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第7話 召喚されし勇者日向、かつて存在した魔女たち

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 訓練が始まって1週間、気づけば僕は大図書館にいる時間が多くなっていた。

 と言っても、そうなるのも当然、単純にステータスの差が顕著けんちょに現れたからだ。

 おそらくだが、今のみんなは元の世界にいた時よりも身体能力が向上している。

 持久走なんか、みんな余裕で100周しても汗もかかずに走りきる中、僕だけは7周で走れなくなるほど、体力が消耗する。

 しかし、大図書館で得られるものはものすごく多かった。言語理解のスキルのおかげで、どんな文字でも読むことができ、そこから得られる知識は唯一無二、自分の知識として得られている。

 まず、この世界には7っ大陸、7つの国が存在している。

 僕たちがいるルクスニア王国は西に存在するサルモネ大陸に位置しており、大陸ごとに一つの国が築いている、不思議な世界だ。

 だが、七つの国といっても、国として認められているのが七つだけであって民族が住処を築いていたりと、国に近しい集団はたくさん存在している。実際にサルモネ大陸にはたくさんの民族が存在し、ルクスニア王国が治めている領土はサルモネ大陸のたった四割程度だと記載されている。

 こんな感じでいろいろ読み漁っていると、面白い文献を僕は見つける。

 それは、勇者と魔王がまだ存在していなかった時代。いわゆる古代の時代、この世界には7人の魔女が存在していたらしい。

 文献は少ないけど、7人の魔女は自由気ままに自由に生きていたらしい。そして、魔女が世界からいなくなった後、突然、勇者と魔王の歴史が始まる。

「奇妙だ…………」

 勇者と魔王が存在してから歴史はこまなく記載されているのに、その前の歴史がすごく曖昧。それこそ、7人の魔女というワード以外、すごくぼんやりとした印象を受ける。

 とはいえ、それ以降の歴史は細かく書かれている。

 7人の勇者が魔王に立ち向かい、無事に魔王討伐に成功、世界に平和が訪れた。そんな文脈がいくつも見つかる。これを見て分かったのが、魔王は周期ごとに復活し、その度に勇者が召喚されているということだ。

 そして、僕たちが丁度、7回目に召喚された勇者ってことになる。

 そう考えると、案外この世界の歴史まだ始まって浅いのかもしれない。

 まだまだたくさんあるがこれを1か月で読み切り知識にすることはほぼ不可能だろう。

「でも、やりごたえはあるな」

 勉強するのは嫌いじゃないし、知らないことを知ることはとても刺激的だ。なにより、本を読んでいて楽しいし、自分の力になっていることを実感できている。

 僕はメイドさんに呼ばれるまで本を読み漁った。


 訓練が始まって2週間が経過し、みんな慣れたようにスキルを扱えるようになっていた。

 御剣くんは片手剣を主武器に訓練をはじめ、西郷くんは拳による近接戦の訓練、朱宮さんは東洋の武器である刀を使った巧みな剣術の訓練、そして、西宮さんは…………。

「…………ファイヤーっ!!」

 魔法の訓練を始めていた。

 西宮さんのスキルを見るに圧倒的に回復面のサポーターに優れているが、西宮さんが魔法を習いたいという意志で、ジェルマンさんの指導を積極的に受けている。

「なかなかセンスがいいですね。この調子なら、訓練期間中に中級魔法まで習得できそうです」

「本当ですか!?」

「はい、私はうそを言いません」

 魔法には初級魔法、中級魔法、上級魔法、超越魔法、古代魔法の5っに分けられ、超越魔法は歴史に名を残すほどの魔法使いとして称えられ、上級魔法まで使えれば、一流の魔法使いとして認められ、中級魔法なら二流の魔法使いと認められる。

 初級魔法は一般家庭でよく使われる魔法で、生活魔法とも呼ばれている。

 古代魔法というのははるか昔に存在した魔法で、存在自体はあいまいな扱いをされていて、事実上、5っに分類されるが、一般人の常識的には4っという考え方が普通だ。

「この調子なら、訓練期間が終わりごろには大体、読み終わりそうだ」

 再び、本の世界へと踏み入れると、首筋にぞわっとした感覚が走り、とっさに後ろを振り返った。

「ひやぁ!?な、なに?」

 するとキンキンに冷えた水を持った西宮さんがいじわるそうに微笑んでいた。

「今日も読むことに集中して、私は心配だよ」

「どうして、西宮さん…………」

「こら、西宮さんじゃなくて、結奈でしょ」

「ゆ、結奈さん?」

「まぁ、うん、よろしい。はい水」

「あ、ありがとう」

 手に持っていた水を僕の渡して、自然な仕草で隣に座った。

「それで、どうしてこんなところに?訓練はどうしたんですか?」

「今は休憩中だよ。それで、日向君の様子を見に来たの…………ダメ、だったかな?」

「あ、いや、全然だめじゃないけど」

 でも、どうして、わざわざ僕の様子を見に来たんだろう。

「日向くん、何を読んでるの?」

「魔法の歴史が書かれている本だよ」

「魔法の歴史?」

「うん、魔法の起原、魔法がどのように発展していったのか、とかいろいろ書かれてて、まぁ面白いよ」

「へぇ、私もそれ読んだら、魔法うまくなれるかな?」

「どうだろう、魔法の扱い方とか書いてあるわけじゃないから…………」

 こういう本はあくまで過去から今までの魔法の経歴を記してあるだけだから、魔法を扱う上では必要ない知識かもしれない。

「そういえば、最近、訓練のほうに参加してないけど、何かあったの?」

「あ~~~~」

 そういえば、みんなにはまだ伝えてなかったっけ、僕だけ訓練内容が違うこと。でも、別にわざわざ伝えることでもないし、ここは普通に。

「何かあったわけじゃないよ。ただ僕はみんなに比べて弱いから、だから、知識をつけて少しでもみんなの役に立とうとかなって」

「それで、こんなにたくさんの辞書ぐらい分厚い本を読んでるの?」

「うん、でも意外と面白いよ」

「す、すごいね」

 相当驚いたのか、結奈さんはびっくりした表情を見せた。

「あっ、そろそろ時間だ。じゃあまたね」

「あ、うん」

 僕と目線を合わせながら微笑み、手を振って訓練に戻る結奈さんに僕も手を振り返した。
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