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二章:令嬢になる元令嬢
おまけ ヒロインside2
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× × ×
クロロフェルがルーカスと話している間。クロロフェル二番目に気づいた世界のヒロイン。スミレは荒れていた。なんで今出て来る。この空気読めないクズが。おっと、失礼。
「なんでよ!なんで!」
なんどもなんども、近くに置いてあった木箱を蹴り、粉々にしていく。
「乙女ゲームと同じ所に向かったのに何で攻略対象のノアとセイがいないの!?おかしいでしょ!?」
私はこの世界のヒロインなのよ!!?どうして思い通りにいかないの!?もうずっとぼろい家で、固いベットで寝て、畑仕事の手伝いとか家事とかしてる訳?おかしいでしょ?
この村の奴らはもう落とせた。だから忠実に私の命令を聞く。それはそれで気分がいいけど、私が狙ってたノアとセイがいないなんて予想外だったわ!!
スミレは前髪をかき揚げ、右手の親指の爪を強くかむ。ここはスミレの一人部屋で、人はいない。だからこんな態度を取っている。顔はお世辞にも優しいなんて言えない鬼の顔。百年の恋も冷めるね!というか恋にすら落ちる要素は無い!
けどあの場所には血痕があった。奥に続いてたからたどって行ったけど、途中で途切れてた。あの血の量は医療を全く知らない私でも瀕死だとわかるほどの量。もしかして魔物に食べられた?いや、ここは乙女ゲームのはず。そんなことは起きないはず。バグか?もう一度確かめてみようかしら。
スミレは、座っていたベットから勢いよく立ち上がり、鏡を覗き込み、怒りでぐしゃぐしゃにした髪を整え、一度、笑顔を作る。
さっきの変わりようが凄くて寒気がする。本性を知っていたら気分が悪くなるほどだ。
「よし。今日も完璧ヒロインスマイル。このスマイルで攻略対象達はヒロインにトキメクんだから。しっかり練習しているもの」
そんなことしている暇があれば、勉強しろ。と、スミレの両親やクロロフェルが聞いていたら言っていただろう。それぐらいに、スミレは勉強ができない、阿呆と言うことだ。両親は既にスミレとは縁を切っている。絶縁だ。もちろんスミレはそのことを知らない。乙女ゲーではそうなっていたからだ。因みにスミレの両親は養子をとって、今ではスミレの事などさっぱり忘れて、幸せに過ごしている。
「あら?スミレちゃん?どこかに出かけるのかい?」
「はい。ちょっと散歩に」
こいつは私を拾ってくれた村の村長の妻。興味ないけど、誤機嫌取りはしておかないとね。私は、部屋を出て、短い廊下を通って、小さいドアをあける。
本当に小さいわね。ドアを開けてくれる執事もいない。はぁ、いつまでこんな生活で過ごせば良いんだろう。
これでも平民のしかも農民にしては大きい家だ。スミレは前世で過ごしたよりも大きな家にも関わらず、そんなことを思う。前世では日本で育ったはずなのにどうしたらそんな貪欲に、屑に育ったのだろうか。そして、道中すれ違う人に、スミレは一人一人に挨拶をする。
「こんにちは」
「こんにちは、ほんとスミレはきれいだな。うちの息子をもらってくれないか?」
「ふふ、ご冗談を、息子さんにはもっと良い人がいますよ」
そんな会話をする。だが実際、スミレの内心は、
『誰がお前のブスクソカス息子をもらうかよ!そんなのそこらへんの豚にでもあげとけ。お前の息子にお似合いの雌豚はそこらへんにいっぱいいるだろうがぁ!』
こんな感じである。口が悪い。しかもお前がその雌豚だろ、と思う。ナレーターの私が口が悪くなるのはもうこの際置いて置いてください。そして、スミレは、血痕を見つけた場所、近くの森に向かう。
はぁ、疲れた。なんでこの私がいちいち返事と挨拶をしなければならないの!?しかも声をかけられたのならもっとうれしそうにしろよ!!こんな美少女が話しかけてやってんのに、空気読めねぇな。
「.......やっぱりいない。血痕は残ってるんだけどな....」
何としてでも王妃になりたい!イケメンにちやほやされたい!なんでうまくいかないのかな!?欲しい宝石とかアクセサリーとかいっぱいあるのに!!
「くそっ!!!まじで何なんだよ!!私はヒロインなのに!私の思い通りにならない世界なんていらないのに!!すべて、私の思い通りになれば良いのに!!」
『汝、この世を恨むか?』
「だれ!?」
突然響いてきた声に、スミレは振り向く。だが、誰もいない。けど、昼なのに、先ほどより、周りが暗くなった気がした。どんよりとした雰囲気が包む。
『汝、汝が望みを叶えんとするが為に、力を望むか?』
「.....力?」
『そうだ、だが、それには我と契約をしてもらう。魂、にな』
「.........望みが叶えられるの?」
『思い通りにならなければ、力でねじ伏せ、思い通にできる世界を作れば良い』
「思い、通にできる、世界.......その力、欲しい!!」
『たとえ悪魔に魂を売ろうとも、か?』
「ええ!ええ!!望みが叶うなら喜んで売ろうじゃない!力が欲しい!何でも思い通りにできる力が!!」
『ククク.....まだ人間にこんな貪欲な者がいたとは,,,,,良いだろう。汝に力を与えよう。いまここに契約はなされた。思う存分に力を振るうと良い....」
その言葉とともに、スミレを影が包む。
「はははははははは!!これで私の思い通りに!!!」
これで憎っくき悪役令嬢のあいつを兵士どもの枕にできる!!待ってなさい!!攻略対象は私の物なんだから!!
狂ったように、流れてくる力に笑いをこぼす。関係ないクロロフェルに怒りを向ける。その欲望、怒気の声にかき消されて、スミレに契約を持ち込んだ何かの最後の呟きはスミレには届かなかった。
「思う存分に破壊をまき散らし、恐怖を振りまけ。御方の復活のため」
何かは、闇に溶けて、消えて行った。力に笑い狂うスミレを置いて。
--------
ヒロインがゲス!!この一言に限る!!
クロロフェルがルーカスと話している間。クロロフェル二番目に気づいた世界のヒロイン。スミレは荒れていた。なんで今出て来る。この空気読めないクズが。おっと、失礼。
「なんでよ!なんで!」
なんどもなんども、近くに置いてあった木箱を蹴り、粉々にしていく。
「乙女ゲームと同じ所に向かったのに何で攻略対象のノアとセイがいないの!?おかしいでしょ!?」
私はこの世界のヒロインなのよ!!?どうして思い通りにいかないの!?もうずっとぼろい家で、固いベットで寝て、畑仕事の手伝いとか家事とかしてる訳?おかしいでしょ?
この村の奴らはもう落とせた。だから忠実に私の命令を聞く。それはそれで気分がいいけど、私が狙ってたノアとセイがいないなんて予想外だったわ!!
スミレは前髪をかき揚げ、右手の親指の爪を強くかむ。ここはスミレの一人部屋で、人はいない。だからこんな態度を取っている。顔はお世辞にも優しいなんて言えない鬼の顔。百年の恋も冷めるね!というか恋にすら落ちる要素は無い!
けどあの場所には血痕があった。奥に続いてたからたどって行ったけど、途中で途切れてた。あの血の量は医療を全く知らない私でも瀕死だとわかるほどの量。もしかして魔物に食べられた?いや、ここは乙女ゲームのはず。そんなことは起きないはず。バグか?もう一度確かめてみようかしら。
スミレは、座っていたベットから勢いよく立ち上がり、鏡を覗き込み、怒りでぐしゃぐしゃにした髪を整え、一度、笑顔を作る。
さっきの変わりようが凄くて寒気がする。本性を知っていたら気分が悪くなるほどだ。
「よし。今日も完璧ヒロインスマイル。このスマイルで攻略対象達はヒロインにトキメクんだから。しっかり練習しているもの」
そんなことしている暇があれば、勉強しろ。と、スミレの両親やクロロフェルが聞いていたら言っていただろう。それぐらいに、スミレは勉強ができない、阿呆と言うことだ。両親は既にスミレとは縁を切っている。絶縁だ。もちろんスミレはそのことを知らない。乙女ゲーではそうなっていたからだ。因みにスミレの両親は養子をとって、今ではスミレの事などさっぱり忘れて、幸せに過ごしている。
「あら?スミレちゃん?どこかに出かけるのかい?」
「はい。ちょっと散歩に」
こいつは私を拾ってくれた村の村長の妻。興味ないけど、誤機嫌取りはしておかないとね。私は、部屋を出て、短い廊下を通って、小さいドアをあける。
本当に小さいわね。ドアを開けてくれる執事もいない。はぁ、いつまでこんな生活で過ごせば良いんだろう。
これでも平民のしかも農民にしては大きい家だ。スミレは前世で過ごしたよりも大きな家にも関わらず、そんなことを思う。前世では日本で育ったはずなのにどうしたらそんな貪欲に、屑に育ったのだろうか。そして、道中すれ違う人に、スミレは一人一人に挨拶をする。
「こんにちは」
「こんにちは、ほんとスミレはきれいだな。うちの息子をもらってくれないか?」
「ふふ、ご冗談を、息子さんにはもっと良い人がいますよ」
そんな会話をする。だが実際、スミレの内心は、
『誰がお前のブスクソカス息子をもらうかよ!そんなのそこらへんの豚にでもあげとけ。お前の息子にお似合いの雌豚はそこらへんにいっぱいいるだろうがぁ!』
こんな感じである。口が悪い。しかもお前がその雌豚だろ、と思う。ナレーターの私が口が悪くなるのはもうこの際置いて置いてください。そして、スミレは、血痕を見つけた場所、近くの森に向かう。
はぁ、疲れた。なんでこの私がいちいち返事と挨拶をしなければならないの!?しかも声をかけられたのならもっとうれしそうにしろよ!!こんな美少女が話しかけてやってんのに、空気読めねぇな。
「.......やっぱりいない。血痕は残ってるんだけどな....」
何としてでも王妃になりたい!イケメンにちやほやされたい!なんでうまくいかないのかな!?欲しい宝石とかアクセサリーとかいっぱいあるのに!!
「くそっ!!!まじで何なんだよ!!私はヒロインなのに!私の思い通りにならない世界なんていらないのに!!すべて、私の思い通りになれば良いのに!!」
『汝、この世を恨むか?』
「だれ!?」
突然響いてきた声に、スミレは振り向く。だが、誰もいない。けど、昼なのに、先ほどより、周りが暗くなった気がした。どんよりとした雰囲気が包む。
『汝、汝が望みを叶えんとするが為に、力を望むか?』
「.....力?」
『そうだ、だが、それには我と契約をしてもらう。魂、にな』
「.........望みが叶えられるの?」
『思い通りにならなければ、力でねじ伏せ、思い通にできる世界を作れば良い』
「思い、通にできる、世界.......その力、欲しい!!」
『たとえ悪魔に魂を売ろうとも、か?』
「ええ!ええ!!望みが叶うなら喜んで売ろうじゃない!力が欲しい!何でも思い通りにできる力が!!」
『ククク.....まだ人間にこんな貪欲な者がいたとは,,,,,良いだろう。汝に力を与えよう。いまここに契約はなされた。思う存分に力を振るうと良い....」
その言葉とともに、スミレを影が包む。
「はははははははは!!これで私の思い通りに!!!」
これで憎っくき悪役令嬢のあいつを兵士どもの枕にできる!!待ってなさい!!攻略対象は私の物なんだから!!
狂ったように、流れてくる力に笑いをこぼす。関係ないクロロフェルに怒りを向ける。その欲望、怒気の声にかき消されて、スミレに契約を持ち込んだ何かの最後の呟きはスミレには届かなかった。
「思う存分に破壊をまき散らし、恐怖を振りまけ。御方の復活のため」
何かは、闇に溶けて、消えて行った。力に笑い狂うスミレを置いて。
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ヒロインがゲス!!この一言に限る!!
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