オープン・ステージ

平野 絵梨佳

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 このプレハブ小屋は、私と俊太の秘密基地的な場所で、私の祖父のものだった。祖父は俊太のことも、自分の孫のように可愛がっていた。その祖父は一年前に亡くなり、今は祖母が持ち主になっている。
 もちろん鍵は私も持っていたけれど、初対面の男性を中へ招き入れるなんて、出来ないというか、普通はしないでしょうから……。
 プレハブ小屋は十畳ほどの広さだ。小さなキッチン、テーブルと椅子。冷蔵庫や小さな食器棚など、それなりに充実している。トイレは祖母の家がすぐ近くにあるので、そこまでわざわざ帰っていた。
 周りは田んぼばかりで、あまり人は通らない。たまに、この辺を散歩コースにしている老夫婦や、犬を連れた人が通るくらいかもしれない。

「今、雷が一番近い時かもな」
 プレハブの中に入ってから、どのくらい経っただろう。俊太は窓の外に目をやりながら言った。俊太の目が泳いでいるように見えるのは、気のせいではない。
 先程から、地響きを感じるほどの激しい雷鳴を何度も聞いている。
 俊太とは対照的に、星原くんは割と平静だ。
「ここって、雷が多いよね。雷鳴の音量もすさまじいし」
「そうなんだよ。日本で雷の多い都道府県TOP10に入ってるみたいなんだよね。音量に関しては、他と比べたことがないから分からないけど」
 星原くんの言葉には私がこたえた。
 次の瞬間、目が痛くなりそうなほどの鋭い閃光が、こちらを突き刺すように走ってきた。
「――っ!」
 俊太の眉間みけんに深い皺がよる。
「俊太、我慢しなくていいよ。怖いんでしょ?」
「ばっ、馬鹿! 俺は、雷はもう……克服したんだよ」
 そう言った俊太の声は段々と弱くなり、最後の方は小さくうなる雷鳴に紛れてき消された。
「へぇ~。去年までは、あんなに怖がってたのに~?」
「うるせぇ」
 そんな私たちを見て、星原くんはふっと笑って口を開いた。
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