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お互いの気持ち

2. おおっと、とにかくなにか着ようかな。

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今、何時?


この部屋によく似合う、ごてごてした調度品のような置時計に目をやった。
時間は7時40分過ぎ。
たぶん2時間は寝ていたかなぁ。

ハヤの睡眠時間が気になった。

おおっと、とにかくなにか着ようかな。

ハヤには薄い掛け布団をきせたが、長く裸が身についてしまっていて、自分は何も着ていないのに違和感がなかった。
バスルームのタオルかけの横にバスローブがあったのを思い出した。
それを着て、そぉっと廊下に繋がる扉を開けた。


人影はなかった。

扉の前にカートとキャスター付きのハンガーラックが置いてあり、カートの上には二人分の食事の皿やスープの器などが3段にわたって乗せられていて、ハンガーラックには、高級ブランドのロゴの入ったカバーのかかったスーツが二着掛けられいた。
オレは、静かにその二つを部屋へと押し入れた。

よく見るとハンガーラックの下の台にはオレがここに来るとき着ていた制服とカバンもあった。
スマホのメールや着信は喧しいほど入っていて、オレは静かに画面を消した。


あんなに大切だったチャットのやり取りも、バイトのシフトも、合コンの手配も、流行ってるファッションも、ゲームのセーブデータも、今のオレには必要ないもののように思えた。

コイツのことだけ……。

本当に大切にしたいものが出来たとき、人は初めて真っ直ぐに進めるものだと感じた。


スープが冷めないうちにとハヤの枕元に腰を下ろすと、少しカールしたハヤの髪をかき上げ声をかけた。

「ハヤ…… ハヤ……」

ゆっくり大きな手がオレの頭を引き寄せ、抱きしめる。

「ごめん……俺、寝ちゃってた……」

静かに耳元で呟くその声にもオレはドキドキする。

「い……いいよ。寝てねぇーんだろ。
本当はもっと寝かしてやりたかったんだけど、手島さんから、差し入れ」

オレは照れくさくて、ガバッと身体を起こすと、カートのほうへ目をやった。



オレ達は冷めないうちに食事を終え、二人で風呂に入った。

オレはシャワーを浴びたからいいって言ったけど、ハヤがどうしてもって……。
いや、ホント、どうしてもって言うから、一緒に入った。

へへっ、膝に座って、湯船に浸かったりしたんだけど……。

ハヤは下着姿に、軽くバスローブを肩に引っ掛け部屋の中央に置かれたテーブルセットに腰をおろした。
たくましい胸板がバスローブからチラチラ見えて、さっき風呂場で散々見たのに、なんだかドキドキした。

「手島さんが俺に連絡をくれたんだ」

「………うん」

とうとう来た。本題だ。ハヤはどこまで知っていたんだろう?
オレはどこまで話したらいいんだろう。

「手島さんを知ってるんだね」

「………うん。

オレがここに来るってのは、自分で決めたんだ。
谷垣さんや手島さんに無理矢理連れて来られたわけじゃなくて……。
部屋に鍵もかけられてないし、だから……オレ……」

「自分から俺の性奴隷になろう……と……」

「…………」


俺は俯いた。
今はその考えは間違っていたと思っていたからだ。


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