【R18】龍の谷に白木蓮

深山瀬怜

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十五・呪詛

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「無駄話をしているような余裕はないみたいね」

 龍神の顔を一目見るなり、焔が言った。焔も事態が急を要することは理解している。

「誰に影が取り憑いているかはわかった」
「そうか」
「予想はできていたんじゃないの?」

 龍神は「探るのは木蓮の周辺だけでいい」と言った。鬼の目的はもとより、影のこともある程度は知っているからこその言葉だろう。

「木蓮の血縁のものは既に亡くなっている。呪いの性質を考えると、ほとんど一人に絞られる」
「呪いの性質?」
「その者と強い繋がりを持っている者を使った方が成就しやすいのだ。――あの男は、緑波を……木蓮の母親のことをよく知っている。その上、邑長の血縁であるから霊力も強いであろう」
「それなら最初からそう言ってくれてもよかったんじゃない?」

 一人に絞って探った方が、影が取り憑いていることを早く確定させられただろう。しかし龍神は首を横に振った。

「あの影が吾の思う呪いだと確信が持てたのはつい先程のことなのだ。他の何かである可能性も捨てきれなかった」
「まあわざと隠していたわけでないならいいわ。でも――つい先程ということは」

 龍神は苦虫を噛み潰したような顔をしながら頷いた。

「木蓮は既に呪いに蝕まれておる。勿論浄化はしたが、それもそろそろ限界であろう。あと一度浄化できるかできないかというところだ」
「木蓮ちゃんを人間のままにしておくなら、ね」
「吾はあの者と契りを結ぶつもりも、眷属にするつもりもない」

 それは人としての道を奪う行為だ。それが手っ取り早い方法だとしても選ぶことはできない。焔は頑なな龍神を見て嘆息した。

「本人はどう思ってるのかしらね」
「好き好んで人の道を捨てる者はおらぬだろう」
「ここまで来たら、全部話して木蓮ちゃんに決めさせたらいいんじゃない?」
「……そうした方がいいだろうか」

 神の事情を知るということは、否応なく巻き込まれるということだ。しかし既に巻き込まれているこの状況を考えれば、話してしまってもいいかもしれないと龍神は考えていた。

「少なくとも大事なことを隠したまま、何かを決めさせるのは残酷ではない?」
「そうだな」
「とりあえず私にも色々教えてくれる? 呪いのこととか」

 龍神は素直に頷いた。龍神が軽く指を動かすと、足元の水から小さな球体が浮かび上がった。

「そもそも彼奴は封印されていて、大した力を振るうことはできない。それでも瘴気は漏れ出してしまうから、鬼をけしかけたりはできるが。あの影は封印の網をかろうじてくぐれるほどに小さなものだったはずだ」
「だから誰かに取り憑くしかない、と」
「左様。あの男に取り憑いた影は、男の霊力を使って成長して呪詛となったのだろう。そしてあの男に木蓮を呪わせる術式を作り上げた」

 おそらく呪っている自覚はないだろう。巧妙に呪いを別の行為にすり替えていると考えられる。焔は白銀の狐耳を動かしながら思案していた。敵の目論見を打ち破るには呪詛の術式を破壊するしかない。しかしそれは言うほど簡単なことではない。

「術者をどうにかするか、繋がりを断つかのどちらかよね。どちらにせよ普段は気付かれないように隠蔽されているみたいだから、動きがあるときに対応するしかないわね」
「油断はせぬようにな。呪詛は厄介だ」
「わかってるわよ。暫く隠れて木蓮ちゃんにつくようにするわ。その方が鬼が来たときも助けられるしね」
「――そうしてくれると助かる」

 龍神が作り出した球体は小さな花に姿を変え、瞬きの間に元の水に戻る。その様子を見ていた焔は笑みを浮かべた。

(私には自分のものにしたがっているように見えるのだけど、どうなのかしらね)

***

 箍が外れてしまったのか、もう欲望を抑えることができなくなっていた。目の前にいる女はまやかしに過ぎないとわかっていても尚、宿堤は女の細い腰を抱えるようにして、何度も楔を打ち込んでいた。

「っ、はぁ……緑波……ッ」
『あ……ぁ、あ……っ、宿堤様……!』

 緑波の締め付けに宿堤は呆気なく果て、その体の中に白濁を放つ。追い縋る媚肉の感触を味わいながらずるりと自らのものを抜くと、いまだに物欲しげな蜜壺から白いものがとろりと流れ出た。

「ああ……緑波……」

 華奢な身体を抱き締める。ずっとそうしたいと思っていた。けれどそれは許されないことだった。緑波はこの邑のために鬼と戦う巫で、宿堤は邑に残り、邑を守る最後の砦となる邑長の血縁の者だったからだ。しかしもうその宿命からは解き放たれた。
 幸福感と同時に、焼け付くような思いが溢れる。今はこうして緑波を抱き締めることができる。しかしかつて彼女は別の男と結ばれたのだ。緑波の夫であり、木蓮の父親でもある那久弥も緑波のこの姿を目にしたのだろうか。巫としての毛高き姿とは全く違う、悦びに浸り、乱れる姿を。

「緑波……」

 その怒りにも似た思いは、宿堤の体に再び活力をもたらした。緑波の身体を俯せにし、細い腰を両手で抱え上げる。白濁と愛液が混ざり合ったものが太腿を伝い落ちる様も露わなそこに己のものを宛がい、一気に奥まで貫いた。

「あぁっ……あ、んっ……ぁっ!」

 達したばかりの体は敏感になっていて、緑波の口からは切なげに甘い声が溢れる。それを聞くだけでまたも熱が中心に集まっていくのを感じた。

「緑波……っ、緑波……!」
『あっ、あぁっ……んっ、宿堤様……ぁっ!』

 宿堤は緑波の身体に覆いかぶさるようにして、腰を激しく打ち付ける。緑波の目から零れた涙が褥に落ちていった。

『あ……ぁあ……っ、も、もう……』
「俺もだ……!」

 限界を訴える声に更に抽挿を激しいものにすると、緑波が一際高く啼き、痙攣する媚肉が宿堤をきつく締め付けた。それに抗うように最奥まで何度も楔を打ち込んでから、宿堤は思いの丈をそこに放つ。

「はぁっ……はぁ……っ」

 宿堤は肩で息をしながら緑波を見下ろす。緑波は褥にだらりと身体を預け、陶酔したような目で宿堤を見つめていた。

『ふふ……宿堤様、もっと……もっとわたくしを愛してくださいませ』
「ああ――愛している、緑波」

 宿堤は緑波の身体の向きを変え、柔らかな唇に深く口付けた。僅かな隙間から舌を挿し入れると、蛇のように蠢く緑波のそれに絡め取られる。唾液を絡ませ、時折角度を変えながら口付けを続けると、再び宿堤の体の中心に熱が集まり始めた。

「嗚呼、緑波……なんと美しい……」

 その体に纏わりつく影は、既に宿堤の目には映っていなかった。白く柔らかな乳房を両手で掴む。衝動に突き動かされるまま、宿堤はそれを激しく揉みしだいた。

『あっ、あぁん……っ』

 緑波が艶を帯びた声で啼く。宿堤は堪らずその首筋に齧り付くように強く吸った。赤い華がそこに刻まれるのを見ながら、更に胸の先端を摘まみ上げると緑波の背が跳ねる。宿堤はその反応に気をよくして、ぷくりと立った胸の飾りを飴玉を舐めるように舌で転がし始めた。

『ふふ……そんなに私の胸は美味しいですか、宿堤様?』
「ああ……とても甘い……」

 夢中になってしゃぶっていると、緑波が甘い声を上げながら腰を揺らした。その白い太腿には、先程宿堤が放った欲望と、緑波の愛液が筋を作っている。宿堤は緑波の脚を開かせ、ひくつく秘裂を武骨なその指でなぞった。

『ああっ……! 宿堤様……っ、あ!』

 宿堤は蜜壺に指を入れ、中に放った白濁を掻き出すように動かす。先程まで宿堤の楔を咥え込んでいた場所は柔らかくほぐれ、二本の指を難なく飲み込んでいった。淫らな水音が暗闇に響く。宿堤は緑波の中を激しく掻き回しながら、その耳元で囁いた。

「こんなに溢れて……那久弥の前でもこんな風に乱れたのか?」
『いいえ、いいえ……私がお慕い申し上げていたのは宿堤様一人でございます』
「だが、あやつとの子を成しただろう」

 緑波は嬌声を上げながら首を横に振った。

『あれは那久弥様が私に強いたことなのです。私の心が宿堤様の元にあると悟り、私が逃れられないようにしただけなのです』
「それは誠か?」
『ええ、嘘ではありませ……っ、ああッ!』

 宿堤は緑波の秘部に舌を這わせた。溢れる蜜を音を立てて啜り、襞の一枚一枚を丁寧に舐める。緑波は頭を振って快感に悶えた。

『は、あ……っ! 宿堤様ぁ……っ』

 宿堤は指で緑波の陰核を摘み上げながら、溢れ出す甘露を貪った。腹立たしい。この邑の巫から力を奪った挙句、子を孕ませた男のことが憎い。那久弥よりも前から、宿堤は緑波を想っていた。だが邑のためにそれを表に出すことをしなかっただけだった。

『あっ、あ……あああっ!』

 舌の動きを激しくすると、緑波の腰が跳ねた。緑波は喘ぎながらも宿堤の頭に手を伸ばし、そっと笑みを浮かべる。

『宿堤様……今からでも遅くはありませんわ。私の中に、貴方の胤をたっぷり注いでくださいませ』
「緑波……」

 宿堤は顔を上げ、再び緑波の体に覆い被さった。先程まで舌で愛撫していた場所に、硬く聳り立ったものの先端を宛てがう。緑波の秘部はそれを求めて蠢いていた。

「緑波、緑波……っ!」

 宿堤は緑波に一気に楔を打ち込んだ。緑波の背が反らされ、白い喉元が目の前に晒される。宿堤はそこに顔を埋めながら激しく腰を打ち付けた。

『あっ! ああんッ……ああっ!』
「緑波……っ!」

 腰の動きに合わせて揺れる乳房を揉みしだき、存在を主張している乳首を口に含んで強く吸うと、緑波の中がきつく締まった。それを振り切るようにして更に抽挿を繰り返すと、緑波が何度も絶頂を迎えるのがわかる。その度に膣内がきつく締め付けてきた。

『あっ、あぁん……っ! 宿堤様ぁ……っ!』
「くっ……出すぞ……っ!」

 緑波の媚肉が一際強く締まった瞬間、宿堤はその最奥に勢いよく白濁を放った。同時に果てたのか、緑波が恍惚とした表情を浮かべる。その姿を見下ろしながら、宿堤は更なる征服欲に支配された。一度果てたものに影が絡みつくと、再びそれが頭をもたげ始める。硬度を取り戻したそれで再び抽挿を始めると、緑波の口から甘い吐息が漏れた。

『あっ、あぁ……っ! まだこんなに硬くして……』
「もっと、もっと……お前の中を、俺のもので満たしてやろう」

 緑波は期待に満ちた目で宿堤を見つめた。その視線に応えるように、宿堤は再び緑波の中に白濁を放つ。それでもなお足りないとばかりに腰を打ち付け続けると、緑波の肉壁はそれに応えるように絡み付いてきた。

『あ……ぁ……っ、宿堤様ぁ……っ』
「愛している、愛しているんだ……っ、緑波……!」

 宿堤は譫言のように呟きながら、何度も何度も緑波の中に欲望を放った。その度に緑波もまた絶頂を迎えたのか、蜜壺から愛液を溢れさせながら全身を痙攣させる。
 やがて絶頂の波が引いてきた頃を見計らい、宿堤は再び抽挿を始めた。一度放った白濁と緑波の愛液が混じり合い、二人の結合部分からはぐちゅぐちゅと卑猥な音が響いている。その音に興奮を煽られ、宿堤のものは更に硬度を増した。

『あぁ……っ! お慕い申し上げております、宿堤様……』
「俺もだ、緑波……」

 宿堤は何度も緑波に口付けながら、緑波が望むままにその身体を揺さぶった。その度に緑波が甘く啼き、宿堤の楔を締め付ける。やがて限界が訪れ、宿堤は緑波の中に熱い飛沫を放った。

『もっと、もっと私の中に注いでくださいませ……』

 欲望は底を尽きない。影がそれを手伝うように二人の体に絡みついていた。夜が明けるまで狂宴は続く。そしてそれは――宿堤の預かり知らぬところで、呪いへと姿を変えるのであった。
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