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価値観 5
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空は、その面白味のない色味を保ったまま、ただ綺麗な青だった。
ゼバイはもうすでに、この大人たちの話に飽きていた。まぁ、それは当たり前だ。自分が分からない単語ばかりを並べられ、更に自分のことは空気のように、放って置かれているばかりだ。
だからと言って、なにもすることがない。窓から見える景色も、一定の位置からだと、見える範囲に限りがある。そして、あの味気ない空は、時が止まったかのように、あの青のまま。本当に、退屈だ。
少し時間が経った。もう、暇で暇で仕方なかったゼバイの耳に、聞き覚えのあるあの女性の独特な声が聞こえてきた。
「はい、皆さんお待ちかねのコーナーの時間がやって参りましたよ!″期待の魔道士の卵達 inグラージュ魔法学園″!今日特集するのは───」
さっき二人が話していた″グラージュ魔法学園″。この単語に少しだけゼバイ興味をしめした。独特のあの声はどんどん司会を進めていく。そして、今日特集される生徒がカメラに写された。
しかし、ゼバイはその生徒よりも、一瞬写ったある別の生徒に興味をもった。
特に派手な格好をしていたわけでもない。目をひくような綺麗な顔立ちをしていたわけでもない。何故だかは分からないが、ゼバイはその少年に凄く興味をもった。
けれど、すぐに特集される少年を写すため、画面からは消えてしまった。
(あの子は誰なんだろう……?)
今日、もしランブルがここに来なかったら、きっとゼバイは彼をみつけなかっただろう。
ゼバイが今日みつけた少年は、ゼバイのマスターになる人間だった。
ゼバイは数分間放心状態だった。一瞬写ったあの人が、目に焼きついて離れない。もう、気になって気になって仕方がない。彼に、いつか会えるだろうか?もし会えたらどんな反応を自分はするんだろうか?彼は僕のことをどう思うだろうか?彼と仲良くなれるだろうか?
様々な期待と不安を含めたゼバイの疑問は、頭の中をぐるぐる渦巻いていた。
とにかく、ゼバイは彼に会いたいという願望に体をうずうずさせた。
いつの間にか、かなり時間が経っていたらしい。二人の大人は話終え、ランブルは帰宅するらしい。すると、ゼバイはランブルに問いかけた。
「あのっ、ランブルさん……?」
ランブルはゼバイに話かけられたのが意外だったらしく、目を見開いたが、すぐに微笑んで、答える。
「はい、どうしました?」
「グラージュ魔法学園に、凄く気になるような少年がいませんか?」
興奮したゼバイは、口から発する言葉の情報がかなり足りていない。
ランブルは少し困って、小首を傾げる。少し、間を置いてから、話し出す。
「あぁ、確か今日はマリオンが特集されている日でしたね。マリオンに興味をもったのですか?彼は凄く魅力的な魔道士の卵ですよ。」
「マリオン……」
ランブルが教えてくれた名前を、ゼバイは繰り返した。しかし、その名前はゼバイが知りたかった名前ではなかった。だが、ゼバイはあの少年しか今は頭になかったため、″マリオン″が彼の名前だと勘違いしてしまった。
すると、その話を聞いていたブラインは嬉しそうに笑っていた。そして、後ろからゼバイの頭をごしごし撫でた。
「そうかぁ~、ゼバイがグラージュ魔法学園の生徒に興味をもったかぁ~。こりぁ、絶対に合格させないとだなっ!」
まるで、実の父親のようによろこんだ。
そして、ランブルはブラインにたいしてすぐに返事をした。
「お任せください。」
ブラインはにこにこと機嫌の良い笑顔で頷いた。
「たのんだぞ。」
次の日から、ゼバイの猛特訓が開始された。
……………………………………
読んでくださった皆さん、こんにちは。黒亀丸です。
病気かもしれない、の更新がかなり遅れてしまいました。申し訳ございません。
近況ボードに書いた方が良いのかなぁ?と、思いましたが、こっちに書いた方が確実に読んでくれるんじゃないか?と、思い、こっちで失礼します。
更新についてですが、″薬をください″は毎週木曜日の午後5時半頃。
″病気かもしれない″は毎週火曜日の午後5時半頃。
の、ような更新にします。
もし、挿し絵のリクエストがあったら低クオリティですが、描きます。
これからも、末長くよろしくお願いいたします。
ゼバイはもうすでに、この大人たちの話に飽きていた。まぁ、それは当たり前だ。自分が分からない単語ばかりを並べられ、更に自分のことは空気のように、放って置かれているばかりだ。
だからと言って、なにもすることがない。窓から見える景色も、一定の位置からだと、見える範囲に限りがある。そして、あの味気ない空は、時が止まったかのように、あの青のまま。本当に、退屈だ。
少し時間が経った。もう、暇で暇で仕方なかったゼバイの耳に、聞き覚えのあるあの女性の独特な声が聞こえてきた。
「はい、皆さんお待ちかねのコーナーの時間がやって参りましたよ!″期待の魔道士の卵達 inグラージュ魔法学園″!今日特集するのは───」
さっき二人が話していた″グラージュ魔法学園″。この単語に少しだけゼバイ興味をしめした。独特のあの声はどんどん司会を進めていく。そして、今日特集される生徒がカメラに写された。
しかし、ゼバイはその生徒よりも、一瞬写ったある別の生徒に興味をもった。
特に派手な格好をしていたわけでもない。目をひくような綺麗な顔立ちをしていたわけでもない。何故だかは分からないが、ゼバイはその少年に凄く興味をもった。
けれど、すぐに特集される少年を写すため、画面からは消えてしまった。
(あの子は誰なんだろう……?)
今日、もしランブルがここに来なかったら、きっとゼバイは彼をみつけなかっただろう。
ゼバイが今日みつけた少年は、ゼバイのマスターになる人間だった。
ゼバイは数分間放心状態だった。一瞬写ったあの人が、目に焼きついて離れない。もう、気になって気になって仕方がない。彼に、いつか会えるだろうか?もし会えたらどんな反応を自分はするんだろうか?彼は僕のことをどう思うだろうか?彼と仲良くなれるだろうか?
様々な期待と不安を含めたゼバイの疑問は、頭の中をぐるぐる渦巻いていた。
とにかく、ゼバイは彼に会いたいという願望に体をうずうずさせた。
いつの間にか、かなり時間が経っていたらしい。二人の大人は話終え、ランブルは帰宅するらしい。すると、ゼバイはランブルに問いかけた。
「あのっ、ランブルさん……?」
ランブルはゼバイに話かけられたのが意外だったらしく、目を見開いたが、すぐに微笑んで、答える。
「はい、どうしました?」
「グラージュ魔法学園に、凄く気になるような少年がいませんか?」
興奮したゼバイは、口から発する言葉の情報がかなり足りていない。
ランブルは少し困って、小首を傾げる。少し、間を置いてから、話し出す。
「あぁ、確か今日はマリオンが特集されている日でしたね。マリオンに興味をもったのですか?彼は凄く魅力的な魔道士の卵ですよ。」
「マリオン……」
ランブルが教えてくれた名前を、ゼバイは繰り返した。しかし、その名前はゼバイが知りたかった名前ではなかった。だが、ゼバイはあの少年しか今は頭になかったため、″マリオン″が彼の名前だと勘違いしてしまった。
すると、その話を聞いていたブラインは嬉しそうに笑っていた。そして、後ろからゼバイの頭をごしごし撫でた。
「そうかぁ~、ゼバイがグラージュ魔法学園の生徒に興味をもったかぁ~。こりぁ、絶対に合格させないとだなっ!」
まるで、実の父親のようによろこんだ。
そして、ランブルはブラインにたいしてすぐに返事をした。
「お任せください。」
ブラインはにこにこと機嫌の良い笑顔で頷いた。
「たのんだぞ。」
次の日から、ゼバイの猛特訓が開始された。
……………………………………
読んでくださった皆さん、こんにちは。黒亀丸です。
病気かもしれない、の更新がかなり遅れてしまいました。申し訳ございません。
近況ボードに書いた方が良いのかなぁ?と、思いましたが、こっちに書いた方が確実に読んでくれるんじゃないか?と、思い、こっちで失礼します。
更新についてですが、″薬をください″は毎週木曜日の午後5時半頃。
″病気かもしれない″は毎週火曜日の午後5時半頃。
の、ような更新にします。
もし、挿し絵のリクエストがあったら低クオリティですが、描きます。
これからも、末長くよろしくお願いいたします。
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