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距離
10. 《隼人side》今日のことは全くの偶然だったんだろうか……。
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《隼人side》
ナツは頑張ってる。
俺の今の立場なら、どんな理由をつけてでも、連れ帰るのは簡単だ。
でも、ナツの男のプライドがそれを許さない。
泣いてしまった自分はまだまだだと感じた。
しかし、今日のことは全くの偶然だったんだろうか……。
今は父さんの側で勉強させてもらっている立場上、実家に住んでいた。
二階の応接室の隣、父さんの書斎へ立ち寄った。
コンコン
書斎では父さんと手島さんが仕事の書類に目を通していた。
手島さんはその手をすぐに止め、席を立ち、俺に会釈すると、部屋の隅へと移動する。
「どうだった?」
父さんは書類を眺めながら俺に言った。
……俺の秘書から聞いたのだろうか?
「はい、ご挨拶はさせていただきました。本社の方と取引あるんですよね。
パーティーで何度かお会いしたことがあるくらいでしたので、丁度よかったです」
「……娘さんのほうだよ。
たしか玲菜とかいう名前だったかな?」
「!!!!」
これは……お見合いだったという事を父さんは知っている!!
今回、自分以外には料亭の部屋へは入れなかった。秘書も知らないはず……。
いや、俺の秘書は所詮父さんの手の内の者だ。
これは、はめられた……。
「どういう……」
「あの子はいい。お前に惚れてる。
それに、美人で、頭もいい」
「父さん、俺はそんなつもりはありませんよ。知ってるじゃありませんか!?」
そんな会話の中、手島さんの様子がおかしかった。
「ひ…弘和さん……。何の話を……」
手島さんはそう呟いたが、父さんは俺の方を見据えて言い切った。
「だからだ。
彼女は、お嬢様。金を掛けて育てられた。
そういう女は、金で価値を計るんだ。
結婚するのにはそんな女がいい。
金の額が愛情と思っている女ほど簡単なものはないからな」
「……父さんは、それで母さんを選んだんですか?!」
「そうだ」
「弘和さん!!
……それ以上は……」
手島さんが口を挟む。
俺は驚いた。
いつの間にか手島さんは父さんを名前で呼び、父さんも手島さんの言う事を聞き入れる様になっていた。
あくまでも控えめだったが、父さんの中の手島さんの存在の大きさがわかる。
……だが……。
「父さんは根本的なところで勘違いされています」
「?!」
「父さんは手島さんとの関係をそのままに、結婚もし、子供ももうけました。
それは、跡継ぎが欲しかったというお考えからと、表向き、普通の暮らしをするためだったからだろうとは思います。
ですが、それができたのは、父さんがもともとノーマルだったからです。
でも、俺は違う……。
俺は、女性を抱けないんです」
俺は今までナツでしか興奮した事がない。
性に目覚めたころから、ずっと……。
学生のころは妄想でなんども犯した。
監禁し、実際に抱いてからは、そのナツの姿がずっと俺を興奮させた。
そして、今日も……。
「あの場に、ナツが居たのも、父さんの差し金ですか!?」
「さぁな……。
彼が今何をしているか、私には興味がない。
だかあの場にいたというなら、彼も思い知っただろう。
お前の立場がどういうものか。
自分との距離を実感したに違いない」
「ええ……、そうだと思います。
そして、また闘志を漲らせているでしょう」
「!!」
父さんはずっと書類に目を通すしぐさをしていたが、俺の言葉ですっと顔を上げた。
「もうあんな真似はやめてください。
仕事はちゃんとこなしますから。」
俺は書斎を後にした。
ナツは頑張ってる。
俺の今の立場なら、どんな理由をつけてでも、連れ帰るのは簡単だ。
でも、ナツの男のプライドがそれを許さない。
泣いてしまった自分はまだまだだと感じた。
しかし、今日のことは全くの偶然だったんだろうか……。
今は父さんの側で勉強させてもらっている立場上、実家に住んでいた。
二階の応接室の隣、父さんの書斎へ立ち寄った。
コンコン
書斎では父さんと手島さんが仕事の書類に目を通していた。
手島さんはその手をすぐに止め、席を立ち、俺に会釈すると、部屋の隅へと移動する。
「どうだった?」
父さんは書類を眺めながら俺に言った。
……俺の秘書から聞いたのだろうか?
「はい、ご挨拶はさせていただきました。本社の方と取引あるんですよね。
パーティーで何度かお会いしたことがあるくらいでしたので、丁度よかったです」
「……娘さんのほうだよ。
たしか玲菜とかいう名前だったかな?」
「!!!!」
これは……お見合いだったという事を父さんは知っている!!
今回、自分以外には料亭の部屋へは入れなかった。秘書も知らないはず……。
いや、俺の秘書は所詮父さんの手の内の者だ。
これは、はめられた……。
「どういう……」
「あの子はいい。お前に惚れてる。
それに、美人で、頭もいい」
「父さん、俺はそんなつもりはありませんよ。知ってるじゃありませんか!?」
そんな会話の中、手島さんの様子がおかしかった。
「ひ…弘和さん……。何の話を……」
手島さんはそう呟いたが、父さんは俺の方を見据えて言い切った。
「だからだ。
彼女は、お嬢様。金を掛けて育てられた。
そういう女は、金で価値を計るんだ。
結婚するのにはそんな女がいい。
金の額が愛情と思っている女ほど簡単なものはないからな」
「……父さんは、それで母さんを選んだんですか?!」
「そうだ」
「弘和さん!!
……それ以上は……」
手島さんが口を挟む。
俺は驚いた。
いつの間にか手島さんは父さんを名前で呼び、父さんも手島さんの言う事を聞き入れる様になっていた。
あくまでも控えめだったが、父さんの中の手島さんの存在の大きさがわかる。
……だが……。
「父さんは根本的なところで勘違いされています」
「?!」
「父さんは手島さんとの関係をそのままに、結婚もし、子供ももうけました。
それは、跡継ぎが欲しかったというお考えからと、表向き、普通の暮らしをするためだったからだろうとは思います。
ですが、それができたのは、父さんがもともとノーマルだったからです。
でも、俺は違う……。
俺は、女性を抱けないんです」
俺は今までナツでしか興奮した事がない。
性に目覚めたころから、ずっと……。
学生のころは妄想でなんども犯した。
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そして、今日も……。
「あの場に、ナツが居たのも、父さんの差し金ですか!?」
「さぁな……。
彼が今何をしているか、私には興味がない。
だかあの場にいたというなら、彼も思い知っただろう。
お前の立場がどういうものか。
自分との距離を実感したに違いない」
「ええ……、そうだと思います。
そして、また闘志を漲らせているでしょう」
「!!」
父さんはずっと書類に目を通すしぐさをしていたが、俺の言葉ですっと顔を上げた。
「もうあんな真似はやめてください。
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俺は書斎を後にした。
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