんがついて来て書庫に行き本を借りて話をする。妖精や精霊についてで私の世界との

不思議なことに(まあいっかー)という気持ちだ。正直、もっと郷愁の念とかわいてくるかと思ったんだけど。向こうの世界で拠り所、住みたかったおばあちゃんの家がなくなったからかもしれない。私はこの世界を楽しむことに決めている。食事は美味しいし、専属メイドの2人とも良好な関係を築けていると思う。


領地を治める3人はそれぞれ忙しい。様は剣で治める魔獣のいる世界で領地の守り。この場所は観光地しても開かれている土地だけど、妖精や精霊が多い。見えていない人間が大半でも、悪戯や現象はあるらしい。そう言った現象や統治の法を扱っているのがヒースさん。未成年のオルスタ君は勉強の身という立場。

勉強、視察、“妖精や精霊との交流”と最後にファンタジーな要素が入ってた。一般に、精霊は姿を見せないというか見えない。その限りではないのが、加護がある場合。

長男のアークライト様は存在を感じられる程度。声は聞こえるため会話には支障がないくらい。稀に波長が良い人にもそういう交流ができる人がいるらしい。次男のヒース様は魔力を見ているため、属性はわかるものの靄のようなものと認識している。人の姿という話は空想上のもの、とされていた。

それにしては、見え方が違うのに疑問があったらしい。魔力阻害で認識を歪めている可能性を考えているそうだ。証明する方法を考えているらしい。

オルスタ君が一番よく見えて、泉の精霊なんかは水の塊や魔力の輪郭で“ぼんやりと女の人”という見え方だそうだ。色の細部までわかる、存在の認識はできないそうだ。

(異世界特典だろうか?)

祝福の強さ、魔力の相性が精霊との交流には必要とされてきた。心根の優しさだとか、血縁の者が好かれやすいと言われるもののどれもが不確かで妖精ほどではないが気紛れな精霊は信仰対象にもなっている。姿が見えない故の畏怖と過酷な土地の心の拠り所という意味で。

全てのものに精霊が宿っていると掲げる宗教や研究、妖精や精霊は記録されているものの特定の人間にしか見えない、その人物が文字を書けない事もあり、変に伝わった眉唾物の話も多々あるそうで。そんな中、精霊と共に生きる土地、イーグル家は風変わりな家系だそうだ。

精霊に認められていない人間では領地にいる事もできない。その特殊性故に、重要視されるものの王都での活動はほとんどせず(社交とか)領地に引きこもり、辺境伯の扱い。貴族的な競争は無縁でいられるのが救いだとアークライト様から聴いた話だった。


「精霊の招き人」なんていう異世界の人間を王の元へ!ってならないのかなあって思って聞いたら、この領地の独立的な部分を解説された訳だけど、王都に用事はなさそうだ。川やその先の海、他国との防衛も盛んで、戦争も起きていない中、輸入品も手に入れらるこの地が観光業で栄え、支えているようだ。

王都にあるものなんかも詳しいので、アークライト様に聞く。「王都に行ったことがあるんですか?」長男のアークライトは騎士科を修了し、後継として帰ってきた。次男のヒース様は王都の学園を首席でそつぎょう、文官にと望まれたが研究のために領地に帰ってきた。

末っ子のオルスタ君は兄2人から文武両道と天塩にかけて育てられたそうで、仲は良好だ。末っ子のオルスタ君に構いすぎかもしれないけど、あれで我慢しているらしい。(アークライト様の従者の人証言)

貴族社会では魔力の強さを競い合う、婚礼も精霊に誓うのはこの土地ならでは。魔力を重要視する貴族の結婚のしては異例で、3人に婚約者がいないのは精霊の地ならではの事情。気に入られ逆玉の輿。もしかして私が!という期待の貴族令嬢も領地にやってくるそうだ。

貴族といえば王都、学園、婚約者という印象だけど確実に最近のラノベの影響だわ。

継承争いとか厄介な親戚の影もなく、見ている感じ3兄弟仲が良い。御家騒動というのも周りからの期待や勘ぐりが大きいそうだ(精霊から聴いた話)。ギスギス感などなく、それぞれの時間を過ごしていても、トゲもなく、限定された人だけの空間は広すぎるくらいだ。

少し寂しとさえ感じる。
「そう感じられるのは、女主人のいない館だからかもしれません。」出過ぎたことを言いましたと言ってしまったのプロメイド、セイラの表情は寂しそうだった。

館の飾り付けは女性が主にやるんだっけ?外で働いてくる夫や息子を暖かく快適な家に帰ってこれるように。居候の私が着手する事柄にしては、やりすぎだろうか。

迷うより聴いてみようとアークライト様を捕まえて聞いてみる。

「構わねえが。まあ来客もないから適当にな」と頭を撫でられた。私はあなたの弟君ではないんですよ?最近は、オルスタ君にするように構われ始めている。

長男様とは特に会う機会がなかったけど、懐に入れば甘いタイプのようだ。警戒終了のお知らせが、いつあったのか?朝の時間に遠慮なく止める係になったからかなあ。面倒見の良さからいってずっと気にしてはくれているんだろうけど、わかりづらい!

素直が一番だよね。とオルスタ君の笑顔に癒された。素直だ。兄2人とも鉄壁、アークライト様は無表情で相手へ感情を悟られないようにしようとしている感じで、ヒースさんは柔和な態度に舐めてかかってきたのをやっつける(罠だね)。そんな2人とは違って真っ直ぐ育ったんだねえ。2人も貴族として荒波を乗り越えたのかなあ。

「アーク兄様は武芸を、ヒースお兄様には勉学をもてもらっています。僕もやれることをしないと。」
もうすぐ成人の年齢のオルスタ君が眩しい。

「頼りになるお兄ちゃん達だね」

そんな3人の跡目争いの話は、大方、長兄の継承になるのだけどこの土地ならではの精霊の言うことで変わる可能性がある。

武力で
知力で
妖精や精霊に愛されたオルスタ君を!と周りが五月蝿いうるさいらしい。

「ご両親は?」
「存命なのですが、領地から遠くに。」

「戻られる予定はあるの?」

もごもごと答えられなくなったメイド、ローナの反応に。
それでは、追放ではないか?

精霊からの拒否は、この地からの追放を意味する。ここが精霊の守る地であるから、意をきくのは当然で、代々精霊と交流し、人を治める。

(それに反した?)という予想がたった。人からの情報は集まった。精霊の方から聞いてみようかなと情報収集するのは、自衛に必要だと思うのだ。
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