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30・王子と花園
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「ずいぶん好き勝手にやってくれたみたいだね。雛ちゃん、優香ちゃん」
目の前の光景を見て、怒りを覚えない人はいないだろう。自分の大切な人が他人にいいようにされていたのだ。しかし和紗は口調だけはあくまで冷静だった。元々あまり怒りを表明しない性質でもある。だがそれ以上に、雛と優香に対する申し訳なさもあった。
そもそも二人が巻き込まれたのは、和紗が雛に手を出したせいだ。和紗が自分自身を制御できなかったことがこの事態を招いたのだ。その後、憂花が二人に接触し、二人に何をしたのかはわからない。けれど二人が完全に快楽に溺れ、今のようになっていることはわかる。
「和紗先輩……」
和紗の気迫に押されたのか、雛と優香は手を取り合って後退る。和紗は出口にいる璃子と稔をちらりと見てから口を開いた。稔のことは璃子に任せておけばいいだろう。璃子はそれだけ信用に足る人物だ。ならば和紗が対峙すべきは目の前の二人である。
「お兄とするのは気持ちよかった?」
和紗が尋ねるが、二人は答えない。それでも快楽を感じていたのは間違いないだろう。ただ何を答えても和紗の怒りに触れると思っている。和紗は溜息交じりの笑みを零した。
「私は『責任は取る』って言ったつもりだったんだけど」
その言葉に偽りはない。雛が和紗の言葉を聞かずに感染を広げたとしても、責任を取るという言葉は無効にはならないのだ。
「それとも、私よりも憂花先生やお兄の方が良かった?」
自分が他人にどう思われているかは自覚している。普段はそれを気にせずに生きているが、いざという時はそれを武器にすることも厭わない。蜘蛛の巣で二人を絡め取るように、甘い毒を与え続ける。
「ねぇ、雛ちゃん?」
和紗は雛の顎を軽く掴み、その柔らかな唇を奪った。あのときと同じ甘い味がする。驚いている雛の少し開いた唇の間から舌を入れ、雛のものを軽く吸う。雛がその瞬間に内腿を軽く擦り合わせた。
「んんっ……ふぅ、ん、ぅ……っ」
雛の舌を捕らえ、唾液を混ぜ合わせるように刺激する。口内を蹂躙するようなキスを受け、雛の体からは徐々に力が抜けていった。
「ん……ぅ、ぷは……っ」
ようやく解放された雛の唇と和紗の間を銀の糸が繋ぐ。雛の目はただぼんやりと和紗を見つめていた。
「責任は取るって言ったよね? 憂花先生とかお兄より、ずっとずっと気持ちいいことをしてあげる。もちろん優香ちゃんも」
和紗は優香にも同じようにキスをする。和紗の甘やかな口づけに、雛も優香もすっかり酔ってしまっていた。二人がその先をせがむように和紗にしなだれかかる。和紗は二人に微笑みながらも、目は扉の方を見ていた。
「――クリスティーヌ」
動物をけしかけるのは反則かもしれない。けれど、それが最善だった。クリスティーヌは気位が高く、気に入らない人に対しては冷たい態度を取るが、よく躾けられてはいる。人に向かって走って行っても、無闇に怪我をさせたりはしないことを和紗は知っていた。隙を突ければそれでいい。合図で駆け出していくクリスティーヌとその行く末を見ながら、和紗は二人の少女の頭を軽く撫でた。
***
責任は取る、というのは、決してその場しのぎの言葉ではなかった。そもそも自分がこの事態を引き起こしたという自覚はある。それなら雛と優香を引き受けるべきは和紗なのだ。二人が他の人に向けないようにするための方法が一つだけある。和紗から目を逸らさせないことだ。
クリスティーヌを厩舎に戻した後、和紗は二人が待っている温室に足を踏み入れた。むせかえるような薔薇の薫りは相変わらずだ。けれどそれに混じって、別の甘い匂いもする。頭の芯をぼんやりとさせていくような香りだ。
薔薇の蔓が絡みつく西洋風四阿の長椅子に腰掛けていた二人は、上総の姿を認めると、寄り添うように抱き合いながら立ち上がった。
「和紗先輩……」
「ちゃんと待っていたんだ、いい子だね」
二人の全身にはピンク色に発光する模様が広がっている。優香はもう我慢できないとでも言うように内腿を擦り合わせていた。雛は優香を後ろから抱きしめるようにして長椅子に座らせる。二人と初めてこの温室で事に及んだときも、最初はこの姿勢だったと和紗は思いを馳せた。
あのときに感じた戸惑いや怒りが消えているわけではない。けれど引き受けると決めたのだ。
優香の服を脱がせ、形のいい胸の先に軽く口づける。優香はそれだけでびくりと体を震わせた。スカートの中に手を入れ、下着の上から触れてみると、そこが既に十分すぎるほどに湿り気を帯びているのがわかる。大事な場所を布越しになぞられた優香は甘いと息を漏らした。優香を後ろから抱きしめている雛は、和紗が触れていない方の胸に手を伸ばす。
「んん……ああ、っ、和紗、せんぱい……っ!」
「優香ちゃん、どうしてほしい?」
「っ、あ……そこ、を……直接、さわって……ほし……んぅっ」
和紗は優香に請われるままに下着をずらし、蜜をたたえる秘部を指でなぞった。くちゅりという水音が響く。和紗はひくついている優香の秘裂に中指をつぷりと挿入した。
「ん、ぁ、あああ……っ!」
優香の体が跳ねる。力が抜けた体が余韻で震えているのを見ながら和紗は微笑んだ。
「指挿れただけでイっちゃった? かわいいね、優香ちゃん」
「っ、ぁ、ああ……和紗先ぱ……ぁ」
雛も優香の胸を弄って快感を与え続けている。和紗は優香の中の指をそっと増やし、ゆっくりと蜜壺をかき混ぜた。決して強い刺激ではない。けれど尾を引くような甘い快楽に優香は包まれていた。
「んん……っ、ぁあ……きもちい……っ」
優香は体を震わせながら和紗に抱きつく。和紗は優香の中に埋めた指をゆっくりと動かし続けた。和紗の指が一点に触れた瞬間に優香の体が跳ねる。
「ん、ああ……っ、和紗先輩……イ、イく、ぁ、ああ……っ!」
再び絶頂した優香は、くたりと和紗に体を預けた。和紗が優香の中から指を抜くと、優香の体が震える。
「ん、ぁ……和紗先輩、も……」
優香はそのまま和紗の体に沿って手を動かす。服の上から胸に触れられただけで、和紗の体は鋭敏に反応した。それを見て雛が笑みを浮かべる。
「和紗先輩も、一緒に気持ちよくなりましょう?」
「いや、私は大丈……っ」
和紗の後ろに移動した雛が、和紗の耳を軽く食む。腰のあたりに熱を感じ、和紗は体の力が抜けていくのを感じた。優香がそんな和紗の服をそっと脱がしていく。恐ろしいまでの連携だ。
「私たち、気持ちよくなるのも好きだけど、誰かを気持ちよくするのも好きなんですよ」
雛は甘い声で囁きながら和紗の耳を舐め始めた。ぴちゃぴちゃと響く音に耳を犯される。抗えないほどの熱が体に溜まっていくのを和紗は感じていた。薬で抑えているとはいえ、和紗の体が常に発情しているような状態にあることに変わりはない。呼び起こされた熱が和紗の意識を溶かしていった。
「ん、……は、ぁ、う……んん……っ」
優香が和紗の下半身に手を伸ばす。陰唇に擦り付けられる指。熟した果実のように蜜をこぼすその場所に触れられ、和紗は甘い声を発していた。
「和紗先輩のここ、もうぐちゃぐちゃになってますね」
「う……っ、言わないで、そういうこと……」
「恥ずかしいんですか? でも、気持ちよくなることは悪いことじゃないんですよ」
優香が言う。雛は相変わらず和紗の耳を舐めながら、その手を和紗の形の良い胸に下ろしていった。頭の芯が痺れるような甘い刺激。雛は和紗の胸をひとしきり弄り、胸の先の飾りを口に含んだ。濡れた舌の感覚。まるで生き物が這っているようにそこを舐めあげられ、和紗は内腿をひくひくと震わせた。
「もうこんなに溢れてる……すごくおいしそう」
優香はそう言い、和紗の脚を開かせて股の間に顔を埋めた。隠しきれない、淫らで甘い匂いが優香の鼻腔をくすぐる。優香はそのまま溢れ出す蜜が零れてしまわないようにと、その場所を舐め始めた。
「ぁ……ゆうか、ちゃん……んん、っ、そこ……っ!」
「和紗先輩、私のことも気持ちよくしてください」
雛が和紗の胸に舌を這わせながら和紗の手を取って、自分の足の付け根に導いていく。優香に大事な場所を舐められ、雛に胸を弄ばれている和紗は、ぼんやりとした意識の中で、雛の中心に指を伸ばした。誘われるように指をそっと挿入する。熟し切った柔らかな果実の果肉を押し開きながら指は奥へと進んでいく。零れだした雛の蜜は和紗の腕を伝って、肘のあたりまで流れ着いた。
「ぁ、は……ぁ、っ、和紗先輩……っ♡」
「んん……あっ、あ……ッ」
温室の中には三人の淫らな声と音だけが響いていた。それぞれがそれぞれに快楽を与え合い、誰が何をしているのかもわからなくなっていく。
「ぁ……も、だめ……イっちゃ……んんっ、ああ……ッ!」
「和紗先輩、もっと……♡」
それぞれに絶頂を迎えても尚、三人は体を絡ませ合う。ずっと体がふわふわと浮いているような感覚に陥りながら、和紗は雛の口づけを受け入れた。唾液を混ぜ合わせながらも右手は優香の胸に触れている。ただ気持ちよくなるためだけの行為。けれどそこにあるほのかに暖かい何かにも和紗は気付いていた。
「いいよ、いっぱい気持ちよくなろう」
むせかえるような薔薇の香り。しかしそれでは隠しきれないほどの淫靡な匂いが漂っていた。手で、唇で、舌で、それぞれの体を慈しむ。三人の睦み合いは、やがて全員の体力が尽きるまで続いていった。
***
「ええと……それは、大丈夫なんだよな?」
雛と優香は和紗が責任を持って預かるという結論を聞いた稔は、真っ先にそう尋ねた。既に三人の間では話がついているらしい。二人は和紗以外の人間とは性行為をしない。これ以上感染を広げないためだ。しかし快楽に溺れ、和紗の言うことも聞かずに感染を広げたあげくに憂花の誘いに乗った二人のことを簡単に信用していいのか。稔の当然の疑問に和紗は軽く微笑みながら答えた。
「もう他の人のことなんて考えられないくらいとろとろにしてあげてるから大丈夫じゃない?」
「笑顔ですごいこと言うな……」
「少なくともお兄よりは私の方がいいみたいよ?」
「俺、ほとんど一方的にされてたような……」
雛と優香には監視もついているらしいし、和紗が言うのなら暫くは見守っているのがいいのかもしれない。稔はそう判断して、隣に座る璃子の意見も聞こうと右側を見た。しかし璃子は遠慮がちに和紗を見つめている。
「どうしたの? もしかして璃子ちゃんも私の方がいい?」
「いや、あの……そういうことではなくて、一番好きなのは稔なんだけど、でも」
「お兄じゃ出来ないこともあるしねぇ」
和紗の微笑は、紛れもなく王子様のそれだった。男ですら夢心地になってしまいそうな甘さがある。しかしそれで璃子まで虜になってしまっている現状は少し複雑でもあった。
「安心してよ。私も一番好きなのはお兄だけだから」
「それは私が安心できないかも」
何ともややこしい事態になりつつある。稔は苦笑しながら和紗と璃子のやりとりを見つめていた。互いに納得さえしていれば、端から見れば奇妙に見えるこの関係も問題ない。むしろこの関係にこそ幸福があるのだと思え
「それで、今日はどうする?」
和紗が伸びをしながら尋ねる。稔は暫く迷ってからそれに答えた。
「俺は映画が見たい気分。ずっと見たかった映画が今日から配信されてて」
「あ、私もそれ見たいかも。何年か前に見たいって言ってた映画だよね?」
璃子が言う。よく覚えているな、と稔は思った。数年前に見かけて、何気なく見に行きたいと璃子に言ったのだが、結局上映期間に間に合わずに見られなかったのだ。
「そう。主人公が馬の調教師で、馬いっぱい出てくるらしいから、和紗も好きじゃないかな?」
「そうなんだ。でもあんまり他の馬を褒めるとクリスティーヌに怒られちゃうからな」
王子様は、気位が高い馬にとっても王子様なのだろう。大変そうだなと思うが、和紗は何だかんだで楽しそうだ。稔はリモコンを操作して、目当ての映画の再生を始める。
三人でソファーに座って映画を見る。それだけのことが大きな幸せなのだと、今の稔は知っていた。当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなった世界で、稔は自分の両側の暖かさを噛み締めていた。
目の前の光景を見て、怒りを覚えない人はいないだろう。自分の大切な人が他人にいいようにされていたのだ。しかし和紗は口調だけはあくまで冷静だった。元々あまり怒りを表明しない性質でもある。だがそれ以上に、雛と優香に対する申し訳なさもあった。
そもそも二人が巻き込まれたのは、和紗が雛に手を出したせいだ。和紗が自分自身を制御できなかったことがこの事態を招いたのだ。その後、憂花が二人に接触し、二人に何をしたのかはわからない。けれど二人が完全に快楽に溺れ、今のようになっていることはわかる。
「和紗先輩……」
和紗の気迫に押されたのか、雛と優香は手を取り合って後退る。和紗は出口にいる璃子と稔をちらりと見てから口を開いた。稔のことは璃子に任せておけばいいだろう。璃子はそれだけ信用に足る人物だ。ならば和紗が対峙すべきは目の前の二人である。
「お兄とするのは気持ちよかった?」
和紗が尋ねるが、二人は答えない。それでも快楽を感じていたのは間違いないだろう。ただ何を答えても和紗の怒りに触れると思っている。和紗は溜息交じりの笑みを零した。
「私は『責任は取る』って言ったつもりだったんだけど」
その言葉に偽りはない。雛が和紗の言葉を聞かずに感染を広げたとしても、責任を取るという言葉は無効にはならないのだ。
「それとも、私よりも憂花先生やお兄の方が良かった?」
自分が他人にどう思われているかは自覚している。普段はそれを気にせずに生きているが、いざという時はそれを武器にすることも厭わない。蜘蛛の巣で二人を絡め取るように、甘い毒を与え続ける。
「ねぇ、雛ちゃん?」
和紗は雛の顎を軽く掴み、その柔らかな唇を奪った。あのときと同じ甘い味がする。驚いている雛の少し開いた唇の間から舌を入れ、雛のものを軽く吸う。雛がその瞬間に内腿を軽く擦り合わせた。
「んんっ……ふぅ、ん、ぅ……っ」
雛の舌を捕らえ、唾液を混ぜ合わせるように刺激する。口内を蹂躙するようなキスを受け、雛の体からは徐々に力が抜けていった。
「ん……ぅ、ぷは……っ」
ようやく解放された雛の唇と和紗の間を銀の糸が繋ぐ。雛の目はただぼんやりと和紗を見つめていた。
「責任は取るって言ったよね? 憂花先生とかお兄より、ずっとずっと気持ちいいことをしてあげる。もちろん優香ちゃんも」
和紗は優香にも同じようにキスをする。和紗の甘やかな口づけに、雛も優香もすっかり酔ってしまっていた。二人がその先をせがむように和紗にしなだれかかる。和紗は二人に微笑みながらも、目は扉の方を見ていた。
「――クリスティーヌ」
動物をけしかけるのは反則かもしれない。けれど、それが最善だった。クリスティーヌは気位が高く、気に入らない人に対しては冷たい態度を取るが、よく躾けられてはいる。人に向かって走って行っても、無闇に怪我をさせたりはしないことを和紗は知っていた。隙を突ければそれでいい。合図で駆け出していくクリスティーヌとその行く末を見ながら、和紗は二人の少女の頭を軽く撫でた。
***
責任は取る、というのは、決してその場しのぎの言葉ではなかった。そもそも自分がこの事態を引き起こしたという自覚はある。それなら雛と優香を引き受けるべきは和紗なのだ。二人が他の人に向けないようにするための方法が一つだけある。和紗から目を逸らさせないことだ。
クリスティーヌを厩舎に戻した後、和紗は二人が待っている温室に足を踏み入れた。むせかえるような薔薇の薫りは相変わらずだ。けれどそれに混じって、別の甘い匂いもする。頭の芯をぼんやりとさせていくような香りだ。
薔薇の蔓が絡みつく西洋風四阿の長椅子に腰掛けていた二人は、上総の姿を認めると、寄り添うように抱き合いながら立ち上がった。
「和紗先輩……」
「ちゃんと待っていたんだ、いい子だね」
二人の全身にはピンク色に発光する模様が広がっている。優香はもう我慢できないとでも言うように内腿を擦り合わせていた。雛は優香を後ろから抱きしめるようにして長椅子に座らせる。二人と初めてこの温室で事に及んだときも、最初はこの姿勢だったと和紗は思いを馳せた。
あのときに感じた戸惑いや怒りが消えているわけではない。けれど引き受けると決めたのだ。
優香の服を脱がせ、形のいい胸の先に軽く口づける。優香はそれだけでびくりと体を震わせた。スカートの中に手を入れ、下着の上から触れてみると、そこが既に十分すぎるほどに湿り気を帯びているのがわかる。大事な場所を布越しになぞられた優香は甘いと息を漏らした。優香を後ろから抱きしめている雛は、和紗が触れていない方の胸に手を伸ばす。
「んん……ああ、っ、和紗、せんぱい……っ!」
「優香ちゃん、どうしてほしい?」
「っ、あ……そこ、を……直接、さわって……ほし……んぅっ」
和紗は優香に請われるままに下着をずらし、蜜をたたえる秘部を指でなぞった。くちゅりという水音が響く。和紗はひくついている優香の秘裂に中指をつぷりと挿入した。
「ん、ぁ、あああ……っ!」
優香の体が跳ねる。力が抜けた体が余韻で震えているのを見ながら和紗は微笑んだ。
「指挿れただけでイっちゃった? かわいいね、優香ちゃん」
「っ、ぁ、ああ……和紗先ぱ……ぁ」
雛も優香の胸を弄って快感を与え続けている。和紗は優香の中の指をそっと増やし、ゆっくりと蜜壺をかき混ぜた。決して強い刺激ではない。けれど尾を引くような甘い快楽に優香は包まれていた。
「んん……っ、ぁあ……きもちい……っ」
優香は体を震わせながら和紗に抱きつく。和紗は優香の中に埋めた指をゆっくりと動かし続けた。和紗の指が一点に触れた瞬間に優香の体が跳ねる。
「ん、ああ……っ、和紗先輩……イ、イく、ぁ、ああ……っ!」
再び絶頂した優香は、くたりと和紗に体を預けた。和紗が優香の中から指を抜くと、優香の体が震える。
「ん、ぁ……和紗先輩、も……」
優香はそのまま和紗の体に沿って手を動かす。服の上から胸に触れられただけで、和紗の体は鋭敏に反応した。それを見て雛が笑みを浮かべる。
「和紗先輩も、一緒に気持ちよくなりましょう?」
「いや、私は大丈……っ」
和紗の後ろに移動した雛が、和紗の耳を軽く食む。腰のあたりに熱を感じ、和紗は体の力が抜けていくのを感じた。優香がそんな和紗の服をそっと脱がしていく。恐ろしいまでの連携だ。
「私たち、気持ちよくなるのも好きだけど、誰かを気持ちよくするのも好きなんですよ」
雛は甘い声で囁きながら和紗の耳を舐め始めた。ぴちゃぴちゃと響く音に耳を犯される。抗えないほどの熱が体に溜まっていくのを和紗は感じていた。薬で抑えているとはいえ、和紗の体が常に発情しているような状態にあることに変わりはない。呼び起こされた熱が和紗の意識を溶かしていった。
「ん、……は、ぁ、う……んん……っ」
優香が和紗の下半身に手を伸ばす。陰唇に擦り付けられる指。熟した果実のように蜜をこぼすその場所に触れられ、和紗は甘い声を発していた。
「和紗先輩のここ、もうぐちゃぐちゃになってますね」
「う……っ、言わないで、そういうこと……」
「恥ずかしいんですか? でも、気持ちよくなることは悪いことじゃないんですよ」
優香が言う。雛は相変わらず和紗の耳を舐めながら、その手を和紗の形の良い胸に下ろしていった。頭の芯が痺れるような甘い刺激。雛は和紗の胸をひとしきり弄り、胸の先の飾りを口に含んだ。濡れた舌の感覚。まるで生き物が這っているようにそこを舐めあげられ、和紗は内腿をひくひくと震わせた。
「もうこんなに溢れてる……すごくおいしそう」
優香はそう言い、和紗の脚を開かせて股の間に顔を埋めた。隠しきれない、淫らで甘い匂いが優香の鼻腔をくすぐる。優香はそのまま溢れ出す蜜が零れてしまわないようにと、その場所を舐め始めた。
「ぁ……ゆうか、ちゃん……んん、っ、そこ……っ!」
「和紗先輩、私のことも気持ちよくしてください」
雛が和紗の胸に舌を這わせながら和紗の手を取って、自分の足の付け根に導いていく。優香に大事な場所を舐められ、雛に胸を弄ばれている和紗は、ぼんやりとした意識の中で、雛の中心に指を伸ばした。誘われるように指をそっと挿入する。熟し切った柔らかな果実の果肉を押し開きながら指は奥へと進んでいく。零れだした雛の蜜は和紗の腕を伝って、肘のあたりまで流れ着いた。
「ぁ、は……ぁ、っ、和紗先輩……っ♡」
「んん……あっ、あ……ッ」
温室の中には三人の淫らな声と音だけが響いていた。それぞれがそれぞれに快楽を与え合い、誰が何をしているのかもわからなくなっていく。
「ぁ……も、だめ……イっちゃ……んんっ、ああ……ッ!」
「和紗先輩、もっと……♡」
それぞれに絶頂を迎えても尚、三人は体を絡ませ合う。ずっと体がふわふわと浮いているような感覚に陥りながら、和紗は雛の口づけを受け入れた。唾液を混ぜ合わせながらも右手は優香の胸に触れている。ただ気持ちよくなるためだけの行為。けれどそこにあるほのかに暖かい何かにも和紗は気付いていた。
「いいよ、いっぱい気持ちよくなろう」
むせかえるような薔薇の香り。しかしそれでは隠しきれないほどの淫靡な匂いが漂っていた。手で、唇で、舌で、それぞれの体を慈しむ。三人の睦み合いは、やがて全員の体力が尽きるまで続いていった。
***
「ええと……それは、大丈夫なんだよな?」
雛と優香は和紗が責任を持って預かるという結論を聞いた稔は、真っ先にそう尋ねた。既に三人の間では話がついているらしい。二人は和紗以外の人間とは性行為をしない。これ以上感染を広げないためだ。しかし快楽に溺れ、和紗の言うことも聞かずに感染を広げたあげくに憂花の誘いに乗った二人のことを簡単に信用していいのか。稔の当然の疑問に和紗は軽く微笑みながら答えた。
「もう他の人のことなんて考えられないくらいとろとろにしてあげてるから大丈夫じゃない?」
「笑顔ですごいこと言うな……」
「少なくともお兄よりは私の方がいいみたいよ?」
「俺、ほとんど一方的にされてたような……」
雛と優香には監視もついているらしいし、和紗が言うのなら暫くは見守っているのがいいのかもしれない。稔はそう判断して、隣に座る璃子の意見も聞こうと右側を見た。しかし璃子は遠慮がちに和紗を見つめている。
「どうしたの? もしかして璃子ちゃんも私の方がいい?」
「いや、あの……そういうことではなくて、一番好きなのは稔なんだけど、でも」
「お兄じゃ出来ないこともあるしねぇ」
和紗の微笑は、紛れもなく王子様のそれだった。男ですら夢心地になってしまいそうな甘さがある。しかしそれで璃子まで虜になってしまっている現状は少し複雑でもあった。
「安心してよ。私も一番好きなのはお兄だけだから」
「それは私が安心できないかも」
何ともややこしい事態になりつつある。稔は苦笑しながら和紗と璃子のやりとりを見つめていた。互いに納得さえしていれば、端から見れば奇妙に見えるこの関係も問題ない。むしろこの関係にこそ幸福があるのだと思え
「それで、今日はどうする?」
和紗が伸びをしながら尋ねる。稔は暫く迷ってからそれに答えた。
「俺は映画が見たい気分。ずっと見たかった映画が今日から配信されてて」
「あ、私もそれ見たいかも。何年か前に見たいって言ってた映画だよね?」
璃子が言う。よく覚えているな、と稔は思った。数年前に見かけて、何気なく見に行きたいと璃子に言ったのだが、結局上映期間に間に合わずに見られなかったのだ。
「そう。主人公が馬の調教師で、馬いっぱい出てくるらしいから、和紗も好きじゃないかな?」
「そうなんだ。でもあんまり他の馬を褒めるとクリスティーヌに怒られちゃうからな」
王子様は、気位が高い馬にとっても王子様なのだろう。大変そうだなと思うが、和紗は何だかんだで楽しそうだ。稔はリモコンを操作して、目当ての映画の再生を始める。
三人でソファーに座って映画を見る。それだけのことが大きな幸せなのだと、今の稔は知っていた。当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなった世界で、稔は自分の両側の暖かさを噛み締めていた。
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