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 私が協力を約束したことで、色々な事が動いた。

 まず父に、正式に協力要請が行った。

 父は渋い顔をしていたけれど、私の意志が硬いと分かると、仕方なく許してくれた。

 元々、エルレンドの女は守られるだけの女として育てられない。

 護身術の他にも色々と、母から仕込まれている。

 その母が味方してくれた。

 父自身、むかし母に命を救われた時一目ぼれして、口説き落とした過去がある。

 母がよく惚気ているので、耳にタコができるほど聞かされた惚気話が、ここにきて役に立った。

「エミリーはランス様の役に立ちたいのよね?」

 その通りだから反論できない。

 もし相手がエミール様だったとしたら、申し訳ないけれど、お役には立てなかったかもしれない。

 エミール様、ごめんなさい。決してエミール様じゃダメ、という訳ではないの。

 ただランス様のお役に立ちたかっただけで。

 と、私がぐるぐる考え始めると、母が背中を叩きながら笑った。

「シンプルに考えなさい。ランス様と狩りをして女狐を捕まえる。簡単でしょ」

「はい!」

 さすがお母様。強い。





 父を巻き込む事で、予定が一つ変わった。

 学園に、私がランス様と婚約した、という噂を蒔いた。

 エミール様いわく、あの女の食いつきが変わった、との事だ。

 私はサマーパーティまでは学園を休み、ランス様のエスコートでサマーパーティに出席する。

 エマもエミール様のエスコートで出席するとのことなので心強い。

 ミリアも出席すると言ったのだけれど、彼女のご両親が許さなかった。

 ミリアもリヒテル伯爵家のご令嬢。当たり前の事だ。

 ところが。

 フェンス様がリヒテル家を訪ねていって、それがひっくり返った。

 ミリアはフェンス様の婚約者として、サマーパーティに参加する事になった。

 これにはエミール様達も驚いた。

 フェンス様はあくまで後方支援。サマーパーティに参加する予定はなかったのだから。

「正気か、お前!」

「どうせ守るなら、近くにいた方がやりやすいしな。それに、俺がいれば国の方も本気を出しやすいだろ」

 両肩を掴んでがくがく揺さぶるエミール様に、フェンス様は不敵な笑いを浮かべてそういった。

 絶句するエミール様から逃れたフェンス様は、ランス様に「貸し一つな」と告げたとか。

 フェンス様の参加に伴い、魔法兵団団長だけでなく、騎士団長も中隊を引きつれて参加することになった。

 人手不足が解消されて、エミール様は複雑そうな顔になった。



 これで準備万端、と私達は学園のサマーパーティに参加した。





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