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4月

風紀委員の顔合わせ 2

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「書けた、かな?」
「あ、はい。お待たせしました、書けました!」

葵先輩が教卓から覗き込むように前屈みになって、黒板の決定事項を書きている美鈴ちゃんに尋ねた。

あ、これは、葵先輩と美鈴ちゃんの絡みですね!
ひっそりと息を殺して状況を見てよう。
まあ、教室に数人まだ残っているけど気にせず話し始めたから、気配を消す必要はないかもしれないけど。

千香ちゃん、ちょっとだけこのイベントを見てから帰ろう?絶対零度のオーラは出さずに、静かに傍観しててね。
と、心の中で話しかける。以心伝心してきっと伝わるよね!
千香ちゃんが楽しそうで、けど同情するような、何とも言えない目で私を見てる気がするけど気のせいだよね。

葵先輩が美鈴ちゃんから紙を受け取り、

「うん、分かりやすくまとめてあって見やすいよ。愛咲さん、綺麗な字だね」
「ありがとうございます。あ、あの、なんで名前知って?」

フッと微笑む。

「さっきの会議でみんな軽く自己紹介したでしょ?」
「ああ、覚えててくれたんですね。ありがとうございます」
「俺の名前は覚えてる?」

少し意地悪な笑みを浮かべた葵先輩に、自信なさげな美鈴ちゃんが小さな声で答える。

「西川先輩、ですよね?」
「うん、正解。西川 葵です。三年間風紀をやってるのが俺しかいなかったから、風紀委員長になりました。よろしくね?」

会議の時にもしたのに、ここで再び自己紹介で、確実に名前を覚えてもらうんですね!
いけいけ、ゴーゴー!です。葵先輩が頑張れば、それだけ私の出番の可能性が上がるからね。

ほのぼの自己紹介をしていた二人だが、美鈴ちゃんが小さく、あっ!と声を上げた。

「私が書いていたから黒板をそのままにしてくれていたんですね。すみません、今消します」

慌てて机の横を通り前に出ようとした美鈴ちゃんは、自分のペンケースを引っかけたようで、落として中身を散らかした。
そのことでさらに焦ったようで、ペンを急いで拾おうとしている。

見ていて飽きないって、こういうことですね。
アワアワしてちょこまかと動く美鈴ちゃん、萌え。

葵先輩も美鈴ちゃんの方へ行き、いくつかペンを拾い上げる。
定番の、同じペンを拾おうとして手が触れて――というのもやっていた。ほほう。

さらに美鈴ちゃんが慌てて、和んだ。
なんというか、ご馳走様です!

拾ったペンを美鈴ちゃんに手渡し、

「慌てん坊だね、落ち着いて?」

微笑みながら美鈴ちゃんの顔を覗き込む。

「黒板は俺が消しておくからしなくていいよ」
「え、でも」
「記録係をやってもらったからね。今度は俺に任せて?」

ね?と首を傾げながら笑顔で言われたら引き下がるしかない。

「じゃあ、お願いします」

軽くお辞儀をした美鈴ちゃんの頭にポンと手を置き、黒板を消し始める葵先輩。
ペンケースを鞄に入れ、お先に失礼しますと声をかけて美鈴ちゃんは帰っていった。


わわわっ。大、満、足!!
美鈴ちゃん、まじ可愛い!

と、興奮していた私はハッと気づく。

「千香ちゃん、ごめんね!今ちょっと私の浮気心が暴走してた」

大切な千香ちゃんの目の前で美鈴ちゃんに浮気していた。
イベントの観察のために残っていたはずなのに、いつの間にか美鈴ちゃんに萌えてたよ。私のバカー。

「まあ、なんとなく分かったからいいわ」

千香ちゃんが溜息交じりに許してくれた。慈悲深いです。女神よ、感謝します。

けど、と千香ちゃんが静かに続ける。

「……未希は私が一番、よね?」

弱弱しく尋ねた千香ちゃんに、私の胸はズキューンと撃ち抜かれた。
撃ち殺しです。銃殺です!完全犯罪です!
頭が取れそうなほど首を縦に振って、千香ちゃんへ誠意を示す。

「なら、いいわ。ちょっと面白そうだから黙って見ててあげる」

無邪気に笑う千香ちゃんに、写真撮ってもいいかな?と考える。
すると、

「千香、未希」

もう私達以外誰もいなくなった教室で、葵先輩が教卓のところに立っていた。
あ、葵先輩の存在忘れてたよ。

「用がないなら、一緒に帰ろう。二人にクレープ奢ってあげる」

クレープ!
その言葉に反応してしまう私は悪くないよね。甘い物、大好き!

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