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第四章:未来へのラウンドアバウト
片桐さんとの残業後に
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「ごめんごめん、ところで悠馬君の具合はどうだった?」
叔母さんは、私が長谷川様の噂話に乗り気ではないことに気がついたようだ。
「本人は元気に振舞ってましたけど、まだ本調子ではなさそうです。明日も私がカフェにヘルプに入ったほうがいいかなと思うんですけど……どうしましょう?」
「そうね、日曜日だから、お客様が沢山来られるでしょうしね。環ちゃんにはヘルプに行ってもらって、私は今日と同じようにコンシェルジュ業務を担当するようにしましょう」
「オーナー、それと年末年始のお休みの件なんですが……」
私が話を切り出そうとしたら、叔母さんが慌てて言葉を遮った。
「あっ! 環ちゃん、本当にごめん!! 言い忘れてたわ。片桐さんと、悠馬君には伝えたんだけど、石川さんは30日から3日まで息子さんのお家に行かれるし、長谷川様は30日から4日まで帰省されるから、私達は4日に仕事始めね」
叔母さんは私に伝えるのをすっかり忘れていたらしく、拝むように両手を顔の前で合わせて頭を下げた。
「じゃあ、その間は完全にお休みですか?」
嬉しさで思わず声が上擦る。
「勿論、年末年始ぐらい、ゆっくり過ごさないとね」
「はい!」
『もう少し早く知らせてくれたら』と思いつつも、突然できた五日間の冬休みに私の胸は躍っていた。
◇
叔母さんと話しを終え、私はいつものように片桐さんと厨房で、翌日販売分のスイーツの準備をしていた。
「じゃあ、片付けは僕がやっておきますので、翠川さんは先にあがってください。」
「え、でも……」
「今日はホールの方が数倍大変だったはずです。明日もまたお手伝い頂くんですから……ね?」
片桐さんが心配そうに私の顔を覗きこむ。
「分かりました。では、すみませんがよろしくお願いします。片桐さんも、この後は、ゆっくりされてくださいね」
「はい、勿論です。お疲れ様でした」
片桐さんの言葉に私も笑顔で返しながら厨房を出ていき、食堂のドアを開けた。
すると、数時間前に部屋に戻られたはずの田村様が、食堂前の通路に一人で立っていた。
「あっ、翠川さん」
「どうも……」
私は彼女がお客様ということも忘れ、思わず不機嫌そうな声を出してしまう。
「片桐さんは、まだ厨房に?」
今日も彼女は、これから片桐さんと話しをするつもりなのだろうか。
御自分は外出してきたとはいえ、休暇中だからいいかもしれないけれど、片桐さんは、ついさっきまで仕事中だったのだ。
私は彼女のマイペースさに少し呆れていた。
「……ええ、今日も食堂でお話しされるんですか?」
私は敢えて刺々しい口調で訊く。
そんな私の態度を見て、彼女は少し怯んだように一歩後退る。
「彼が仕事後じゃないと、なかなか空いている時間もないし、食堂じゃないと他の方の目も気になるそうなので……」
私は悠馬さんを一度、自分の部屋に入れてしまったけど、片桐さんは仕事後のプライベートな時間とはいえ、第三者の目をきちんと考えて行動しているのだ。
「田村様、失礼ですが片桐は仕事で疲れていると思います。どうしてもこの時間から直接、お話ししなければならないことなんですか?」
「ご、ごめんなさい。そうですよね」
田村様は怒られた子供のように上目遣いで私の顔色を窺う。
そんな彼女の様子を見て、急に罪悪感が湧いてくる……
「も、申し訳ございません!」
私は田村様に向けて言い放ったことや自分の態度を恥ずかしく思った。
(もう少し言いようがあったはずなのに……)
膝に頭が触れそうなぐらいに頭を下げる。
すると田村様が優しく私の肩に触れて、
「翠川さん、どうか頭を上げてください」
と穏やかな声で言った。
叔母さんは、私が長谷川様の噂話に乗り気ではないことに気がついたようだ。
「本人は元気に振舞ってましたけど、まだ本調子ではなさそうです。明日も私がカフェにヘルプに入ったほうがいいかなと思うんですけど……どうしましょう?」
「そうね、日曜日だから、お客様が沢山来られるでしょうしね。環ちゃんにはヘルプに行ってもらって、私は今日と同じようにコンシェルジュ業務を担当するようにしましょう」
「オーナー、それと年末年始のお休みの件なんですが……」
私が話を切り出そうとしたら、叔母さんが慌てて言葉を遮った。
「あっ! 環ちゃん、本当にごめん!! 言い忘れてたわ。片桐さんと、悠馬君には伝えたんだけど、石川さんは30日から3日まで息子さんのお家に行かれるし、長谷川様は30日から4日まで帰省されるから、私達は4日に仕事始めね」
叔母さんは私に伝えるのをすっかり忘れていたらしく、拝むように両手を顔の前で合わせて頭を下げた。
「じゃあ、その間は完全にお休みですか?」
嬉しさで思わず声が上擦る。
「勿論、年末年始ぐらい、ゆっくり過ごさないとね」
「はい!」
『もう少し早く知らせてくれたら』と思いつつも、突然できた五日間の冬休みに私の胸は躍っていた。
◇
叔母さんと話しを終え、私はいつものように片桐さんと厨房で、翌日販売分のスイーツの準備をしていた。
「じゃあ、片付けは僕がやっておきますので、翠川さんは先にあがってください。」
「え、でも……」
「今日はホールの方が数倍大変だったはずです。明日もまたお手伝い頂くんですから……ね?」
片桐さんが心配そうに私の顔を覗きこむ。
「分かりました。では、すみませんがよろしくお願いします。片桐さんも、この後は、ゆっくりされてくださいね」
「はい、勿論です。お疲れ様でした」
片桐さんの言葉に私も笑顔で返しながら厨房を出ていき、食堂のドアを開けた。
すると、数時間前に部屋に戻られたはずの田村様が、食堂前の通路に一人で立っていた。
「あっ、翠川さん」
「どうも……」
私は彼女がお客様ということも忘れ、思わず不機嫌そうな声を出してしまう。
「片桐さんは、まだ厨房に?」
今日も彼女は、これから片桐さんと話しをするつもりなのだろうか。
御自分は外出してきたとはいえ、休暇中だからいいかもしれないけれど、片桐さんは、ついさっきまで仕事中だったのだ。
私は彼女のマイペースさに少し呆れていた。
「……ええ、今日も食堂でお話しされるんですか?」
私は敢えて刺々しい口調で訊く。
そんな私の態度を見て、彼女は少し怯んだように一歩後退る。
「彼が仕事後じゃないと、なかなか空いている時間もないし、食堂じゃないと他の方の目も気になるそうなので……」
私は悠馬さんを一度、自分の部屋に入れてしまったけど、片桐さんは仕事後のプライベートな時間とはいえ、第三者の目をきちんと考えて行動しているのだ。
「田村様、失礼ですが片桐は仕事で疲れていると思います。どうしてもこの時間から直接、お話ししなければならないことなんですか?」
「ご、ごめんなさい。そうですよね」
田村様は怒られた子供のように上目遣いで私の顔色を窺う。
そんな彼女の様子を見て、急に罪悪感が湧いてくる……
「も、申し訳ございません!」
私は田村様に向けて言い放ったことや自分の態度を恥ずかしく思った。
(もう少し言いようがあったはずなのに……)
膝に頭が触れそうなぐらいに頭を下げる。
すると田村様が優しく私の肩に触れて、
「翠川さん、どうか頭を上げてください」
と穏やかな声で言った。
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