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近づく男

プロポーズと求愛 ①

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獣人にとって、つがいは本能でわかるものだ。
これは、理解や歩み寄りではなく本能に近い衝動で
説明が難しい。

俺の番、セリはどうも付き合い方に利や裏打ちされたものを
俺たちに示したいようで、なかなか馴れてくれない。

種族や文化の違いもあるから時間をかけようと思う。手の内に落とすのも楽しい。
他の男が近づくのは気に食わないが。

せめて、匂いづけはしているが、見てわかる印が欲しい。
セリに贈る、俺の瞳と同じ色の石。

ただの石じゃない。
穴を開けさせたくないから、魔石。特別な物を渡したい。

牽制に…
高額なもの(権力の差)
希少な品(特別な相手)
瞳の色(特定の相手がいる)

という条件に倣ったものが良い。
黄色で、魔力が込められる、珍しい物が欲しい。

後に、特殊個体の魔石から得られることになった。
加工は王都の店でする。
さて、どう渡すか?

俺は、以前シュルトから聞いた話を思い出していた。

「呑むぞ!」
テーブルの上に並べた酒。
シュルトに聞き出すのに、使うものだがカナンも釣れた。

席に座ったシュルトに酒を注ぐ。カナンは自分でやりだした。
「セリのことで相談がある。耳飾りを贈りたい。」

ごふっごふっ咽せたカナンは無視だ。

「えーと、腕輪とか指輪の意味と同じだったカシラ?」
知識を確認するように、シュルトが聞いてきた。

「そんなとこだ」
相手が自分の物だと、示す印だ。

「ごふっ……オイ。ヒト族のものとは違って、捕まえた印でもあるだろ!」

相手へのアプローチをしている証明のことを
“首輪をつけた”なんて揶揄されることもある。それのことか。

ヒト族の結婚は、家族や関係性を結ぶ時間があるらしいが
獣人の番文化は、即決・即実行だ。

まどろっこしいと思わなくもないが、そこはセリに”わからせて“やらないとな。

「え“…。」と言って、固まったシュルトに酒を注ぐ。
何か問題があるのか?

頭を抱えて考え始めたシュルトに時間をやり、俺は酒をひと口呑んだ。
氷を入れれば、カナンもグラスを寄越すので塊を入れてやった。

「おまっ…」グラスに収まらない氷の塊を砕くことにしたようだ。
ガチッ…ガチっと砕く音がする。

「渡す前に、プロポーズした方が良いワ」絞り出した結論が告げられた。

「プロポーズ?」
求愛か。なら、ベッドの上で…。
「肉体的なものじゃないわよ!」考えを遮られた。

「ムードのあるところで、気持ちを伝えるの!」

よくよく話を聴くと、
ヒト族で肉体関係を結んでいるだけでは、遊びと捉えられる。
贈り物は、貢ぎ物と解釈されるだろう。

「関係性の持続を得たいなら
セリの結婚観、恋愛の事情に重きをおきなサイ。」
ドライで、冷めていると思われるから、言葉と態度で示す必要がある、と。

「手を出すだけじゃ身体目当てと思って、嫌われるわよ?」

最大の求愛行動を取れないとなるのか。
「ぐっ…じゃあどうすればいいんだ?」

ベッドで可愛がっているし、ヤり過ぎないよう我慢もしている。
スキンシップも増やした。

それでも、手応えがイマイチなのだ。
今までのやり方では齟齬があるらしい。
解消するには、メンバーの協力が必要だと再認識するのだった。
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