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別れのとき
5. ここでお別れだ
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カーテンを開け、外の景色で別れのときが近いことがわかった。
海の波が街の光でキラキラしていた。
眩し過ぎる位で、オレは目を細める。
空港のターミナルが見え、どくんっと大きく心臓がなった気がした。
オレはオレの肩を強く抱き寄せるハヤを見上げて、もう一度キスをする。
お互いの精液の味がした。
羽田ロンドン間のチケットは谷垣さんの指示ですぐに手配された。
日本に長居は無用ということだ。
ハヤはまさにとんぼ返りさせられる形となった。
でもそれはオレたちの決断を鈍らせないための遠まわしの優しさだったのかもしれないと今になって思う。
国際線ターミナル前で車が止まり、運転手が扉を開けた。
ボストンバック一つで帰ってきたハヤは車内の荷物だけだったため、そのまま降り、オレが降りるのを待っていた。
運転手が、「では、駐車場へ移動します。お戻りは何分後でしょうか?」と尋ねていた。
「ここでお別れだ」
オレは車から降りずに、俯きそう呟いた。
「え……」
「もうここでさよならだ。
ずるずると引きずんのヤだからな……」
オレは開いた扉から反対側の席に座ったまま、視線は下を向いていた。
泣いてしまいそうだった。
決意が鈍りそうだった。
もっとあいつの温もりを求めてしまいそうだった。
突然腕を持っていかれた。
がばっとハヤが片足だけ車内に乗り込みオレの腕を引っ張った。
オレは目を丸くして、ハヤのほうを見る。
「じゃぁ、最後に……握手だ」
「おう………」
オレたちは見つめあい、お互いの健闘を祈るように
強く
強く
握手をした。
その眼差しは、寂しさや後ろ髪を引かれる想いではなく、オレたちの未来を見ていた。
そんなハヤを見て、オレも泣いてしまいそうな今の自分とは決別し、これからを飛び立つオレたちを見つめていこうと思った。
「じゃ……」
「おぅっ!」
握り合った手が離れ、短い最後の会話を交わした。
車の扉が閉まり、発進する。
オレはもうハヤのほうを見なかった。
ハヤも足早に国際線ターミナルへ足を向けた。
海の波が街の光でキラキラしていた。
眩し過ぎる位で、オレは目を細める。
空港のターミナルが見え、どくんっと大きく心臓がなった気がした。
オレはオレの肩を強く抱き寄せるハヤを見上げて、もう一度キスをする。
お互いの精液の味がした。
羽田ロンドン間のチケットは谷垣さんの指示ですぐに手配された。
日本に長居は無用ということだ。
ハヤはまさにとんぼ返りさせられる形となった。
でもそれはオレたちの決断を鈍らせないための遠まわしの優しさだったのかもしれないと今になって思う。
国際線ターミナル前で車が止まり、運転手が扉を開けた。
ボストンバック一つで帰ってきたハヤは車内の荷物だけだったため、そのまま降り、オレが降りるのを待っていた。
運転手が、「では、駐車場へ移動します。お戻りは何分後でしょうか?」と尋ねていた。
「ここでお別れだ」
オレは車から降りずに、俯きそう呟いた。
「え……」
「もうここでさよならだ。
ずるずると引きずんのヤだからな……」
オレは開いた扉から反対側の席に座ったまま、視線は下を向いていた。
泣いてしまいそうだった。
決意が鈍りそうだった。
もっとあいつの温もりを求めてしまいそうだった。
突然腕を持っていかれた。
がばっとハヤが片足だけ車内に乗り込みオレの腕を引っ張った。
オレは目を丸くして、ハヤのほうを見る。
「じゃぁ、最後に……握手だ」
「おう………」
オレたちは見つめあい、お互いの健闘を祈るように
強く
強く
握手をした。
その眼差しは、寂しさや後ろ髪を引かれる想いではなく、オレたちの未来を見ていた。
そんなハヤを見て、オレも泣いてしまいそうな今の自分とは決別し、これからを飛び立つオレたちを見つめていこうと思った。
「じゃ……」
「おぅっ!」
握り合った手が離れ、短い最後の会話を交わした。
車の扉が閉まり、発進する。
オレはもうハヤのほうを見なかった。
ハヤも足早に国際線ターミナルへ足を向けた。
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