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第四章:未来へのラウンドアバウト

腕を強く掴まれて

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整え直した髪に悠馬さんに頂いたバレッタを付け、食堂へ戻ると、私達とすれ違いだったのか長谷川様も皆とテーブルを囲み、談笑されていた。

「長谷川様、お帰りになってたんですね」

と私が少し離れた位置から声をかけると、長谷川様はグラスを持ったまま、ひょっこりと顔だけをこちらに覗かせて、

「おー! 環ちゃん、悠馬さん。何処行ってたの?」

と言った。

「ああ、もう……ごめんなさい。長谷川さん、私のせいなのよ~」

叔母さんは少し酔いが冷めて落ち着いてきたらしく、私と悠馬さんの方をちらりと見やると、バツの悪そうな顔して肩を竦めた。

「叔母さん、気にしないで」

彼女のところに小走りで駆け寄ると、

「おお!! 私の可愛い環ちゃん。ごめんね~」

と熱い抱擁を受けた。

そんな私達をぽかんとした顔で眺める長谷川様に、悠馬さんは小声で事の次第を説明してくれているようだ。

「環ちゃん、悠馬君、おかえり。さぁ、二人もお料理の続き頂いちゃいましょう」

石川様は私達が席に戻れるように、それとなく声をかけてくれた。

「……お二人には申し訳ないのですが、メインのお料理を皆さんにはお出ししましたので、今、お二人の分もお持ちしますね」

そう言うと、片桐さんはナプキンを軽く畳んで椅子に置き、席を立った。

「あっ、片桐さん。いいよ、俺が取りに行くから」

悠馬さんが、そう言って後を追うと、

「大丈夫です。悠馬さんと翠川さんは、ゆっくり座っていてください」

と、片桐さんは悠馬さんを軽く手で制し、厨房に姿を消した。

片桐さんに『座っていてください』と言われたものの……
私達が席を外していた間も、きっと皆のお料理等をサーブしたりて片桐さんは寛げていないはずだ。

「……私、ちょっと厨房に行ってくるね」

そう言って私が席を離れようとした瞬間、悠馬さんが私の腕をきつく掴んだ。

「片桐さんが『座ってて』って言ってくれたんだからさ……話してようよ」

「……うん、分かった」

――悠馬さんが時々、分からなくなる。
さっき片桐さんと私が話していた時は『席を替わろうか』なんて言っていたのに……

「……環ちゃん、ごめん。さっき腕、痛かったでしょ?」

「ううん、大丈夫……ほら、悠馬さんも今日は飲んじゃお」

悠馬さんの空いたグラスにワインを注ぐ。
彼の視線が自分の横顔辺りに向けられていることに気づき、手元が狂いそうになる。

「悠馬さんはワイン結構飲むんだっけ?」

動揺を隠す為、在り来りの話題を彼に振る。

「うん、好きだよ……やっぱり似合ってる」

「あ、えっ⁉ これ?」

私が髪に付けたバレッタを指さすと、悠馬さんは視線を逸らさずに笑顔で頷いた。
ドキッとするくらい綺麗な澄んだ瞳で……

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