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第二章 : 夜のしじまのカーテンコール
YU-MAさんと打ち解けて
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「人に注目されて嬉しいとか、会社に貢献できてるって言う達成感はあるんだけどさ。なんだか制約も多くて、息苦しく感じる事が多いんだ」
彼の意外な告白だった。
ルミエールでも、入居者の皆や私、片桐さんとも打ち解けるのが早く器用に立ち回っていて、物事を意のままにしている様に見える彼が……
「そうだったんですか。YU-MA(ユウマ)さん、ルミエールでは肩の力を抜いて過ごして頂けてますか」
「ハハ。実は、俺、髪の毛も写真アップする前は、めちゃくちゃコテで伸ばしてるし、薄くメイクもしてるんだ。服も普段はこんなにゆるい感じだしね~」
オーバーサイズの着心地の良さそうなリネンシャツをひらひらとさせ、
おどけて見せる。
もしかしたら普段のあの軽く見えるノリも……
私は彼を元気づけたくて言葉を探す。
「……どちらのYU-MA(ユウマ)さんも、私は素敵だと思います」
「そお? ありがとう」
彼はちょっと俯いて、素の表情を隠した様に見えた。
私がこんな時、もっと相応しい言葉が掛けられたらいいのに……
「……じゃあ、今度、環さんが時間がある時にルミエールの写真、二人で撮りまくろうよ」
「ありがとうございます。お仕事お忙しそうだから無理しないでくださいね」
「大丈夫、俺、意外と仕事以外は暇だからさ。友達も結構少ないしね」
苦笑いをして、部屋へ戻ろうと階段を登る彼の背中は悄然としていた。
「YU-MA(ユウマ)さん! おやすみなさい」
私は思わず声を掛ける。
「YU-MA(ユウマ)って呼んでくれて、ありがと」
階段上から、周りに迷惑にならないよう声を潜めて彼が言う。
……私、いつの間にかYU-MA(ユウマ)さんと呼んでいた!
途端に恥ずかしくなって頬が火照る……
私のそんな反応を見て、YU-MA(ユウマ)さんは投げキッスのジェスチャーをしながら部屋へと去っていった。
いつもなら『軽いノリ』と思うだけだけれど、今日の彼は何処か無理をしている様に見えて、私は、より不安を掻き立てられた。
――その週の土曜日。
今日は会社がお休みのYU-MA(ユウマ)さんが私の仕事の合間を見て、Photoupの極意について伝授してくれるという事になった。
写真はルミエールの外観からエントランス、入居者募集中の部屋の撮影、食堂、お料理等、至る所まで撮影してみようということになった。
一通り午前中のコンシェルジュ業務を終え、人通りのまだ少ない時間帯にルミエールの外観から撮影してみる。
「じゃあ、まずは環さん、好きなように撮ってみて」
私はスマートフォンを片手に建物の正面、左右と撮影してみる。
できあがった写真は片桐さんに教えて貰ったコツを頼りに、以前よりは大分まともに撮れていると思う。
YU-MA(ユウマ)さんが私の撮った写真を一枚、一枚チェックしてくれる。
「うん。悪くないと思うよ。流石、片桐さんに教えて貰っただけはあるね」
「えっ?! 」
「俺が気づかないとでも思った? 」
YU-MA(ユウマ)さんが『フフン』と勝ち誇ったようににやける。
……何で知ってるの?
私は頭の中で言い訳を必死に考える。
「あの、それは仕事の一環で……」
手の平に尋常ではない汗をかく。
気づかない内にスカートを力強く握っている事に気が付き、慌てて手を体の横でブンブンと振り誤魔化す。
「分かってるって。誰にも言わないから。いちいち可愛い反応すな!」
YU-MA(ユウマ)さんがお笑い芸人のような口調で私をからかう。
この前よりは元気になったみたいで、少し安心する。
私はコンビの相方の突っ込みの様に、彼のフワフワの生成り色のシャツの裾を引っ張る。
「イデデデっ」
彼は、不意の私の行動に驚きながらも大口を開けて笑い出す。
何時も画面越しの彼は、クールでアンニュイ、口元だけを少し持ち上げて笑う、神秘的な感じさえする男性だった。
でも、今ここに確かに存在する彼は、少しだけ癖っ毛の髪が風に揺れ、柔らかそうな素材のロングシャツがよく似合う自然体な男性だ。
「さぁ、じゃあ俺の本領発揮といきますか」
彼はパンツのポケットに入れていたミラーレスカメラを取り出し、いろいろなアングルで撮影し始めた。
彼の意外な告白だった。
ルミエールでも、入居者の皆や私、片桐さんとも打ち解けるのが早く器用に立ち回っていて、物事を意のままにしている様に見える彼が……
「そうだったんですか。YU-MA(ユウマ)さん、ルミエールでは肩の力を抜いて過ごして頂けてますか」
「ハハ。実は、俺、髪の毛も写真アップする前は、めちゃくちゃコテで伸ばしてるし、薄くメイクもしてるんだ。服も普段はこんなにゆるい感じだしね~」
オーバーサイズの着心地の良さそうなリネンシャツをひらひらとさせ、
おどけて見せる。
もしかしたら普段のあの軽く見えるノリも……
私は彼を元気づけたくて言葉を探す。
「……どちらのYU-MA(ユウマ)さんも、私は素敵だと思います」
「そお? ありがとう」
彼はちょっと俯いて、素の表情を隠した様に見えた。
私がこんな時、もっと相応しい言葉が掛けられたらいいのに……
「……じゃあ、今度、環さんが時間がある時にルミエールの写真、二人で撮りまくろうよ」
「ありがとうございます。お仕事お忙しそうだから無理しないでくださいね」
「大丈夫、俺、意外と仕事以外は暇だからさ。友達も結構少ないしね」
苦笑いをして、部屋へ戻ろうと階段を登る彼の背中は悄然としていた。
「YU-MA(ユウマ)さん! おやすみなさい」
私は思わず声を掛ける。
「YU-MA(ユウマ)って呼んでくれて、ありがと」
階段上から、周りに迷惑にならないよう声を潜めて彼が言う。
……私、いつの間にかYU-MA(ユウマ)さんと呼んでいた!
途端に恥ずかしくなって頬が火照る……
私のそんな反応を見て、YU-MA(ユウマ)さんは投げキッスのジェスチャーをしながら部屋へと去っていった。
いつもなら『軽いノリ』と思うだけだけれど、今日の彼は何処か無理をしている様に見えて、私は、より不安を掻き立てられた。
――その週の土曜日。
今日は会社がお休みのYU-MA(ユウマ)さんが私の仕事の合間を見て、Photoupの極意について伝授してくれるという事になった。
写真はルミエールの外観からエントランス、入居者募集中の部屋の撮影、食堂、お料理等、至る所まで撮影してみようということになった。
一通り午前中のコンシェルジュ業務を終え、人通りのまだ少ない時間帯にルミエールの外観から撮影してみる。
「じゃあ、まずは環さん、好きなように撮ってみて」
私はスマートフォンを片手に建物の正面、左右と撮影してみる。
できあがった写真は片桐さんに教えて貰ったコツを頼りに、以前よりは大分まともに撮れていると思う。
YU-MA(ユウマ)さんが私の撮った写真を一枚、一枚チェックしてくれる。
「うん。悪くないと思うよ。流石、片桐さんに教えて貰っただけはあるね」
「えっ?! 」
「俺が気づかないとでも思った? 」
YU-MA(ユウマ)さんが『フフン』と勝ち誇ったようににやける。
……何で知ってるの?
私は頭の中で言い訳を必死に考える。
「あの、それは仕事の一環で……」
手の平に尋常ではない汗をかく。
気づかない内にスカートを力強く握っている事に気が付き、慌てて手を体の横でブンブンと振り誤魔化す。
「分かってるって。誰にも言わないから。いちいち可愛い反応すな!」
YU-MA(ユウマ)さんがお笑い芸人のような口調で私をからかう。
この前よりは元気になったみたいで、少し安心する。
私はコンビの相方の突っ込みの様に、彼のフワフワの生成り色のシャツの裾を引っ張る。
「イデデデっ」
彼は、不意の私の行動に驚きながらも大口を開けて笑い出す。
何時も画面越しの彼は、クールでアンニュイ、口元だけを少し持ち上げて笑う、神秘的な感じさえする男性だった。
でも、今ここに確かに存在する彼は、少しだけ癖っ毛の髪が風に揺れ、柔らかそうな素材のロングシャツがよく似合う自然体な男性だ。
「さぁ、じゃあ俺の本領発揮といきますか」
彼はパンツのポケットに入れていたミラーレスカメラを取り出し、いろいろなアングルで撮影し始めた。
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