蜘蛛の糸の雫

秘書として、そして……

４. 《弘和side》お前は私の側に一生いるんだ。 一生……。

《弘和side》

心中は穏やかではなかった。

秘書の誰かの愚痴でも聞いたのだろう。


あの態度。
どうせ自分の事ではなく、私の事を言っていたのだろうな。
手島の考えそうなことだ。
そいつのことを気遣って、理由も言わずに私の側から離れようとした手島に腹立たしささえ覚えていた。


確かに能力の高い秘書たちだ。
私の望むように仕事もしてくれているし、プライドを持って長年私の側で働いてくれている者ばかりだ。
ただ、私とて、その秘書たちにはなめられないだけの仕事をし、ある意味彼らの望むだけのことをこなしてきた。
そして、それなりの報酬も払っている。
だからこそ、私のすることに口出しなどさせない。

私のデスクの横で座り込む手島をちらっと見た。
俯いてはいたが、握りこんだ拳は何かを決意したようだった。

それでいい……。

お前は私の側に一生いるんだ。
一生……。

そう思うと、さっき見たあの卒業証書の重みを感じ、全身が震えた。



私は手島のほうへ椅子を回した。
まだ床に座り込んでいる手島に、磨き上げた靴を履いた私の足を差し出す。

「ここにキスをして、誓え」

手島は私を見上げる。
熱く、そして一筋光が走ったような瞳。

「ふっ……」

喜びが込み上げ、身体の芯からゾクッと競り上がる興奮に声が漏れる。

這いつくばった姿勢でゆっくりと手島の手が私の靴に触れ、するっと踵から撫でるようにズボンの裾に指を入り込ませる。
ふくらはぎをそっと包み込むように持つと、瞳を閉じ、ゆっくりと私の靴のつま先に唇を宛がった。

「これからは、何があってもお側に……。
社長の秘書として、性処理道具として……。

誓います。

誓います。

一生……」


私はかつてないほどの高まりを覚えた。