上 下
2 / 40

第2話 召喚されし勇者たちの覚悟

しおりを挟む
 驚きと歓喜の声に満ちた広い部屋で、僕たちは尻もちをつきながら、愕然としていた。そんな中、玉座らしい大きな椅子に座る一人の男が目に入る。

「どうやら、召喚は成功したようだな、ゼニス」

「はい、お父様、これでやっと魔王討伐に乗り出せます」

 豪華に装飾された椅子に座る王のような身なりした男と可憐なドレスを身に纏う幼さ女の子が笑みを浮かべた。

「ここは一体?」

「おいおい、なんだよこれ、さっきまで教室にいただろうが」

「落ち着きなさいよ、貴弘」

「…………ここは」

 何が起こったのか、分かっていない理解できないのは当然だ。そんな中、玉座に座る男が口を開く。

「混乱しているだろうが、落ち着いて聞いてほしい、勇者たちよ」

 渋く重くこの部屋全体に響き渡る声に、僕たちは自然と注目し、口を閉ざした。

 勇者と魔王というワード。僕は何となく予想がついた。

 やっぱり、これはよくある…………あれだわ。

「私は、ルクスニア王国の王、カーセル・ルクスニア。今この世界は魔王の手によって人類滅亡の危機に陥っている。どうか、人類を救うため魔王を討伐してほしい」

 玉座に座る男は願うように僕たちを勇者と呼び、深く頭を下げながら助けを求めた。

 そこで、最初にしゃべりだしたのが、御剣くんだった。

「あ、あの、イマイチ話の意図がわからないのですが…………」

「そうだろう。勇者の皆様はまだ召喚されたばかり。何も知らずわからないのは当然。…………ゼニスよ、勇者の皆様に詳しい説明を」

「はい、お父様が言った通り、この世界は今、魔王の手によって人類滅亡の危機に陥っているのです。そこで、私たちは勇者召喚の議を執り行い、こうして5人の勇者様をお呼びしました。そして、私たちが願うのはただ一つ、魔王の討伐。どうか、勇者様、人類の平和のために、魔王を討伐してくださいっ!」

 そのゼニス王女が涙を流しながら心に訴えかけてくる言葉に御剣くんは頷いた。

 何をゼニス王女から感じ取ったのか、ゆっくりと顔を上げる。

「…………あの一つ質問してもいいですか?」

「なんでしょう」

「俺たちは、元の世界に帰ることができるんですか?」

 いい質問だと思う。

 魔王を討伐しても、元の世界に帰れないのでは意味がないからだ。

「そこはご心配ございません。魔王討伐に成功すれば、女神さまの奇跡により、元の世界へご帰還できます。実際に、先代の勇者様も魔王討伐後、もとの世界にご帰還しております」

「なるほどなら…………」

 御剣くんはゆっくりと僕たちのほうに振り向き、決心したかのような男らしい表情を浮かべた。

「俺は、困っている人たちを見過ごせない。そして、人類を苦しめている魔王を討伐できるのは勇者として選ばれた俺たちだけだ。だから俺は勇者として、戦うよ。勇者として、魔王を討伐して見せるっ!…………みんなはどうする?」

 勇者として戦うと魔王を討伐すると言い切った御剣煉。その覚悟は軽くないことを雰囲気で感じ取れる。その雰囲気にまた一人の男が轟々とした声を上げる。

「煉が戦うなら、俺も戦うしかねぇなっ!それに、困ってるなら助けるのが、礼儀だろ?」

「貴弘っ!?」

「まったく、二人共、変なところで男らしい所見せちゃって、しょうがないな」

「彩音もっ!!」

「私も戦う。困っている人たちを見捨てられないし、それにみんなで戦ったほうが、心強いよね」

「結奈!?みん…………」

 御剣くんが驚きながら、何かを口にしようとしたとき、結奈が言葉を重ねた。

「日向くんも、そう思うよね?」

 西宮さんの言葉の矛先は突如、角度を急激に曲げて、僕のほうに向いた。しかも、御剣くんの言葉をさえぎりながら、割と大きな声で。

「あ、そうだね、うん」

「みなさんの覚悟、感謝いたします。それでは勇者様たちには、訓練場に出向いたもらいます。そこで、勇者の皆様に必要な知識をわが国、随一の優秀な魔法使いがご指導します。騎士の皆さん、勇者の皆様を案内しなさい」

「「はっ!!」」

 騎士二人は声を上げた後、ゆっくり近づき。

「では、勇者の皆様、訓練場まで案内いたしますので、後ろについてきてください」

「わかりました」

 僕たちは騎士を先頭に訓練場に案内された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

処理中です...