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第二章 : 夜のしじまのカーテンコール

本当のYU-MAさんて……

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それから数週間が過ぎ、YU-MA(ユウマ)さんはすっかり入居者の皆と打ち解けているようだった。
彼は『プレス』と言う職業柄、人と接するのは得意なのだろう。

SNSでの彼は、クールに見えたが実際は人懐っこい性格のようだ。

入居者の三名が全員帰宅し、夕食も済ませたようなので、私は一人コンシェルジュ・デスクで残りの事務作業をしていた。
こうして一人静かにデスクに向かう時間も、私は結構好きだ。
そう思えるのは、皆と過ごせる有難さも改めて知ったからなのだろう。
以前、片桐さんにお勧めされたカモミールティーを、ゆっくりと飲みながらパソコンに向かっていると……

「た・ま・き さ~ん」

小さい子が家に遊びの誘いに来たような響きで後ろから声を掛けられる。
振り向くと、YUーMA(ユウマ)さんだった。

「佐々木様、どうされました?」

「どうかしなきゃ、来ちゃだめなの?」

黒目がちな大きな瞳で、YUーMA(ユウマ)さんが私をじっと見つめている。
潤んだように見える瞳に少し動揺してしまい、思わず目を伏せてしまう。

「いえ、そんな事ないですけど……」

三歳しか年が違わないのに、弟のような雰囲気を漂わせるYUーMA(ユウマ)さんに、私はいつも狼狽えてしまう。

「あのさ、ルミエールのPhotoupフォトアップ、フォロー数、増えてる?」

残念ながらルミエールのフォロー数は、最初こそ少し伸びていたものの、私の単調な写真のせいで今は横ばい状態だった。

「残念ながら……」

「そうだよね。俺も何か手伝おっか?」

「えっ! いいんですか」

「うん。環さんや片桐さんにお世話になってるからね。Photostarフォトスターにできる、せめてもの気持ち」

時々、軽いノリが苦手と感じることもあるけど、やっぱりいい人なんだよね……

YUーMA(ユウマ)さんは、大手アパレルメーカーの広報、所謂『プレス』を担当しているそうだ。
彼の担当ブランドは黒と白を基調としていて、シンプルながら独自の前衛的なシルエットやデザインが人気だ。
YU-MA(ユウマ)さんがSNSの写真で身に付けている洋服や小物類は、問い合わせも多く、あっという間に完売してしまうらしい。

「環さん、俺のPhotoupフォトアップ見てくれたことある?」

「ええ、勿論。ルミエールにいらっしゃる前から存じ上げてました」

「ねー、その硬い口調、お願いだから止めてよ」

「は、はい。ごめんなさい。つい……」

「分かってくれてるなら、よろしい」

彼は少し幼く見える笑顔で、ふざけて仁王立ちしている。

YUーMA(ユウマ)さんと初めてルミエールで会った時、感じた違和感は、醸し出される雰囲気や髪型、服装等の違いだった。
彼はSNSでのクールな雰囲気に反し、ルミエールでは少しソフトなイメージ。
少し癖毛風のパーマがかかったような髪に、服装も画像で見かける物とは違うナチュラルなテイストの物も着ている事があった。

私は、そんなギャップに気づいてはいたものの、聞いて良いものか迷っていて、そのタイミングを逃していた。

「俺の写真から受ける印象ってどんな感じ?」

まるでこちらの思っている事が見透かされているような質問を問いかけられる。

「うーん。クールな人なのかなって」

「クールかぁ、やっぱり……」

『まただ』という感じで、YUーMA(ユウマ)さんが肩を落とす。
私は思い切って、YUーMA(ユウマ)さんに感じていた違和感について尋ねてみることにした。

「佐々木様、ルミエールでの雰囲気とPhotoupフォトアップでの雰囲気が少し違って見えるんですけど……」

彼が気を悪くしないよう話をしようとすると、上手く言葉を繋げられない。

「そっか。やっぱり気づいてたよね」

「……何となく」

「俺、アパレル会社に勤めてるからファッションに纏わる事、勿論大好きなんだけど……SNSやるようになってからさ、自由がなくなったって言うか……」

何時ものお調子者の彼は鳴りを潜め、神妙な面持ちで語り出した。


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