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第四章:未来へのラウンドアバウト

片桐さんから聞いた意外な話

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「私、カフェにはヘルプに行くぐらいで……」

片桐さんは僅かに首を横に振る。
どうやらヘルプに行った時のことではないらしい。

「以前、僕が昼休みに外出しようと食堂前の通路を通った時、13時のオープンを待っているお客様が列に並びながら、お話しなされてました。『ここのカフェ、座席もあまり多くないから土日だと並んで待つことが多いんだけど、エントランスにいるお姉さんが、いつも気遣って声をかけてくれるし、雨が降っていた時は傘も貸してくれたんだよって……だから並んでも嫌な気持ちにならないし、また来ようって思うんだ』って仰ってましたよ」

お客様の会話から聞こえてくるルミエールについての話題は『悠馬さんや片桐さんが如何に素敵か』とか『スイーツが絶品だ』とか、そういった内容ばかりだった。

「あの……お客様が私のことを話題になされているのを見かけたことがないんですけど……」

「ハハハ、それは……称賛する内容であっても、本人が目の前にいたら話題にしづらいでしょ? 」

(確かに……)

「とにかく……翠川さんはルミエールにとって絶対的な存在だってことです。誰かと比べて劣っているなんて考える必要はありませんよ…人には必ず得手不得手があります。僕は翠川さんみたいに、万人に明るく自然体で接することができませんし……きっと田村さんにも苦手なことはあると思いますよ」

片桐さんは私が自分に自信をなくしていることに気がついていたのだろう。
こんな私が片桐さんのような男性に異性として好意を持ってもらえないのは当然だ。

「……ありがとうございます。私、まだまだ駄目ですね。片桐さんに、こんな風に気を遣わせてしまうなんて……」

「また、そうやって謙遜する……海外で暮らしてみて分かったことがあります。日本人の謙虚さはいいところでもあり、悪いところでもあるということです。翠川さんもルミエールの顔として、もうちょっと胸を張って……こう、どしっと構えててくださいね!」

そう言うと片桐さんは大袈裟に胸を反らした。
彼がおどけてみせることなど滅多にないことで、私は思わず破顔した。




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