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奇跡
2. 《隼人side》どうなんですか? 父さんの様子は……
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《隼人side》
「どうなんですか?
父さんの様子は……」
がんばって静かに落ち着いた口調で手島さんに話しかける。
「うぅぅ……ううっ……」
こんなに取り乱している手島さんを俺は初めて見た。
手は震え息もできない様子に、そっと肩に手を沿えそのまま背中を擦った。
父さんはベッドに横たわり、ピクリとも動かない。
だが、呼吸を補助するために酸素マスクはしているが息は自力でできているようだった。
「失礼します」
部屋へと入ってきたのは、担当医と数名の看護師。
そして今日父さんに付いてパーティーに同行していた秘書だった。
医師からは、過労により不整脈を起こし、突然心肺停止に陥ったという説明を受けた。
普段人間ドックなどにはきちんと行き主治医にも体のチェックはしてもらっていたが、このところのオーバーワークが原因で突然起こりうることだという話だ。
そして、そういった突然の心肺停止の場合、ほとんどが一瞬で命を奪ってしまうということだった。
だが。
「本当に奇跡ですよ。
倒れられて、すぐの的確な処置のおかげとしか言いようがありません」
「ただ、今はまだ意識が戻らず、こちらのほうはなんとも言えません。
やはり心肺停止の時間が長かったので、脳への血流が止まり、障害を起こしている可能性も否定できません。
これから詳しく検査をいたしますが……」
その時………
「ここは……どこだ」
ガターン!!
「ぁぁあああ……ああ……」
僅かなその声に反応し、丸椅子を倒しながら父さんの下に駆け寄る手島さん。
慌てて手を握ると、明らかにその手を父さんの手が握り返していた。
「………父さん」
俺も父さんの下に駆け寄り、声をかける。
普段スーツ姿の父さんが白いシーツの布団で寝かされていると、こんなにも小さく見えるものかと驚いた。
「……隼人…、お前、どうしてここに……。
嶋山産業との商談はどうした」
「何言ってるんですか。父さん、倒れたんですよ」
医師が俺と手島さんを押しのけ、父さんの眼球や喉元を診、聴診器を当て、脈拍を診る。
「この方が誰だかわかりますか?」
医師は父さんの顔を覗き込み、俺を指差して言うと、眉間にシワを寄せ、酸素マスクを剥ぎ取り、体を起こしながら吐き捨てる。
「お前は今の話を聞いていなかったのか!!
私の息子だ。隼人だ。
さっさと商談に行け!!」
俺は心底ほっとした。
ガミガミとうるさい父さんを病室に残し、廊下で医師からこれからの説明を受ける。
数日は検査、それから休養を取らせる。
休んでくれるかはわからないが……。
肉親ではない手島さんは、遠く離れた場所から俺と医師が話している姿を他の秘書とともに見ていた。
他の秘書も父さんと手島さんとの事は知る由もなく、安堵の表情で雑談している。
俺はその秘書たちの下へと近づく。
「これからの父さんのスケジュールは本社に帰って、他のスタッフも含め検討する」
「はい」
二人の秘書はそう返事をすると、急いで本社へと向かった。
私服姿の手島さんも、その後に続く。
「あなたはここにいて……」
「………はい」
俺は手島さんの腕をつかんだ。
もう一人の秘書は父さんとこんな時でも仕事の打ち合わせをしている。
俺は手島さんと病室に入った。
「どうなんですか?
父さんの様子は……」
がんばって静かに落ち着いた口調で手島さんに話しかける。
「うぅぅ……ううっ……」
こんなに取り乱している手島さんを俺は初めて見た。
手は震え息もできない様子に、そっと肩に手を沿えそのまま背中を擦った。
父さんはベッドに横たわり、ピクリとも動かない。
だが、呼吸を補助するために酸素マスクはしているが息は自力でできているようだった。
「失礼します」
部屋へと入ってきたのは、担当医と数名の看護師。
そして今日父さんに付いてパーティーに同行していた秘書だった。
医師からは、過労により不整脈を起こし、突然心肺停止に陥ったという説明を受けた。
普段人間ドックなどにはきちんと行き主治医にも体のチェックはしてもらっていたが、このところのオーバーワークが原因で突然起こりうることだという話だ。
そして、そういった突然の心肺停止の場合、ほとんどが一瞬で命を奪ってしまうということだった。
だが。
「本当に奇跡ですよ。
倒れられて、すぐの的確な処置のおかげとしか言いようがありません」
「ただ、今はまだ意識が戻らず、こちらのほうはなんとも言えません。
やはり心肺停止の時間が長かったので、脳への血流が止まり、障害を起こしている可能性も否定できません。
これから詳しく検査をいたしますが……」
その時………
「ここは……どこだ」
ガターン!!
「ぁぁあああ……ああ……」
僅かなその声に反応し、丸椅子を倒しながら父さんの下に駆け寄る手島さん。
慌てて手を握ると、明らかにその手を父さんの手が握り返していた。
「………父さん」
俺も父さんの下に駆け寄り、声をかける。
普段スーツ姿の父さんが白いシーツの布団で寝かされていると、こんなにも小さく見えるものかと驚いた。
「……隼人…、お前、どうしてここに……。
嶋山産業との商談はどうした」
「何言ってるんですか。父さん、倒れたんですよ」
医師が俺と手島さんを押しのけ、父さんの眼球や喉元を診、聴診器を当て、脈拍を診る。
「この方が誰だかわかりますか?」
医師は父さんの顔を覗き込み、俺を指差して言うと、眉間にシワを寄せ、酸素マスクを剥ぎ取り、体を起こしながら吐き捨てる。
「お前は今の話を聞いていなかったのか!!
私の息子だ。隼人だ。
さっさと商談に行け!!」
俺は心底ほっとした。
ガミガミとうるさい父さんを病室に残し、廊下で医師からこれからの説明を受ける。
数日は検査、それから休養を取らせる。
休んでくれるかはわからないが……。
肉親ではない手島さんは、遠く離れた場所から俺と医師が話している姿を他の秘書とともに見ていた。
他の秘書も父さんと手島さんとの事は知る由もなく、安堵の表情で雑談している。
俺はその秘書たちの下へと近づく。
「これからの父さんのスケジュールは本社に帰って、他のスタッフも含め検討する」
「はい」
二人の秘書はそう返事をすると、急いで本社へと向かった。
私服姿の手島さんも、その後に続く。
「あなたはここにいて……」
「………はい」
俺は手島さんの腕をつかんだ。
もう一人の秘書は父さんとこんな時でも仕事の打ち合わせをしている。
俺は手島さんと病室に入った。
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