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夏色のRock It GAL(ロケットガール)♪ ドジっ娘チートで大出世!?
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……
シア・フレイアスターはフランス領ポリネシアのプカルア島戦災孤児院で育った。
彼女は物心ついた頃には両親はおらず、特権者戦争の作戦行動中に失踪したと聞かされた。
窓の外を綿菓子がちぎれ飛んでいる。まったく雲をつかむような話だった。
十二歳の夏休み、本の虫だった彼女にとつぜん、奨学金の話が来た。
海王星のエリート士官養成コースに選抜されたという。
天然のドジっ子で、運動音痴。
島の子ども達が得意な水泳の補習を受けるほど、おとなしい少女には無縁の代物だった。
「何かの間違いかも知れない」
孤児院の寮母さんが通知書を片手に息せき切ってビーチに現れるやいなや、泳いでいたシアの手を女性兵士がつかんだ。
彼女はくしゃくしゃに濡れの髪のまま、浜辺に急降下してきた輸送機におしこめられ、バスタオルを与えられる間にみるみる地球が小さくなっていった。
シャワーも着替えの下着も積んでない居住性の悪さにさんざん文句をたれつつ、「渡された新品の制服のブラウスがぬれたビキニのブラに張り付いて気持ち悪いだの」、「スカートのジッパーが半分しかあがらない」だの大暴れする彼女の前に一枚の紙片が差し出された。
「ほぇ? 何なんですか?」
ミミズが這ったような汚い手書き文字で封筒にあて名書きしてある。
『 きうφちβ方御<゛ん イ本馬舎入隊?マジ人隊!(たいけんにゅうたい まじにゅうたい)
毎王星空箪土管字校
ゐなたもカコっいい姜少女パイ口ッ卜♪(あなたもかっこいいびしょうじょぱいろっと)
奨字金プLゼント・キャソペ~ン様』
身に覚えはない。こんな悪戯をする人物は決まっている。意地悪そうなクラスメイトの顔が思い浮かんだ。
シアを迎えに来た空軍士官学校の教官は、身長百七十センチの長身でスレンダーな美人だった。
アクロバットチームの制服でもあるミニスカートのスーツをばっちりと着こなしていた。
「うああ、カコイイ~。 それにアクロバットチームって賢い人ばっかりなんでしょう?」
シアは、なんか「尊敬~~?!」って感じで紅潮した。
筋肉も脂肪もバランスよく付いていながら、無駄な贅肉がない。彼女たちの姿にはファッションモデルが逆立ちしても真似できない、媚びないクールなカッコよさがあった。
「どうかしら? 英雄だったご両親の後をついでみない?」
シアの目線は教官の口元に釘付けになった。赤いルージュが誘っている。
「うああ、なんかドキドキしてきたよぉ~。わたしみたいな鈍感でも勤まるのかなぁ~~」
パイロットの卵がこぼした不安のつぶやきを教官は聞き逃さなかった。
ひょい、とシアを目線の高さまで抱え上げ、「ちゅっ☆」と額にキスしてくれた。
「大丈夫。古代の海軍が実践してたという、セーシンチューニュー法よ♪」←
※訂正しよう! 日本海軍において「しごき」に使われた硬い樫の木で出来た太い棒のこと。 精神注入棒が正解である。
かああ、彼女の体が熱くなる。不安も胸の内でうずまいてる。教官が頭をなでてくれる。目を細めるシア。
同時に、育った島を離れる心細さもある。
しかし、彼女に選択の余地はなかった。教官の
「とにかく、あなたは前に進むしかないの。聖神チュニューのおまじないを信じて!」(←だから違うって)
シアはうなづいた。
「わたし、おとうさん、おかあさんのところへ近づくの!」
ぶわっと青い高機動バーニャの輝きがふたまわり大きくなり、輸送機はまばゆい尾を引いて星空へ吸い込まれていった。
■ フーガの宴会場
腐肉を奪い合うハゲタカよりも甲高い声が席巻している。
会場の中央に設えた巨大スクリーンすら人垣で見えず、城の外に銀幕が張られ、群がる観客相手に出店まで立ち並ぶほどの盛況となった。
「これはひどい転機」
スカートの中が丸見えになるほど笑い転げるナインテール。
「あの蚯蚓文字、超ウケたでしょ? ゲームはこれからよ」
図に乗ったリアノンが、猫なで声でシアにささやきかける。
■ 輸送機内
「魂の波動をおなじくする者よ」
座席でこくりこくりと舟を漕いでいたシアに呼びかける人がいる。
「ほえ?」
彼女は上体を起こした。
だが、そうせずともあたりを見回せた。
「……ということは、機体が大きく傾いてるのよね」
気づいた時、操縦席のほうがパステルカラーの虹につつまれた。
「え~っ、なになに? なんでこんな姿に?」
「どうなってんの?」
「うわあっ、これが私かっ?!」
「スティックが握れませ~ん」
かわいい悲鳴が機内に轟き、窓が割れて、大きな羽虫のような物がたくさん吸いだされていった。
みんな何処へ行っちゃったんだろう。機内にぽつねんと立ち尽くす彼女を呼ぶ声がする。
「魂の波動をおなじくする者よ」
にぶい衝撃が張り手のように彼女を襲う。宙に舞い、ボールのように体が弾む。
薄れる意識の中、彼女はかろうじてパイロットシートにしがみついた。
緊急バックアップシステムが働き、破損した窓が修復され、与圧が再開される。
「魂の波動をおなじくする者よ。 貴方の出世を阻むライバルはすべてゲット……いけね(汗)……いや、始末しました」
「ほえ?」
きょとんとするシアに謎の声は悪魔のごとく囁いた。
「欠員補充がままならず、貴女は金の卵のようにもてはやされるでしょう。さて、私は次なる実りを育まねばなりません」
「この船に乗ってた候補生はみんな異世界へ召喚されちゃったってこと? で、卒業までずっとわたしのターンということ?」
「そうですよ。さぁ、めくるめく出世街道へ! 誘われなさい。わが声ならざる声の導かんままに」
「これってチートなのかなぁ?」
きょとんとする暇はなかった。一気に修羅場な現実がシアの視界に雪崩込む。
けばけばしいブザー音が断続し、真っ赤な非常灯が機内を染める―などというアニメ臭い演出はこのご時世にはない。
かわりに麗らかなバイオリンの調べが必死に和ませようしている。
「さすが、高度百キロから上は女子の天下っていうわけね。自動音声一つ取っても芝居がかってる」
落ち着きを取り戻したシアはコンソールパネルの警告内容を読んだ。
ところどころに意味不明の文節が挟まっているが、とにかく「緊急システムは指示に従え」と言いたいのだろう。
シアは忠実に手順を踏んだ。
フーガの実験台を操っていたリアノンは「芝居がかっている」とシアに言われてヒヤリとした。
気づかれてしまったのだろうか。
いや、生身の男が二次元の嫁と決して交わることが出来ないように、シアとリアノンは没交渉なはずだ。
「魂の波動をおなじくする者よ。めっ!(憤) 私は芝居などでなくれっきとした……まぁ、いいわ。つべこべ言わず聞きなさい」
まごついているシアに悪魔の声はアドバイスする。
「まずは、VFR、"ビジュアル・フライトルール"のスイッチを……」
言われたスイッチがなかなか見つからない。
シアは苛立たしげにコンソールを叩いた。
「ありました」
「そう。"インスツルメンタル・フライトシステム"。そう、IFSに切り替えましょう」
導かれるままに、無我夢中で自動操縦のスイッチをオンにしたた。
「有視界飛行から計器飛行に移行。 自動着陸モードで航行中」
正面モニターに蛍光文字が瞬き、めちゃくちゃに動き回っていた窓の景色がピタリと一定の角度で止まった。
海王星の浮遊都市。ドームを満たす青い海原が見えてきた。
もう、空軍士官学校の玄関先だった。
滑走路に優雅に着陸する機体。消火班も救急車も、すでに彼女の活躍が伝わっていたため引き返した後だった。
待ち構える記者団。タラップの降り口で、無数の太陽が次々と瞬き、鴎の泣き声に似た機械音が彼女を包んだ。
よせては返す波のような喝采が乾いたコンクリートに潮風を運んだ。
「夏色の妖精、墜落寸前の輸送機を立て直す。リゾート気分でお手のモノ!」
ニュースサイトにでかでかと見出しが躍る。
シアは思わず奪い取ったタブレットを見てニンマリした。
「髪がほつれて、ミニスカートずれてるし、ダサダサの写真だけど、カッコいいね。わたし」
気分が高揚するにつれ黙読する速度もあがる。
「『ラフにタンキニを着こなし……』って、へぇ、これってそういう名前の服なんだ。『女子の制服に採用との意見も……』 へぇぇ、すごいじゃない。わたしを中心にまわってるよー。これが世界に影響を及ぼす、えっと、戦闘純文学?」
シアは盆踊りのやぐら状態と化したタラップから降りるに降りられない。
「ほんとうは、わたしって目立ちたがり屋さんなのよ! ひきこもりじゃない。わたしの中にはおかあさんの血が生きてるんだ!」
シアは未だ見ぬ母に向かって宣言した。
「
わたしひとりのために特別訓練コースが組まれ、わたしひとりのために特別機が開発されるって書いてある。わたし、がんばる」
「魂の波動をおなじくする者さん。ありがとう。ずっとお友達でいてね!」
抱擁すべき対象が見当たらず、しかたなしにシアは輸送機にすり寄った。
水槽に張り付くコバンザメのごとく、幼女の顔が水晶球にクローズアップされる。
「!」
リアノンは思わずドンびく。
「ど、どういたしまして。私は復讐、やべぇ(汗)……えっと、福の神です。時が満ちるまで、ずっとあなたのお側に」
「ずっと一緒だよ!」
シアは輸送機のキャノピーに体を思いっきり擦り付けた。
その姿は大勢の幼女愛好家のカメラに収まった。写真の売却益で傾いた生活を立て直した者も後を絶たなかったという。
■ 狂乱の宴
「草不可避!」
「どこの軍隊がパンチラ満開の制服を採用するよ」
「ロリババアのすりすりキモイ」
「大草原必須」
他人を見下すことを至上の喜びとする悪趣味な奥様勢が、妖精に弄り倒されたシアの人生を笑い飛ばす。
フーガもナインテールもすっかり出来上がっているが、リアノンはまだ不満げだ。
「寝ないで! みなさん、お楽しみはこれからでしょう。そりゃ! 最大出力『魂の波動をおなじくする者よ』!!」
彼女は憎悪を全身にみなぎらせた。水晶球に邪念が注ぎ込まれる。
シア・フレイアスターはフランス領ポリネシアのプカルア島戦災孤児院で育った。
彼女は物心ついた頃には両親はおらず、特権者戦争の作戦行動中に失踪したと聞かされた。
窓の外を綿菓子がちぎれ飛んでいる。まったく雲をつかむような話だった。
十二歳の夏休み、本の虫だった彼女にとつぜん、奨学金の話が来た。
海王星のエリート士官養成コースに選抜されたという。
天然のドジっ子で、運動音痴。
島の子ども達が得意な水泳の補習を受けるほど、おとなしい少女には無縁の代物だった。
「何かの間違いかも知れない」
孤児院の寮母さんが通知書を片手に息せき切ってビーチに現れるやいなや、泳いでいたシアの手を女性兵士がつかんだ。
彼女はくしゃくしゃに濡れの髪のまま、浜辺に急降下してきた輸送機におしこめられ、バスタオルを与えられる間にみるみる地球が小さくなっていった。
シャワーも着替えの下着も積んでない居住性の悪さにさんざん文句をたれつつ、「渡された新品の制服のブラウスがぬれたビキニのブラに張り付いて気持ち悪いだの」、「スカートのジッパーが半分しかあがらない」だの大暴れする彼女の前に一枚の紙片が差し出された。
「ほぇ? 何なんですか?」
ミミズが這ったような汚い手書き文字で封筒にあて名書きしてある。
『 きうφちβ方御<゛ん イ本馬舎入隊?マジ人隊!(たいけんにゅうたい まじにゅうたい)
毎王星空箪土管字校
ゐなたもカコっいい姜少女パイ口ッ卜♪(あなたもかっこいいびしょうじょぱいろっと)
奨字金プLゼント・キャソペ~ン様』
身に覚えはない。こんな悪戯をする人物は決まっている。意地悪そうなクラスメイトの顔が思い浮かんだ。
シアを迎えに来た空軍士官学校の教官は、身長百七十センチの長身でスレンダーな美人だった。
アクロバットチームの制服でもあるミニスカートのスーツをばっちりと着こなしていた。
「うああ、カコイイ~。 それにアクロバットチームって賢い人ばっかりなんでしょう?」
シアは、なんか「尊敬~~?!」って感じで紅潮した。
筋肉も脂肪もバランスよく付いていながら、無駄な贅肉がない。彼女たちの姿にはファッションモデルが逆立ちしても真似できない、媚びないクールなカッコよさがあった。
「どうかしら? 英雄だったご両親の後をついでみない?」
シアの目線は教官の口元に釘付けになった。赤いルージュが誘っている。
「うああ、なんかドキドキしてきたよぉ~。わたしみたいな鈍感でも勤まるのかなぁ~~」
パイロットの卵がこぼした不安のつぶやきを教官は聞き逃さなかった。
ひょい、とシアを目線の高さまで抱え上げ、「ちゅっ☆」と額にキスしてくれた。
「大丈夫。古代の海軍が実践してたという、セーシンチューニュー法よ♪」←
※訂正しよう! 日本海軍において「しごき」に使われた硬い樫の木で出来た太い棒のこと。 精神注入棒が正解である。
かああ、彼女の体が熱くなる。不安も胸の内でうずまいてる。教官が頭をなでてくれる。目を細めるシア。
同時に、育った島を離れる心細さもある。
しかし、彼女に選択の余地はなかった。教官の
「とにかく、あなたは前に進むしかないの。聖神チュニューのおまじないを信じて!」(←だから違うって)
シアはうなづいた。
「わたし、おとうさん、おかあさんのところへ近づくの!」
ぶわっと青い高機動バーニャの輝きがふたまわり大きくなり、輸送機はまばゆい尾を引いて星空へ吸い込まれていった。
■ フーガの宴会場
腐肉を奪い合うハゲタカよりも甲高い声が席巻している。
会場の中央に設えた巨大スクリーンすら人垣で見えず、城の外に銀幕が張られ、群がる観客相手に出店まで立ち並ぶほどの盛況となった。
「これはひどい転機」
スカートの中が丸見えになるほど笑い転げるナインテール。
「あの蚯蚓文字、超ウケたでしょ? ゲームはこれからよ」
図に乗ったリアノンが、猫なで声でシアにささやきかける。
■ 輸送機内
「魂の波動をおなじくする者よ」
座席でこくりこくりと舟を漕いでいたシアに呼びかける人がいる。
「ほえ?」
彼女は上体を起こした。
だが、そうせずともあたりを見回せた。
「……ということは、機体が大きく傾いてるのよね」
気づいた時、操縦席のほうがパステルカラーの虹につつまれた。
「え~っ、なになに? なんでこんな姿に?」
「どうなってんの?」
「うわあっ、これが私かっ?!」
「スティックが握れませ~ん」
かわいい悲鳴が機内に轟き、窓が割れて、大きな羽虫のような物がたくさん吸いだされていった。
みんな何処へ行っちゃったんだろう。機内にぽつねんと立ち尽くす彼女を呼ぶ声がする。
「魂の波動をおなじくする者よ」
にぶい衝撃が張り手のように彼女を襲う。宙に舞い、ボールのように体が弾む。
薄れる意識の中、彼女はかろうじてパイロットシートにしがみついた。
緊急バックアップシステムが働き、破損した窓が修復され、与圧が再開される。
「魂の波動をおなじくする者よ。 貴方の出世を阻むライバルはすべてゲット……いけね(汗)……いや、始末しました」
「ほえ?」
きょとんとするシアに謎の声は悪魔のごとく囁いた。
「欠員補充がままならず、貴女は金の卵のようにもてはやされるでしょう。さて、私は次なる実りを育まねばなりません」
「この船に乗ってた候補生はみんな異世界へ召喚されちゃったってこと? で、卒業までずっとわたしのターンということ?」
「そうですよ。さぁ、めくるめく出世街道へ! 誘われなさい。わが声ならざる声の導かんままに」
「これってチートなのかなぁ?」
きょとんとする暇はなかった。一気に修羅場な現実がシアの視界に雪崩込む。
けばけばしいブザー音が断続し、真っ赤な非常灯が機内を染める―などというアニメ臭い演出はこのご時世にはない。
かわりに麗らかなバイオリンの調べが必死に和ませようしている。
「さすが、高度百キロから上は女子の天下っていうわけね。自動音声一つ取っても芝居がかってる」
落ち着きを取り戻したシアはコンソールパネルの警告内容を読んだ。
ところどころに意味不明の文節が挟まっているが、とにかく「緊急システムは指示に従え」と言いたいのだろう。
シアは忠実に手順を踏んだ。
フーガの実験台を操っていたリアノンは「芝居がかっている」とシアに言われてヒヤリとした。
気づかれてしまったのだろうか。
いや、生身の男が二次元の嫁と決して交わることが出来ないように、シアとリアノンは没交渉なはずだ。
「魂の波動をおなじくする者よ。めっ!(憤) 私は芝居などでなくれっきとした……まぁ、いいわ。つべこべ言わず聞きなさい」
まごついているシアに悪魔の声はアドバイスする。
「まずは、VFR、"ビジュアル・フライトルール"のスイッチを……」
言われたスイッチがなかなか見つからない。
シアは苛立たしげにコンソールを叩いた。
「ありました」
「そう。"インスツルメンタル・フライトシステム"。そう、IFSに切り替えましょう」
導かれるままに、無我夢中で自動操縦のスイッチをオンにしたた。
「有視界飛行から計器飛行に移行。 自動着陸モードで航行中」
正面モニターに蛍光文字が瞬き、めちゃくちゃに動き回っていた窓の景色がピタリと一定の角度で止まった。
海王星の浮遊都市。ドームを満たす青い海原が見えてきた。
もう、空軍士官学校の玄関先だった。
滑走路に優雅に着陸する機体。消火班も救急車も、すでに彼女の活躍が伝わっていたため引き返した後だった。
待ち構える記者団。タラップの降り口で、無数の太陽が次々と瞬き、鴎の泣き声に似た機械音が彼女を包んだ。
よせては返す波のような喝采が乾いたコンクリートに潮風を運んだ。
「夏色の妖精、墜落寸前の輸送機を立て直す。リゾート気分でお手のモノ!」
ニュースサイトにでかでかと見出しが躍る。
シアは思わず奪い取ったタブレットを見てニンマリした。
「髪がほつれて、ミニスカートずれてるし、ダサダサの写真だけど、カッコいいね。わたし」
気分が高揚するにつれ黙読する速度もあがる。
「『ラフにタンキニを着こなし……』って、へぇ、これってそういう名前の服なんだ。『女子の制服に採用との意見も……』 へぇぇ、すごいじゃない。わたしを中心にまわってるよー。これが世界に影響を及ぼす、えっと、戦闘純文学?」
シアは盆踊りのやぐら状態と化したタラップから降りるに降りられない。
「ほんとうは、わたしって目立ちたがり屋さんなのよ! ひきこもりじゃない。わたしの中にはおかあさんの血が生きてるんだ!」
シアは未だ見ぬ母に向かって宣言した。
「
わたしひとりのために特別訓練コースが組まれ、わたしひとりのために特別機が開発されるって書いてある。わたし、がんばる」
「魂の波動をおなじくする者さん。ありがとう。ずっとお友達でいてね!」
抱擁すべき対象が見当たらず、しかたなしにシアは輸送機にすり寄った。
水槽に張り付くコバンザメのごとく、幼女の顔が水晶球にクローズアップされる。
「!」
リアノンは思わずドンびく。
「ど、どういたしまして。私は復讐、やべぇ(汗)……えっと、福の神です。時が満ちるまで、ずっとあなたのお側に」
「ずっと一緒だよ!」
シアは輸送機のキャノピーに体を思いっきり擦り付けた。
その姿は大勢の幼女愛好家のカメラに収まった。写真の売却益で傾いた生活を立て直した者も後を絶たなかったという。
■ 狂乱の宴
「草不可避!」
「どこの軍隊がパンチラ満開の制服を採用するよ」
「ロリババアのすりすりキモイ」
「大草原必須」
他人を見下すことを至上の喜びとする悪趣味な奥様勢が、妖精に弄り倒されたシアの人生を笑い飛ばす。
フーガもナインテールもすっかり出来上がっているが、リアノンはまだ不満げだ。
「寝ないで! みなさん、お楽しみはこれからでしょう。そりゃ! 最大出力『魂の波動をおなじくする者よ』!!」
彼女は憎悪を全身にみなぎらせた。水晶球に邪念が注ぎ込まれる。
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