上 下
1 / 100
始まる前

可愛いは正義

しおりを挟む
「きゃぱぁぁぁあーーーーーっ」

思い出したっ。思い出したっ!

何のきっかけもなく、強いて言うならば学校へ行こうと自分の部屋から足を踏み出した時に。

そう、思い出したのだ!
ここは乙女ゲームの世界だと。

私が前世で大好きでとてもやりこんでいた『恋と友情、美しき青春~風紫学園』の世界だと。


『恋と友情、美しき青春~風紫学園』は、そのタイトル通り青春を謳歌するゲームである。
攻略対象との恋はもちろん、友情を育んでエンドを迎えることもできる。
前世の私は攻略対象を一通りやった後で、この友情エンドを極めまくった。

それはもう、リアルの友人がドン引きするくらいにやりまくった。

なぜドン引かれるのかというと、私の異常なやり込み様もあったのだろうが、
このエンド自体が色々と物議を醸したエンドだからでもある。

というのも、友情エンドというのは攻略対象を取り合ったライバルキャラとの間で育むものだからだ。

恋のライバルと、対立していく中で芽生える友情。
その友情が恋愛感情に勝り、攻略対象そっちのけでイチャイチャしだすのだ。

通称、百合エンドともいう。

百合と言われているが、あくまで友情なので別にキスしたりするわけではない。

え?私が百合なのかって?
いやいや。
私はノーマルで、恋愛対象はちゃんと男子だよ。

前世の私は、誰との友情でも良いから、とりあえず友情エンドを見続けた。
こう言うと、身も蓋もないないのだが、特定の誰との友情エンドが素晴らしい、ということはないのだ。
皆、素晴らしいのだ。


だって私が一番好きだったのはヒロインなのだから!


何を言ってるんだって?
だから、前世の私が好きだったのはヒロインなのだ。


さて、少し前の説明に戻ろう。
この友情エンド、何がそんなに議論を巻き起こしたのかというと、多いのだ。

バグやお化けじゃないぞ。
攻略対象とヒロインのスチルよりも、女の子同士でイチャついているスチルの方が。
一枚や二枚じゃない。三倍くらい量が違うのだ。
しかも、攻略対象ごとに違うライバルキャラがいる。そのライバルごとに友情エンドが存在するため、全部のスチルを集めると友情ルートに入ってからのスチルが圧倒的に多いのが分かる。
乙女ゲームなのに、まるで攻略対象の方がオマケかと思うくらいに。


私は友情エンドを極めることで、スチルを集めまくった。

攻略対象とのスチルでは攻略対象ばかりが写っていて、ヒロインが隠れていたり後ろ姿なものばかりだった。

だが、友情エンドは違う!

友情エンドではヒロインが堂々と写っていた。
ライバルキャラとヒロインのツーショットに本気で悶えた。女の子は可愛いっ。特にヒロイン可愛すぎっ!


私は、初めて友情エンドをした時のことを覚えている。
友情ルートに入ってすぐに手に入れたスチルを見て、雷に打たれた思いがした。

絵師さんの腕が良かったのかもしれないが、ものっすごく可愛かった!
そして、ゲームでは自分自身が動かすキャラクターであるのに一目惚れした。

その直後、自身の分身であるからプレイ中は全然姿を見れないと気付き泣いた。
5分後に、見れないならキャラクターを見ることのできる友情エンドを極めようと決意して復活した。

もう一度言うが、別に私は百合ではない。

百合じゃないけど、可愛いものはとても好きなのだ。
可愛いは正義だ!
可愛いものは愛でたくなる!


そして、ゲームの中でしか愛でられなかったヒロインを、この世界なら実際に愛でることができる!


さてさて、皆様もうお忘れかもしれないが、冒頭の奇声。
あれはそのことを瞬時に気付いた私の喜びの発狂である。

あ、そこ。病院に電話しないで。
別に頭を強く打ったわけじゃないから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います

ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には 好きな人がいた。 彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが 令嬢はそれで恋に落ちてしまった。 だけど彼は私を利用するだけで 振り向いてはくれない。 ある日、薬の過剰摂取をして 彼から離れようとした令嬢の話。 * 完結保証付き * 3万文字未満 * 暇つぶしにご利用下さい

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。

Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。

処理中です...