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第18話 ダンジョン最下層の探索、巨神ギガントガイアス

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 ダンジョン最下層に陥れられて、何日が経っただろうか。

「ふぅ…………これこそまさしく、モンスターフェスティバルってやつだな」

『モンスターフェスティバル?』

「魔物が群れる祭りって意味、つまり、俺たちが今置かれている状況のことだよ」

 俺たちは今、大量の魔物に囲まれている。

 その数は軽く見ても数百はいる。

 この道の隅から隅まで埋め尽くす魔物の群れ、なぜこのような状況になったのか、それは数日前に巻き戻らなくてはいけない。


 ダンジョン最下層から外に出るため、扉の先へと足を踏み入れた僕たちは、今、食糧危機に陥っていた。

 扉の先に広がるはまたもやまっすぐ続く道だった。一つ違いがあるとすれば、ジャイアントブレインオーガーをよりも強い数々の魔物たち、平然と生息していることだ。

「ふぅ、だいぶレベルが上がったな」

『マスター、私を使って大丈夫?』

「ああ、今のところは大丈夫だ」

 前とは違い魔物に遭遇する以上、常に戦いが強いられる。そのため、どうしても、武器が必要だった。

 最初はアルスを使うことをためらったが、一度握ってみると、特に変化はなく、今では平然と扱っている。

 スキル傲慢の強制発動条件はこの黒剣を手に取ることだと思っていたが、どうやら違うようだ。

『マスター、また魔物ですっ!』

「あの、アルスさん」

『なんですか、マスター?』

「そのずっと疑問に思っていたんだけど、どうして武器になるとマスター呼びになるの?」

『私はマスターの武器ですから』

「受け答えになってない」

『マスター無駄口をたたいている暇はありません、きますっ!!』

「おっとっ!」

『『『がるるるるるるるるるるる』』』

 俊敏に襲い掛かってきたグレイプスウルフ。知性が高く学習する特性を持ち、長引けば長引くほど、苦戦を強いられる厄介な魔物だ。

 だが、僕には関係ない。

「グレイプスウルフはたしかに長引けば厄介だが、逆に短期決戦なら楽勝なんだよね」

 黒剣に黒雷を纏わせ、襲い掛かってくるところを思いっきり横に振り切った。

「学習の特性上、最初は普通の魔物より知性が低いんだよ、だから、馬鹿にみたいに最初は真正面から向かってくる。つまり、一発で倒せば問題にないってわけ」

『さすが、マスターっ!』

 しかし、ずっとこの道が続くとなると、これは長い探索になりそうだけど、僕たちは今、そんなことよりも危機的な状況に陥っている。

 食糧問題。

 ここずっと何も飲まず食わずの僕たちは、徐々に体力や集中力を失いつつあった。

 このままでは、いずれ、戦えなくなってしまう。

「せめて、水を探さないとな」

「ヒナタ、この先に違う道が続いているよ」

「え…………」

 アルスが見つけたのは一本道が続く中の分かれ道。

「どれどれ」

 分かれ道に近づいてみると、かすかな風と水滴の滴る音が聞こえてきた。

 まさか、この先に水があるんじゃないか?確信はできないけど、行く価値はあるかもしれない。

「よくやったぞ、アルス」

「えへへ」

 頭をやさしくなでた。

 僕たちは魔物と闘いながら分かれ道へと進んでいくと、少しずつ道に雑草が生い茂っていった。

 そして、道の先に広がったのは、大きな湖を中心としたオアシスのような場所だった。

「ダンジョン最下層にこんな場所が…………」

 僕は驚かずにはいられなかった。

 ダンジョン最下層だというのに、聞こえてくる動物の声に、燦々と輝く太陽のような何かが天井に浮かんでおり、そこはまるで人工大自然。

「ヒナタ、あの湖の水、飲めるよ」

「わかるのか?」

「鑑定を使って、水質を確認したの」

「鑑定スキルってそんなこともできるのか、すごいな」

 ますますスキル鑑定が欲しくなったけど、今は水だ。

「とりあえず…………水だぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あ、水だぁぁぁぁぁぁっ!」

 僕が湖に向かって走り出すと、アルスも僕の後ろについてように走り出し、そのまま二人で湖にダイブした。

「ぷはぁ!?気持ちいい…………」

 そういえば、水浴びもしていなかったな。

 気持ち良すぎて、プカプカと湖に浮かんだ。天井に浮かぶ太陽らしき何かの正体はわからないけど、日光浴しているみたいで気持ちいいな。

「ねぇねぇ、ヒナタ」

「どうした~~アルス」

「気持ちいいねぇ」

「ああ、気持ちいな」

 心も体も隅々まできれいさっぱり流されていくような感覚。

 生きててよかったと思いながら、僕はゆっくりと陸に上がった。

「ふぅ、気持ちよかった」

「気持ちよかった」

「さてと、まずは服を乾かさないとな、クリーン!」

 と言うときれいさっぱり服も乾いた。

 これぞ、初級魔法クリーン。

 服の乾燥など、清潔感を保つため魔法だ。魔力量浄書したおかげで使えるようになった。

「クリーン…………ふぅ」

 アルスも平然と魔法を使う。聞くところによると上級魔法まで普通に使えるらしい。見たことはない。

 よくよく周りを見渡すと、この場所はとても不自然なことに気づく。

 魚一匹も泳いでいたない大きな湖だ。

 ダンジョン内には絶対安全区域が存在するが、ここがそこであると断定はできない。

「アルス、しばらく、この周りを探索するから」

「わかった」

 と言ってアルスは武器に姿を変える。

「よし、行くか」

『マスター、いつでも戦えますっ!』

「あ、うん」

 アルスは武器になると少し好戦的になる。まるで、戦いを求める戦士かのように。

 僕としても、魔物を倒せば倒すほどレベルが上がるし、いいんだけど。

『マスター、周りに魔物の気配はないよ』

「そうだな」

 アルスは魔力探知というスキルがある。そのおかげで、魔物を見つければ、すぐに知らせてくれる。

 僕もスキル魔力探知がほしいけど、スキルは基本、欲しくて手に入るものではない。

 その人の強い思いと意思、そしてイメージが世界の呼び声にこたえ、スキルを与える。

 だからこそ、スキルを最初のころから多く持っていることはとても優位に立てる。

 僕が最弱勇者とあだ名をつけられたのも、この考えが浸透していたからでもある。

「一周したな」

 スタート地点の壁際に印をつけ、一周したが、特に魔物はいなかった。

 この地域に自然発生した動物などは見かけたが、体内に魔物の心臓である魔石がなかったことから、魔物ではなかった。

 すると、ドスンドスンっと地面を大きく揺らすほどの足とが響き渡る。

「な、なんだっ!?」

『マスターっ!近くで魔力を探知したよっ!』

「わかっている」

 僕はすぐに黒剣を構えた。

 この場所は見た感じ小さな洞窟内といった感じだった。違和感があったのはやけに高い天井ぐらいだ。

 でも、もし天井が高いことに意味があるなら、それほどの高さが必要な魔物が生息しているということだ。

「おいおい、マジかよ…………」

 さっきまで燦々と輝いていた太陽のような光が大きな影にさえぎられた。

 僕はゆっくりと顔を見上げると、大きな瞳を輝かせる巨人がこちら見つめていた。

「ぎ、ギガントガイアス…………」

 ギガントガイアスは全長6メートルほどある一つ目の魔物だ。主に熱帯地域に生息していて、ダンジョン内で生息しているはずがない、

「アルス…………全力で逃げろっ!!」

 僕たちは、全速力で逃げた。
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