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笑みを浮かべながら言葉を続けた

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沙世子はそう返事をすると、トレイを持って立ち上がった 沙世子は食堂を出て廊下を歩き、階段を上って二階にある自室に入った そこは四畳半の部屋で、机とベッドがあるだけの簡素な部屋だった 沙世子は部屋の電気をつけると、窓を開けて外を眺めた 沙世子は窓を開けたまま、壁に背中をつけて床に座ると、窓の外を見つめた そこには一面の青空が広がっていた 沙世子はその光景をじっと見続けた どれくらいの時が経ったのか分からないが、沙世子は不意に窓を閉めて立ち上がり、クローゼットを開けて中にあった白いブラウスを取り出した 沙世子はそれを着て、黒いスカートを穿くと、黒タイツをはいて靴下をはいた 次に鏡の前に立つと、髪を整えた 最後に、カバンを持って、扉を開けて外に出て鍵をかけた そのまま沙世子はゆっくりと歩いていき、玄関の鍵を開けると、外へ出た 沙世子は、一歩踏み出した瞬間に感じる空気の違いに気づいた それは、刑務所に入る前に感じていたものと同じものだった 沙世子はそのことを実感しながら、刑務所に向かって歩みを進めた 刑務所に到着した沙世子は、入口で入所の際にもらったカードキーを使って中に入り、エレベーターで5階へと上がっていった そして、5階にたどり着くと、看守に挨拶して、奉仕活動をする場所へと向かった その場所は図書室だった 沙世子は本棚の整理や貸し出し業務などを行い、あっという間に時間は過ぎた
「今日はもういいわよ。
お疲れ様」と声をかけられたので、「はい」と答えると、沙世子は荷物をまとめて、その場を後にした 沙世子が奉仕活動を終えると、ちょうど夕食の時間になっていた 沙世子は厨房に向かい、先輩に今日の献立を聞いた後、厨房の中に入って料理の手伝いを始めた 料理が完成すると、それをトレーに乗せて運んで行った 沙世子はテーブルに料理を置いて、席に着いた そして、一人寂しく料理を食べていると、突然誰かが話しかけてきた
「あなたって、いつも一人でご飯食べてるの?」と聞かれて、沙世子は「えぇ」と答えた すると、その人は沙世子の隣に腰掛けて、料理を口にし始めた 沙世子はそんな様子を横目で見ながら料理を食べることに集中しようとした ところが、その人は沙世子の方に体を寄せてきて、「ねぇ、私も一緒に食べていいかしら」と言ってきたのだ 沙世子は戸惑いながらも「はい」と答えると、その人は嬉しそうな顔をして沙世子の方を見た 沙世子はそんな様子を見ながら、再び箸を動かした 食事が終わると、沙世子は食器を下げに行った そして、洗おうとしたところ、隣にいた人に止められてしまった
「私がやるから、あなたは休んでなさい」と言われたので、沙世子は素直に従うことにした 沙世子は椅子に座りながら、隣の人の様子を眺めていた すると、その人は洗い物をしながら、「あなたって、かわいいわよね」と言ってきて、沙世子はどう反応したらよいのか分からず、ただ黙ってその様子を見ているだけだった すると、そんな沙世子の態度が気に入ったらしく、その人は「ふふっ」と笑うと、さらに言葉を続けた
「私はね、あなたのことが好きなのよ」と 沙世子はそんなことを急に言われて、頭が混乱してしまった 沙世子はとりあえず「ありがとうございます」と言うと、その人も「いえ、こちらこそありがとう」と言って、笑った 沙世子はそんな表情を見て安心すると、立ち上がって部屋に戻ることにした その人は「またね」と言って沙世子を見送った 沙世子は部屋に戻ると、ベッドに寝転がった そして、天井を見ながら、先程のことを考えた
「あの人の笑顔って、本当にきれいだった」
沙世子はそう呟くと、起き上がった
「そういえば、明日は玲子さんの面会に行くんだったわね」
沙世子はそう言うと、ベッドから降りて着替え始めた しばらくして、沙世子は身支度を整えると、カバンを持って部屋を出た 廊下を歩いていると、後ろから「沙世子さん」と呼ばれて振り返ると、先輩が立っていた
「あら、おはようございます。
これからお出かけですか?」と聞かれて、沙世子は「はい」と答えた
「そう、気をつけてね」と言われて、沙世子は「行ってきます」と返事をすると、玄関に向かった 沙世子は玄関で靴を履くと、カバンを肩にかけて外へ出た すると、そこにはすでに迎えの車が停まっていた 沙世子は車に乗り込むと、「よろしくお願いします」と言って頭を下げた 運転手は「はい」と答えて車を発進させた しばらく走っていると、沙世子は「あれ?」と思った いつもなら、車は刑務所の駐車場に停まるはずなのに、なぜか今日は病院の前を通ったのだ 沙世子は不思議に思いながらも特に気にせず窓の外を見ていた すると、前方に大きな建物が見えてきた その建物は白を基調とした造りになっており、周りには木々が植えられていて、まるで森の中にいるかのような錯覚を覚えるほどだった 沙世子は「あぁ、ここが玲子さんがいる病院なんだ」と思って再び窓の外を眺めた やがて、車は病院のロータリーに停車して、沙世子はカバンを持って降りた すると、そこには先程まではいなかったはずの人がいて、沙世子は思わず驚いてしまった
「沙世子さん、待ってました」と声をかけられたので、沙世子は「えっと、あなたは確か」と言いかけて、思い出した
「そうか、サンダーソニアさんだったわね」と沙世子が答えると、サンダーソニアは「覚えてくれていたんですね」と喜んだ 沙世子は「もちろんよ」と答えながら、改めてサンダーソニアの姿をまじまじと見つめた 沙世子は、そんなサンダーソニアを上から下まで見て、それから「でも、どうしてここにいるの?まさか、面会に来たわけじゃないでしょう」と聞いた
「えぇ、実は沙世子さんにお話があって来たのよ」とサンダーソニアが答えたので、沙世子は首を傾げた すると、サンダーソニアは「今日は、ここでお別れしましょ」と言った ので、ますます沙世子の疑問が深まった
「どういうこと?」と聞くと、「私はね、この国の文化に興味があるのよ」と返ってきたので、沙世子はさらに混乱してしまった
「だからね、私は沙世子さんの国の言葉を覚えようと思ってるのよ」と続けて言ったのを聞いて、ようやく沙世子は理解した
「つまり、あなたはこの国に観光目的で来ているということかしら」と確認すると、サンダーソニアは「その通りよ」と答えた 沙世子はその言葉を聞くと、少し考え込んだ後、口を開いた
「それなら、私よりもっと適任の人がいるんじゃないかしら」と沙世子が言うと、サンダーソニアは「うーん」と考え込んでから、「そうね」と答えた そして、沙世子の方を向いて、微笑みを浮かべながら言葉を続けた
「あなたがいいのよ」と 沙世子は「なぜ?」と聞き返した すると、サンダーソニアは「だって、あなたは私の国の言葉を勉強したいのでしょう」と聞かれて、沙世子は「まぁ、そうだけど」と答えた すると、サンダーソニアは「だったら、あなたしかいないわ」と言って、沙世子の手を握った 沙世子は突然手を握られて、戸惑っていると、サンダーソニアは「大丈夫よ」と言って、沙世子の耳元で囁いた
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