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世界の南端にほど近い町で

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 世界の南端には遠く、かといって世界の真ん中とも呼べない、そんな土地に小さな町があった。生まれたばかりの物語が練られ、〈演目〉へ成長する様を楽しみたい観客たちが住まう町だ。
 町に立ち並ぶ家はどれも白い壁で、屋根は個性を競うように派手な色ばかりだ。ずらりと並ぶ派手な色の屋根の一つから、真っ昼間だというのに艶事の気配が立ち上っている。その一角は新婚に宛がわれる区画で、昼間から睦み合っているのは、ザシャとゲルデという夫婦だった。
 ベッドでは夫のザシャが横たわり、妻のゲルデがその上に跨がって腰を振っている。だがゲルデには余裕がなく、腰を下ろすたびに白いのどを見せ、腰を上げられなくなっている。ザシャはふかふかのベッドに横たわったまま、自分の肉棒を飲み込み悶えるゲルデの痴態を楽しんでいた。

「んっ、あっ、あ、はう、ううっ……」
「ゲルデ、ペースが落ちてるよ」

 軽く腰を突き上げると、ゲルデは甘ったるい声を上げ「だってぇ」と腰をくねらせた。ゲルデが上下運動をせずとも、締め付ける膣の動きだけで十分に気持ちよさは感じられた。だが、ザシャはあえて意地悪を言ってゲルデに腰を上げさせた。

「ゲルデが言い出したんだろう? 今日は僕をイかせるんじゃなかった? ほら、頑張って」
「んっ、んんっ……」

 ゲルデが腰を上げ、膣に飲み込まれた肉棒がぬるる、と姿を現す。愛液に濡れた肉棒が抜けるぎりぎりまで腰を上げると、ゲルデはゆっくり腰を下ろし、また飲み込んでいった。奥へ進むにつれ膣襞がザシャの肉棒を歓待し、離れがたいそうに膣肉が締め上げる。亀頭の先がこん、と行き止まりに到着すると、ゲルデは涙をぽろぽろ落として首を振った。

「も、お、もおむりっ。私が先に、イっちゃうっ……」
「開発した甲斐があるなぁ」

 そう言って笑ったザシャは、ゲルデの腰を掴んだ。ゲルデの腰を浮かせ、自分の腰を突き上げる。肌を打つ音が響いても構わず、何度も同じところを穿ち、ゲルデを絶頂へ押し上げる。ゲルデは嬌声を上げ、身を捩り、腰をくねらせ悦んだ。

「ああっ! ザシャ、ざしゃ、あ、あっ、ザシャあっ」
「ゲルデが、僕の上になるのは……まだまだ、無理かな」
「ぜっ、たいっ、ぜったい、むりぃっ」

 飲み込んだ肉棒を離すまいとぎゅうぎゅう締め付け、雁首で襞をこすられるたびに首を振って喜びながら、ゲルデは「むり」と繰り返した。

「ザシャにっ、こんなっ、ああんっ! おち、おちんちんでっ、んんんっ。おく、ぐりぐりされたらあっ。うっ、あ、あんっ。とけちゃうっ、かんがえられなくっ、な、っちゃうっ。ザシャにっ、イかせて、もらうことしか……考え、られないよぉ」

 ザシャの肉棒に子宮口付近を抉られ、ゲルデは「あっ」と高い声を上げて腰を突き出した。喘ぎ悦ぶ台詞に、ザシャの肉棒がますます怒張する。「可愛いなぁ」と呟き、一番奥へ亀頭を当てたまま、ザシャは半身を起こした。ゲルデと繋がったまま、向かい合って座る体勢を取る。抱き寄せられ、さらに深く亀頭を迎え入れさせられ、ゲルデは仰け反り絶頂した。
 だがザシャはまだ射精していない。うねる膣肉に肉竿を愛撫させながら、弾けた快感に惚けるゲルデに上を向かせた。

「キスしよう、ゲルデ。舌を絡ませて、もっと気持ちよくなろう」

 ふぅふぅと荒く息を吐きながら、ゲルデは上を向き「あ」と舌を出す。突き出された舌を丹念に舐めてから、ザシャは食べるようにゲルデの舌を口内に含んだ。
 唇で扱くように、ゲルデの舌を愛撫する。じゅぷじゅぷ音を立てて舌を吸い唾液を啜っていると、ゲルデの膣肉がまたびくびくと痙攣し始めた。ゲルデが再度絶頂を迎える気配を感じながら、ザシャはゲルデの尻へ手を伸ばし、白く丸い尻たぶを鷲掴みにした。ゲルデの背筋が伸びる。ザシャはゲルデの舌を吸いながら、柔らかな尻肉の感触を手のひらで楽しんだ。
 ゲルデが嬌声を上げても、ザシャの口内に飲み込まれる。舌を吸われる快楽と尻を揉まれる快感に、ゲルデは悩ましげに腰をくねらせた。ザシャの亀頭が良いところに当たっているせいで、ゲルデは腰をくねらせるだけでさらに快感を味わわされる。膣の締め付けを強くし、ゲルデはザシャに抱きついた。

「んんっ、んふ、ふーっ。んん、ぇぅ、れう、んーっ!」

 一瞬、ふわりと締め付けが弱くなった。その緩みは、ゲルデが派手な絶頂を迎える合図だった。ザシャはゲルデの腰を抱き寄せると、今までで一番強く、子宮すらも貫くつもりで亀頭を奥へとねじ込んだ。
 抱きつく力を強くし、ゲルデは足までもザシャに絡めて絶頂した。ザシャの尿道を精液が込み上げる。ザシャはゲルデの腰を掴んで前後に揺らし、口に含んだゲルデの舌を激しく舐め、興奮の内に射精した。隙間なく密着し絡み合う姿は、ひとつの生き物のようだった。
 自分以外誰も侵入したことのない膣へ精子を注ぐ快楽に酔いしれたザシャは、自分の肉棒が萎えたのを感じ、キスをやめてゲルデを見下ろした。口の端から唾液を一筋垂らしながら、ゲルデは幸せそうに惚けている。とろんとした目で見上げられ、ザシャの肉棒に再び血液が集まった。
 ゲルデを抱き上げ、絨毯とは比べるまでもない柔らかなシーツへ横たわらせる。とろ、と精液をこぼれさせる膣をちらと見ながら、ザシャはゲルデにのしかかった。

「ゲルデ……次はうつ伏せと仰向け、どっちがいい?」

 ゲルデは恥ずかしそうにシーツを掴みながら、小さな声で尋ね返した。

「ど、どっちもって言ったら……無理?」

 ザシャの答えは「無理なもんか!」の一つだ。
 そのまま二人は一日中、夜が来るまで睦み合った。
 夜が来て、疲れ果てたゲルデは眠り込んでいた。
 風邪を引かないよう毛布を掛けながら、ザシャはベッドに腰掛け、ぼんやり窓の外を見た。空にはまん丸の月が昇っている。ザシャは頭部にくすぐったさを感じ、頭を振った。するとくしゃくしゃの黒髪の下から、狼の耳がぴょこんと姿を現した。隣で眠るゲルデからは、昼間はしなかった、甘い焼き菓子の香りが香った。
 昼の間、ザシャもゲルデも人でいられる。だが夜になると時折、今のように〈狼〉や〈赤ずきん〉の部分が現れる。幸い、それを知っているのはザシャだけだった。
 生まれ変わっても〈悪役〉は〈悪役〉のままなのか。生まれ変わっても〈赤ずきん〉は〈赤ずきん〉のままなのか。
 ザシャの中で、疑問が渦巻いた。これまで散々吐き出した精は、ゲルデを妊娠させている。生まれてくる子は、果たして〈役者〉の特徴を持って生まれるのだろうか。
 一抹の不安を抱く一方で、ザシャの中には「きっと悪いことにはならない」という確信もあった。空に浮かぶ月を見上げ、ザシャは呟く。

「僕らは生まれ変わった。きっと、僕らの新しい〈物語〉が始まるんだ」

 ――だから生まれてきた子供がどちらに似ようとも、定められた悲劇なんて待っていない。誰もが知っているのに、誰も知らない。そんな大団円の物語が始まるんだ。

 希望に満ちた予感を胸に、ザシャはゲルデを包んだ毛布に潜り込んだ。幸せそうに眠るゲルデを抱え、ザシャも目を閉じる。
 ゲルデの体温は、ザシャをたちまち夢の世界へ引き込んでいった。
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