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本の章

2-2 放牧地

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異世界のに来て数日。
朝食にロールパン、サラダ、ベーコンエッグとホテルの洋食モーニングを思い起こさせ問題なくいただいている。よくわからない葉っぱのサラダからいただき、シャキシャキと音がする新鮮さを楽しむ。ドレッシングはチーズの味がする。ミルクを出してくれるあたりこの領地の乳製品への期待も高まった。

「近くで作ってくれているのを配達してくれるんですよ。」

のんびり独りの朝食をすませ、お茶を淹れてもらいながらプロメイドのセイラから話を聞いた。
この館から砦を抜けると、斜面になっているが牛や羊、山羊を放牧している丘が広がっているそうだ。なんとなく朗らかな雰囲気を感じる。窓越しに見えた砦は岩のようで森の緑にも違和感なく存在感を醸し出していた。

なんでも、森から魔物の侵略を防ぐ目的で、建てられ戦とは無縁の地らしい。
「“精霊の加護のある地を奪え!”ってならないの?」物騒なことを聞いてみたが、精霊の力のが脅威だという。天変地異並みに恐ろしいんだとか。精霊を怒らせないようにしようと密かに決心した。

「チーズ作りの体験やミルク絞りなんかやってますよ。」

良いこと聞いた!なんの動物かは見に行って確認しよう。牛と言ってても私の知っている牛の可能性は?ない気がする。(ヨーグルトもあるかな?)しかし、そうなると乳酸菌がいるのかという疑問が沸き起こる。

「精霊様が祝福した食材で料理したら、“妖精の悪戯”で違うものになることもありますから。」

ファンタジー理論が優先されるようだ。他にも作り方を聞いたら妖精が関わっているかも?

朝のヨーグルトって好きなんだよねえ。ジャムが添えてあったらモア・ベター[より良い]!果物を摘みに行くか?譲ってもらうことを考えるか。料理チートができれば良いんだけど、
(ある程度発達した食文化があるようだからイマイチ発揮出来ないかなあ。)

夕食と朝食を食べただけだけど。なんかこの世界、食はしっかりしていそう。精霊の招き人とい立場からだろうか?昼食は軽く摘む程度になるらしいので、今日の夕食は期待しよう。王子様方と一緒ということはないよね?おいしい朝食の後は、散歩に出ることにした。今日は放牧地まで足を伸ばすわよ!


親しみやすいメイドのローナに着替えの相談にものってもらって、服を選んだ。
テーマは『観光で来た女』

黒髪はこの辺の人にはいないけど、いるにはいるらしい。年齢も未成年に見えることはないとか。若く見える種族もいるので、森の奥に行かなければ見咎められることはないだろう、と。

観光するのに護衛がとかはいらないみたい。守るほうじゃなくて、監視は良いのか?
“精霊がいるなら大丈夫だ”ってご返答らしい、長男様のお言葉だ。
「観光するなら問題ないし領内になら殊更問題ない。普段の警備を各所していれば良い」

そういえば最初から放置だったもんねー。それほど精霊に好かれているって安全なのかな。ぶらつく目的で館から出た。


「行ってらっしゃいませ」


メイド2人のお見送りで、すぐ隣に見える砦へ向かう。

「招き人さん?お出かけですか。」砦入り口にいた兵士さんに声をかけられる。
「散歩に行ってきます。牛とか見たくって。」と私は、愛想良く答えた。


「お気をつけて。」にこやかに通してくれた。

ガシャガシャと鎧の音が響いているのが聞こえる。
(すんなり通ったな。招き人様で通っているのかあ。)“精霊に招き人”として通達され、兵士に周知されているようだ。

出て行く方より、館に来る人をチェックしている所かな?と思いつつ石畳のトンネルを進む。温度が下がったような、瑞々しい建物内で涼しい。暗いが出口には燦々と光が注いでいるのだろう。眩しく光っている。

コツンコツンと編み上げブーツのカカトを鳴らして進んでいく。このまま永遠に?と暗い気持ちになりそうなのをふわりと漂う幼精の存在に励まされる。

「行こう」ぽそりと誘う言葉にキラキラと先導する光たち。そして、太陽の光に吸収されるように光り輝く大地。その斜面のある緑の丘。急な斜面もありそうだ。土の道が続くこの先に街がある。

口笛が遠くまで響きそう。雲が届くような高地にもやがかかったら大変だろうなあ。という感想を持つ景色を歩み出す。

雲が降りてきそうと登頂を望んでも天辺は見えない。涼しい風が降りてくるだけ。肌寒いかな?いいやまだ戻らない。今日の「砦を出る」「観光する」2つの目的を達成できるまで進むべし!



「待って!アイ様!!
崩れている危ない場所もありますので案内させてください。」

声をかけながら近づいてきたのは末っ子の王子様、オルスタ君だった。平民の格好に寄せただろう服は似合っているけど、彼のキラキラは抑えられない。ただ、王子様のひとりについてきて貰えば、生産者さんとの橋渡しも簡単かもという下心も湧き上がる。しかし、

「お勉強は?」17歳、18が成人と認められる世界で(セイラに確認した)私のために勉強の時間を減らしてしまうのは忍びない。

「一緒に行くのも勉強です」と固辞された。こうなると断るのも申し訳ない。

「兄上2人にも断りを入れてきました。お金のことはご心配なく。」更に言い募られ、財布らしき革小物も見せられる。未成年に奢ってもらうという形に申し訳なさがたち、私のお小遣いは遠慮した。

放牧地の散歩なら、すぐお金がいると言うことはなだそうだ。
“アイ様”呼びはやめてもらって、オルスタ君っと共に散歩に付き合ってもらうことにした。


この領地を遊び尽くすぞ!の第一歩。それに、この世界の姿が見えるかもしれない。
砦から牧場を2人目指す。その後ろ姿を気にする人間はいなかった。



「モー」
聞いたことのある高めのモーと、不機嫌な声の「モー」が聞こえる。見た目は茶色の牛さん。君のお乳をが朝食に上がったのかな?雌牛を優しく撫でた。

「大人しいですけど、後ろから脅かしたりはしないようにしてくださいね。魔物の血が騒いじまいますから。」

この見た目でも魔物なのか。雌牛は想像の内の大きさと容姿だった。美人!って感じのクリクリお目めに、もしゃっとしたヘアスタイル。けどね、雄牛はザ・モンスターだわ。サイズも雰囲気もビックで雄々しい。とても撫でさせて欲しいと言えなかった。

途中で放牧されているのを見た羊で、糸を作っていて、山羊と牛でチーズを作っているそうだ。炙れば溶けるチーズになるらしいのでホットサンドに最適だろうか?この程度で、知識チートに発展するか疑問だけど、欲望のが増してきた。

ヨーグルトの確認をすれば、『妖精の悪戯でできることがある貴重な食料』という扱いだとか。乳酸菌いないの?
(おお。ファンタジーなクッキング)と心の中で感想を抱き、私にもできるか聞いた。

「こればっかりは、わかりませんねえ」

気まぐれな妖精の事象を起こすのは難しく、わからないが答えだった。

「アイさ…ん。精霊にお願いすれば、もしかすると。」

できる・できないがはっきりするが、できるならお願いすれば現象を起こしてくれる存在だとか。対価も必要だけど、初めは好奇心で付き合ってくれるのが精霊だとオルスタ君。

「キッチンを借りれるかな?」

今日の予定は、外出。街まで歩いて行くのでは遠いので周辺から攻めるんだ!そうなると砦を通ってこの範囲が精いっぱい。館のキッチンで料理することにし。


館にもミルクを届けてもらっているため、量を増やしてもらう交渉で落ち着いた。

「オルスタ君、まかせた!」任されてくれたので、牛を見ながら、(骨元気にしよう?)とこの世界ではわからないネタに、ここが異世界だと再認識。しょうもないホームシックだなあと我ながら思った。


「オルスタ君が一緒に来てくれて良かった!」お礼にヨーグルトができたらお裾分けする約束をしながら、館へ早々に戻ることにした。無理せず一歩一歩。散歩にしては、慣れない道をまあまあ下れた。
帰りが登りなのがちょい憂鬱。


そして砦に戻ると、「おやおや、お戻りですか?」友好的とは言い難い台詞に迎えられた。


おや?騎士様方とは仲良くできないのかな。
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