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距離

2. 秘書って募集なかなかなくて……

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「どうだい?大学は……」

「まぁ……、単位は取れたかな。あとは卒論」

オレはもともとハヤが住んでいた高級マンションの最上階の部屋に居た。
今は手島さんが住んでいる。


手島さんは14歳のころからずっと、谷垣さんの性奴隷として側に居たと聞いた。

だが、オレたちの件で何かがあったんだろう。
あれから、手島さんは性奴隷という立場から開放されたようだった。
ちゃんと、不定期ではあるが、休日をもらい、自分の自由な時間を過ごしていた。
オレは手島さんがここに越してからも、このマンションに入り浸っていた。

……ハヤが住んでるときとかわんねぇーな。


住み始めたころ、手島さんは休日何をしていいか考えあぐねている様子だった。
オレが家具やカーテンやほかの物を選ぶのに付き合ったりしたっけ。
それから、勉強を教えてもらったり、仕事の話を聞いたり、オレたちは年の離れた友人となっていた。

大学に進学してからは、実家近くのこのマンションも少し距離があり、月1回程度しか顔を出せなくなったが、実家より明らかにここに来る回数のほうが多かった。

「卒論……ねぇー……。この本なんか、役に立つかも……」

手島さんは本当に勉強熱心だ。秘書に関するあらゆる知識を身につけている。経済、法律、語学、会話術やマナーにいたるまで……。
こんなに側に素晴らしい見本が居てくれるのはありがたかった。

だが……。

「就職活動もそろそろ本格的にしないといけないんじゃないかい?」

「そうなんっすけど……。秘書って募集なかなかなくて……」

「そうだね、うちの会社の秘書も、他からの引き抜きだったり、営業や海外勤務で実績を上げたり、なかなか新卒者は採用しないね。
秘書という仕事は会社の内情に深く精通するからすぐ辞められて他へリークされるのも困るから」

手島さんは最近りハマっているという、スペイン料理を作ってくれた。
テーブルにはパエリアやたこのマリネなどが並ぶ。

「いただきまーす。
なに! このチョリソーめっちゃ上手いんだけど……」

手島さんは嬉しそうに笑った。
大食いの俺に料理を作るのが楽しいと、いつも手の混んだものを作ってくれる。
ちょっと、息子にでもなった気分だ。
食後、コーヒーを入れてもらって堪能していると、おもむろにオレの前に名刺を出してきた。

「ここに行く気はない?」

そこにはある会社の名前と代表取締役と書いた肩書きの人物の名前が記されていた。

「……これ、手島さんのつてですよね」

オレはその名刺を突き返した。


「気持ちはわかるよ。でも、何もつてがない状態でうちの会社の秘書にまでなろうと思うと、何年もかかってしまう。
………隼人さんへの近道と考えて…ね。
こちらには私からの紹介なんてのは言わないでおくから、有能な人材を欲しがっているんだよ」

「…………、、、」

ハヤの名前を出されると辛い。


「明日、とりあえず顔を出してみて。有能な人材なら卒業も待ってもらえる」

「……わかりました」

手島さんはオレの手をぎゅうっと握った。

彼の想いが伝わる。
どんなにオレたちのことで心を砕いてくれているのかが……。

どうしても自分と谷垣さんとが被ってしまうのかな。

『君達と私達は根本的に違うから……』
とはいうものの……。




正直、何も糸口が得られていない状況にヤキモキしていたオレは、この名刺の会社を訪問する事を決めた。


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